なるだけリスパダールを使わないようにしていること | kyupinの日記 気が向けば更新

なるだけリスパダールを使わないようにしていること

うちの病院では、統合失調症の治療は非定型抗精神病薬に限らず定型抗精神病薬も幅広く使っている。わりと特徴だと思うのは、なるだけリスパダール を使わないようにしていること。なんだか、ヤンセンがショック死するようなことを書いているが、やはり、リスパダールは旧来の薬物っぽい位置づけなのである。僕がこの病院に来た時、まだリスパダールが導入されていなかった。当時、既に2000年であったので遅れすぎていると言えた。その後、リスパダールの処方が増加したが、相次いで新しい非定型抗精神病薬が発売されたこともあり、爆発的に増えることがなかった。

もともと、「非定型抗精神病薬」という意味について、みんな知っている? どうも非定型抗精神病薬は「錐体外路系副作用が少ない」薬物らしい。あいまいなのだが、そんな風らしいのだ。僕は、錐体外路症状が少ないのはまあ良いとして、「陰性症状に効果的である」というのも入れてほしかった。(非定型抗精神病薬という意味は以前はオーラップなどを指していたので、変遷がある) 

リスパダールは少ない量だと副作用が出ないので良いけど、10mgくらい処方するなら定型と変わらない。陰性症状への効果はまあまあだけど、ジプレキサ には見劣りする。他に目立たないけど、高プロラクチン血症 の副作用がみられること。これって、非定型ではこれだけなんだよな。プロラクチン上昇の副作用について、わりと重要視している処方スタイルと言える。個人的にリスパダールは過渡的な薬物と思っているのである。ジプレキサの項でちょっとだけ触れたが、またここで挙げておこう。

「ジプレキサは根本治療的に作用するように見える。ある研究によると、ジプレキサは統合失調症発病後の脳の神経細胞の脱落をかなり抑えるという。僕は思うが、ジプレキサで治療した場合、10年後の結果が相当違うような気がする。」

リスダールではもう10年くらい治療している人いるが、現実には、重くなっている人は十分に重くなっていると思うよ。脳の劣化みたいなものをリスパダールは十分に抑えているようには見えない。ジプレキサには奇跡を感じるが、リスパダールにはそれがないと思うのである。

半年前、リスパダール単剤で治療中の共同住居の患者さんが再入院した。ずっと良かったのだが、なぜか悪化したのだ。リスパダールに限らず、非定型にはこういうことが時々見られる。非定型は再発率に関してはそう定型と変わらないか、かえって悪いような感覚はある。その患者さん、リスパダールが8mgくらいだったので、この機会に処方を変えてみましょうということになった。最初、ルーラン を試したが、これはうまくいかなかった。陽性症状がまとまらないし流涎があるのが気になった。ジプレキサやセロクエル では症状が悪化してしまうので続けられなかった。この時点で非定型は選択できなくなった。

面白いと思ったのは、ロドピン 200mgを処方したところ、流涎が止まってしまったこと。リスパダールやルーランでは流涎が出現するのに、ロドピンで止まるなんて、さすが隠れたSDAと言える。換算表では、ロドピン200mgはリスパダール3mgに相当するので、止まるのは当たり前じゃんと思うだろうが、あんな換算表は信用にならない。しかしロドピンのみだと、自発性がいまいちなのである。どうも陰性症状の面で今一歩で限界を感じた。結局、自発性が出そうな薬物を順番に試していたら、クロフェクトンを50mgあわせてけっこううまくいったのである。今は、ロドピン200mg、クロフェクトン50mgと控えめの処方になっているが、これで副作用も含め、入院前よりずっと良い。やっと、11月30日に退院にこぎつけたのであった。

僕は、定石的とされている単剤治療にこだわらない。精神症状の改善と副作用の減少のバランスがよければ、単剤でなくてもかまわないと思っているのである。まあ、くだらないこだわりで柔軟性を欠く治療にならないように、というのももちろんある。

このエントリは今まで「SDA」のテーマにありましたが、2008年6月、「リスパダール」のテーマに移動しました