境界例 | kyupinの日記 気が向けば更新

境界例

2ch掲示板は、以前はずいぶんほのぼのとした雰囲気があった。これは、2000年頃、境界例のスレッドをたてた時のもの。境界例やプレコックス感について、当時の僕の考えが書かれている。このスレッドの最初に出てくる論文の境界例の予後調査だが、現在までの診療の実感からすると、このアメリカの結果は良好すぎると思われる。(当時のスレッドで、煽りなどを削除。また統合失調症、認知症などに置換)

追跡調査----境界例

1 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/09(木) 22:45
ボーダーラインの診断基準が提唱されたのは1970年代後半~1980年にかけてであるため、追跡調査の期間には限界がある。少なくともこの診断を受けて30年経っている人はいない。 それでも、境界例の患者が中高年になるとどうなるか?というデータはある。

MH Stoneは、州立精神病院におけるボーダーラインの患者 (N=205、追跡期間10~23年、平均16年)について報告している。 彼のデータによれば、20代を親子、異性、職場関係において、ニード・ 恐怖--ジレンマを繰り返しながら過ごすボーダーラインも、30代後半から40代に入ると、アルコールなどの薬物使用、自己破壊的な行動、情緒的な反応の激烈さの減少を見せ、対人関係もある程度改善を示すことが多かった。

また、追跡調査の段階で患者全体の2/3は、ほとんど臨床症状なしに、それなりの適応を果たしており、

サイコロジスト----10名
弁護士------------6名
医師--------------5名

となった患者もあったが、残りの1/3は、自殺(18名)か慢性的な適応障害を示し、3名は売春婦、4名は殺人者であった。

ちなみに良好な予後の指標としては、

1、高い知能指数
2、音楽、芸術、著作における特別な才能
3、(女性の場合)魅力的なこと
4、強迫的な性格傾向
5、アルコール嗜癖があるがAA(alcholic anonymous)通っている
6、好ましい人物であること

などが挙げられている。

3 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/09(木) 22:54
ボーダーラインは、40歳くらいになると落ち着くって話は聞いたことはあるけど、そのデータはどんな雑誌に載ってたの?

4 名前: 25歳 投稿日: 2000/03/09(木) 22:59
ひや-! あと、15年もあるよ。 でも顔がかわいけりゃ、予後良好なんだよね。 ちょっと、安心。

5 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/09(木) 23:43
>3
いろいろな精神科の本に引用されています。僕は精神医学ブックレビューで見ました。この本非売品なんですけど・・・ ここの記載は「グレーテルの宝探し」の丸田俊彦先生によるものです。 このスレッドとは少しズレるのですが、グレーテルの宝探しと言う本は面白いので、興味のある人は買って読んでみてください。

6 名前: >5 投稿日: 2000/03/10(金) 00:01
ご教示ありがとうございます。僕は内科医なのですが、知り合いに境界例と思われる医者がいるのです(患者ではなく:もちろん内科の患者にもよくいますが<境界例)。感情の起伏が激しくて困った人なのです。職場も1年位で次々変わっています。

7 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/10(金) 00:20
>6
そういう人は、まず精神科医になるべきでしたね。境界例の診断が正しいとして、最初、内科になったということで予後が幾分悪いと思います。ボーダーラインの精神科医の症状改善のスピードは、一般患者であるケースの2~3倍と思います。

9 名前: >7 投稿日: 2000/03/10(金) 00:52
6です。レスありがとうございます。
>そういう人は、まず精神科医になるべきでしたね。
なるほど。それは考えつきませんでした。今度勧めてみます。

10 名前: ん? 投稿日: 2000/03/10(金) 00:59
精神科医になれば治るってことですか?by素人

11 名前: ぱらまっくす 投稿日: 2000/03/10(金) 12:10
kyupin さま、おひさしぶりです。興味深いのであげ

12 名前: 通りすがり 投稿日: 2000/03/10(金) 14:23
すいません、ここで言う「境界例」は古典的な意味のものでしょうか それともBPDの事をさしているのでしょうか。 内容的には後者だと思うのですが。しかし、なぜBPDには美人が多いのでしょうか?

15 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/10(金) 20:10
ここで、BPDのDSM-Ⅲ-Rの診断基準を紹介します。
(敢えて1つ前の診断基準にしました)

全般的な、気分、対人関係、自己像の不安定さのパターンで、成人期早期に始まり種々の状況で明らかになる。以下のうち少なくとも5項目で示される。

1)過剰な理想化と過小評価との両極端を揺れ動く特徴を持つ不安定で激しい対人関係の様式。

2)衝動性で自己を傷つける可能性のある領域の少なくとも2つにわたるもの。例えば浪費、セックス、物質常用、万引、無謀な運転、過食。(5に示される自殺行為や自傷行為を含まない)

3)感情易変性:正常の気分から抑うつ、いらいら、または不安への著しい変動で、通常2~3時間続くが、2~3日続くことはめったにない。

4)不適切で激しい怒り、または怒りの制御ができないこと、例えば、しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、けんかを繰り返す。

5)自殺の脅し、そぶり、行動、または自傷行為などの繰り返し。

6)著明で持続的な同一性障害、それは以下の少なくとも2つ以上に関する不確実さとして現れる:自己像、性的志向、長期的目標または職業選択、持つべき友人のタイプ、持つべき価値観

7)慢性的な空虚感、退屈の感情。

8)現実の、または想像上で見捨てられることを避けようとする気違いじみた努力(5に示される自殺行為、自傷行為を含まない)

16 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/10(金) 20:58
>しかし、なぜBPDには美人が多いのでしょうか?

この定説の信憑性は・・・?です。しかし、コンパなどを想定すれば想像できるが、ジッとうつむいて何も喋らない女の子にくらべ 、よく喋り感情表現が激しい---良く言えば感情が豊かな人---は魅力的に見えるものです。(笑) おそらく男女4人ずつのコンパで、1人ボーダーラインの女の子が入っていて、平均より上の容姿なら、一番に皆の注目を集めるなんてことは十分あると思います。 そもそも、ボーダーラインはプレコックス感が無いので、外見だけでは病気らしさが見えません。

17 名前: >15 投稿日: 2000/03/10(金) 22:47
kyupin先生に質問です。15の項目は結構誰にでも、当てはまりそうな気がしますけど、「正常な人」は5項目未満しかあてはまらないのでしょうか?私は少なくとも5項目は当てはまりそうですが。

18 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/11(土) 00:01
>17
そう言われても、困ってしまうが・・
具体的に書いてある項目と、抽象的な文章の項目があるので、それをどう取るかも関係します。 主観的な項目は、何となく自分に当てはまっているようにみえるもの です。これは占いなど読むと当っているように感じるのと似ていると 思います。 客観的に見れる第三者、できれば専門家がみないと、17さんがこれに 当てはまっているとは言えないと思います。

23 名前: kyupin先生へ 投稿日: 2000/03/11(土) 06:19
プレコックス感ってなんでしょうか?

27 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/11(土) 18:33
>23
教科書的には、「統合失調症患者と面接した時、意志、感情の疎通性を欠き、これをrapport(ラポール)の障害という。これは医師が言語的、感情的接触を介して患者から得る全体的な印象であり、統合失調症らしいと感じる体験であり、Rumke,H.Cはこれをプレコックス感と呼び、診断的に重視した。」 ですが、このプレコックス感という言葉は、診断基準の中には出てきません。似た意味を表す言葉は出てきますが・・抽象的なので皆が共有できる診断基準とするには難しかったのかもしれません。

ひとことで言えば面接時に精神科医師が感じる「何か不調和な印象」でしょうか? これは統合失調症しか使わない言葉ですし、発病当初はあまり目立たず、発病後時間がたってから見えてきます。

28 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/11(土) 18:57
>26
>じゃあ、50才ぐらいの人は ・・・
この意味がよくわからないのですが。 まあ、何歳でもカウンセリングの効果がないということはないように思います。50歳では、ボーダーラインも統合失調症もほとんど新規には発生しない年齢です。(うつ病ならありますが・・) 人格障害に関しては、若いうちから治療を開始した方が予後は良いと思います。というのは歳をとると骨が硬くなるように、人格は、この場合性格と言った方が良いですが、変わりにくくなります。

極端な話、70歳のとても頑固な爺さんが、性格は変わりようがないことでもわかります。この年齢で変わってくるとしたら、アルツハイマー型老年認知症などの認知症性疾患が起こった時などです。

35 名前: kyupin先生へ 投稿日: 2000/03/11(土) 20:26
プレコックス感は、臨床経験のある精神科のお医者さまにしかわからないこと でいいでしょうか?

37 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/11(土) 20:51
>35
精神科医以外のドクターでも違和感は感じるようだ。しかしはっきりこれがプレコックス感とは意識はしないようで、あまりわからないと言うのが正しい。 一般の人はほとんどわからない。ただ長く精神科につとめている看護師さんはわかる人もいるようだ。(ただ曖昧だと思う。)

このプレコックス感や疎通性の感触から、積極的に統合失調症を診断する精神科医の感性についは、入局後5年目がピークでその後下がっていくと言われていました。(医局での雑談の中の話)理由は他のことをたくさん勉強していくからです。

53 名前: >1 投稿日: 2000/03/20(月) 01:42
ご同業でもう10年以上になりますけど、実感は一緒ですねぇ。とりあえず長く生きてもらうこと。その年月で角もとれるし、エネルギーも減るしね。予後良好の指標はなんだかアメリカ的なところもあるような気がしますが。日本だといわゆる「ボーダーラインカップル」あれができるとかなり楽になる(治療者が)

54 名前: ボーダーラインカップル 投稿日: 2000/03/20(月) 20:10
ボーダーラインの男女が、恋愛、結婚するなど、カップルになるということですか?

56 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/21(火) 00:23
>54
境界型人格障害の女性と、自己愛性人格障害の男性の組み合わせ。 依存性の高い女性と、それを守ってやってると過剰に思う男性の組み合わせがよろしいらしい。こりゃよくわかる。ふつーはボーダー同士は犬猿の仲なんですけど。

57 名前: 彼女が境界例 投稿日: 2000/03/24(金) 00:48
自己愛性人格障害の指標にけっこう当てはまってる気がするのですが(自分が) 人格崩壊寸前までハマりこんでしまってます。 それでも逃げようにも逃げられない状態。 もしかして、医者が楽になるだけってはなしなのかな?

58 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/24(金) 02:59
>56
治療者にとっては、ボーダーラインどうしでカップリングすれば、治療者に対するいわゆる陽性転移は防げると、まぁこういうことですかね?

でも、境界型×自己愛性、って、 最初は相性ばっちりに見えても、いわゆる「共依存」の悪循環に陥って、それはそれで不健康な結婚生活(暴力とか)になっていきそうですが、実際は長続きするもんなんでしょうか?

59 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/24(金) 07:25
少なくとも、アノレキシア系は男ができるとぐっと治療しやすくなるけどな。

60 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/24(金) 14:33
どうせ振られて大騒ぎになるんだけどね

61 名前: 57 投稿日: 2000/03/25(土) 02:25
最初は、おかしいくらいに相性バッチリに思えたのですが、 いまでは立派に「共依存」状態で二人して狂っています。 治るんですか?人格障害って?

62 名前: >61 投稿日: 2000/03/25(土) 08:47
53をよみなはれ 。治ることはないけど年とともにエネルギーがおちる。ま、10年20年単位の話だけどね

63 名前: >58 投稿日: 2000/03/25(土) 09:09
>最初は相性ばっちりに見えても、いわゆる「共依存」の悪循環に陥って、それはそれで不健康な結婚生活(暴力とか)になっていきそうですが、実際は長続きするもんなんでしょうか?

まさに共依存でありますが、アルコールみたいに元の人格水準がしっかりしている人は突き放して、一度現実の自分を見つめなおしてもらうのがよろしいかと思いますが、境界例にそんな事したら死んじゃいますな。(アルコールでもよく死んでますけど・・・)

このカップルが長続きする場合の経験的条件としては、境界例の女性が自罰的で行動化が自傷行為が多く攻撃性が少ない場合、男性のほうは自己愛性人格障害といっても軽症で、誇大な理想をもっているというよりは、もっとひ弱で自信がなく日常生活で不全感を感じているが女性の援助を献身的にする事により、その埋め合わせができる場合。

そんなカップルそう簡単にできないと思うかもしれませんが、境界例の人を 見る目は精神科医よりも数段すぐれてますから(命かかってますからね) ちゃんとそういう人をみつけてまきこんじゃったりするんですな。

64 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/25(土) 09:54
BPDが人を見る目(弱味を見つける能力かな)はたしかに優れているが、人が自分をどう見ているかはまったくわからんと言うのが謎ですな。そこが連中の本質なんだけれど。

65 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/25(土) 20:02
客観的な能力というよりは、「嗅覚」みたいな本能に近いものでしょうねぇ。

68 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/03/26(日) 11:01
>あの能力を医者などとの攻防で浪費するのは惜しい。つーか医者自身も虚しい時間を過ごしているようで、無力感をさんざん味わうから、どっか他でやってくれと心の底で思ったりする。でもそう思っているうちは治療はあまりうまくいかない (と理屈だけなら、なんぼでもいえる)

BPDがその病気をかてに昇華(?)して社会的に成功した例というのは、あんまりみませんなぁ。社会的事件までならおこせるんだけど。米の△△さんはそれくさいね。日本じゃ○○ですか。

初診で20歳前後、外来待合で必要以上というか過剰に身なり態度が整いすぎてる人なんてみると、その時点で精神科医の「嗅覚」が危険をつげたりする。

71 名前: kyupin 投稿日: 2000/03/26(日) 21:48
ボーダーラインの特徴で、63さんが書いておられるように「まきこみ」は結構重要と思う。しかし、この所見はDSM-ⅢにもⅣにも直接書かれていない。まきこみの無いボーダーラインはク○ープの入って無いコー ヒーに等しいと思うが。(<<かなり古い。)

ボーダーラインの出始め頃は、どう治療して良いか分からなくて、入院させると病棟は大混乱に陥った。それはボーダーラインの患者が周囲を操作し、看護者の一部を味方につけ、別な一部を敵に回してしまうからだ。(本人が故意に、あるいは意識してそうしている訳では無い)

だから看護者の看護計画などのカンファレンスではしばしば喧嘩が始まった。しかしながら、さすがに彼女達も患者に怒りをぶつける訳にはいかず、結局、 主治医の治療が悪いということになった。(こうして、主治医を孤立させるのに成功する。)主治医の苦労は、患者さんとの治療関係だけにとどまらない。こういうのも、DSM-Ⅳに出てくる「理想化とこきおろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。」とういう症状なんでしょうけど。(笑)