ノリトレン | kyupinの日記 気が向けば更新

ノリトレン

一般名:ノルトリプチリン

 

1971年発売の3環系抗うつ剤。発売元は大日本住友製薬。剤型は10mg、25mgとあるが、円形で表面は球状で、10mgは薄い橙色、25mgはやや濃い橙色となっている。薬価はとても安く、25mgで12円くらい。古典的な3環系抗うつ剤、トリプタノール、トフラニールは同じくらい価格帯となっている。同じように見えても、アナフラニール、アンプリットは価格が20円以上するので、倍くらいの差がある。効能・効果は、うつ病、うつ状態となっている。ここで言う「うつ状態」とは、まぁ何でも良いのであろうが、内因性うつ病、反応性うつ病、退行期うつ病、神経症性うつ病、脳器質性精神障害のうつ状態などを指すらしい。実際、添付書に、このように「うつ状態」について説明してある。用法だが、30mg~75mgから始めて150mgまで増量できる。普通は、2~3回に分服する。このあたりの上限は、トリプタノール、トフラニール、アナフラニールなどと変わらない。

 

ノリトレンは、トリプタノールの代謝物なので、その特性が似ているように思うかもしれないがそうでもない。薬物プロフィール的には、トリプタノールはセロトニン優位だが、ノリトレンはノルアドレナリン優位と言われている。(トリプタノールを服用した場合、トリプタノールとノリトレンの総和の効果が発現すると考えられる)トリプタノールの半減期は8~24時間だが、ノリトレンの半減期は更に長く18~96時間と言われている。副作用は、旧来の3環系の抗うつ剤と同様、口渇、眠気、便秘など抗コリン系によるものが多い。ノリトレンはトリプタノールの欠点である口渇、便秘、起立性低血圧などの自律神経系の副作用は少ない。代謝酵素は、CYP2D6といわれている。

 

ノリトレンだが、現在、あまり精神科病院に入っていないと思われる。処方数自体もかなり少ないと推測する。SSRIで治療を始めてうまくいかなかった場合、3環系あるいは、4環系抗うつ剤に変更するにしても、最初にノリトレンを処方する必然性がない。第一選択薬になりえないのである。そんなこともあり、近年では更に出番が減ったと思われる。もちろん、トリプタノール投与でも、半ばノリトレンを試みている面もある。かつて、トフラニール、アナフラニール、トリプタノールなどの3環系抗うつ剤でうまくいかなかった時、ノリトレンを試みた時期があった。しかし、上の3剤でうまくいかない患者さんは、ノリトレン変更でうまくいったことがほとんどなかったのである。おそらく、ノリトレンのメリットはトリプタノールなどに比べ副作用が少ないことと思われる。また、ノリトレンは有効治療域のようなものがあり、処方量の設定がやや難しいと言われる。そんなこともあり、現在うちの病院ではノリトレンを置いていない。(その後、ある患者にはこの薬が良いかもしれないと思ったこともあり、現在は復活している)