うつ病と自殺 | kyupinの日記 気が向けば更新

うつ病と自殺

先日、友人から電話がかかってきて、患者さんを紹介するのでECT(電撃療法)をしてほしいという。そういえば、去年の年末も何人か来たっけ。どうもこの時期はうつ状態が悪化しやすいみたいだね。季節的には3月頃が最も悪いが、この季節は主に統合失調症圏の患者さんが悪くなるような感覚がある。毎年12月頃に何人かECTをしているってことは、希死念慮が生じるうつ病は冬は悪くなりやすいのかもしれない。


日本の自殺者の数だけど、先進国中ではけっこう多い方に入る。平成10年に3万人を超えて、高止まりしたまま。この数は、一見、ピンとこないかもしれないけど、とてつもない数なのである。年間の交通事故死数ってどのくらいか知ってる? すごく以前だけど、1971年に年間交通事故死数が16,765人で過去最高。当時は交通戦争と言われた。現在は8000~9000人くらいと当時から半減している。ちょっと注意したいのは、本当は自殺だけど、世間体を考えて死因が自殺と記録されていない場合もあること。自殺なのか事故死か区別しにくいケースもあるだろうし、もう少し多い数が自殺していると思われる。スカンジナビア3国は、気候的にも人種的にも、あまり差がないのだが、年間の自殺数にずいぶんと差があることが指摘されていた。実は国によっては、自殺でも例えば海難事故みたいな記録になっていたらしい。


個人的には、うつ病で自殺するのは非常に損だと思う。なぜなら、うつ病による悲観や絶望から自殺するわけで、本来のその人の気持ちとは必ずしもいえないから。この業界では、うつ状態は最も治療しやすく治りやすい疾患なので、一番悪い時にそのときのとっさの判断で死んでしまうのは最もまずい選択だと思ってしまうのである。