入院治療は・・ | kyupinの日記 気が向けば更新

入院治療は・・

僕は子供の頃からあまり体が強い方ではなく、入院したことが何度もある。もう数えてないが、短いのも含めて10回以上。おそらく20回は超えていない。期間としては最高3ヶ月半くらい。しかし、決して虚弱に見えるわけではなく、みかけはけっこう丈夫そうに見える。体格は良いから。現在は身長179cm、体重72kg。高校時代に友人の家に遊びに行った時、僕を見た友人の母親にずいぶん驚かれたことがある。いつも入院しているように聞いていたので、そんなに大きいとは思われていなかったからだ。実際、大学入学した時、ラグビー部に強く誘われた。しかし、大学入学した当時は健康には全然自信がなかった。あの頃に比べると今は断然元気だ。僕には中学生や高校生で入院している人の気持ちはよくわかる。先行きの漠然とした不安感。先の見えない心細さ・・良くなることに待たされるのはとても辛い。あまりにも体調が良くならないと、永遠に良くならんのじゃないかと思えてくる。今までに入院したことのある科は、小児科、内科、外科、整形外科で、精神科は入院したことがない。


精神科医局に入局の年、交通事故で大怪我をした。そのとき、大学の整形外科は満床で入院できず、さて、どうするかと言うことになった。安静にしておけばじきに良くなるので、精神科の保護室にでも入院させておいてほしいと医局長に言った。僕には入院について全く抵抗がなかったのだ。精神科でさえ。その希望は受け入れられそうだったが、直前でキャンセルになり、近くの病院の個室に入院となった。医者になっただけで、半ばVIPでその病院の良い部屋に入院になったことにちょっと驚いたというか、戸惑った記憶がある。あとでその経緯について聞いたところ、大学精神科にある期間入院した場合、医師としてその後の僕の経歴に傷がつくことを心配されたらしい。ふーん、そんなもんかと思った。のべで言えば、相当な日数の入院したにもかかわらず、浪人とか留年とかにはならず、24歳で精神科医になっている。病歴からすると、これは奇跡であった。


さて、実はこの話をしたかったのだが、24歳くらいだと、いくら精神科を勉強したとしても、やや精神科医は難しいと思う。なぜなら人生経験が全然足りていない。よく精神科で陰性転移とか、あるいは逆転移などと言うが、そういう心の動きはわかっているようで、あまりコントロールできない。若い経験の少ない精神科医は、心の部分ではかなり未熟でまだまだなのである。普通、地方で何か病気になったら、大学病院に行くか巨大な市民病院、県立病院に行ってうまくいかないなら、なんとなく諦めがつく。なぜなら、その地方では最高の医療を受けたということになるから。しかし、精神科はちょっと違う。不思議なことに大学病院も、民間の精神病院もあまり差がない。もちろん差があることもあるが、普通、大学病院ではできて民間の病院ではできないことがあまりない。むしろ差があるとしたら、その病院の治療に対する姿勢の問題の方が大きい。個別の精神科病院の問題なのだ。なぜこうなのかと言うと、精神科に関しては極めて病気の種類が少ないことがある。それはバリエーションはあるけどね。大学病院は不思議に同じような精神疾患や境遇の人が集まる傾向がある。うちの大学病院は、学校の先生、公務員、医療関係の師弟が多かった。一般の病院に比べ、入院患者の平均年齢も低い。同じような人が集まることによる問題も出てくる。あと上に書いたように、大学病院は指導医がいるとはいえ若い経験不足の精神科医が多いこともある。若い精神科医は経験が不足している上、すぐに移動になるため、主治医交代が多いのもマイナスと思うのである。


559投稿者:kyupin  投稿日:2001年07月20日(金) 13時42分59秒

それとひとこと言わせてもらえれば、こと精神科に関しては、大学病院が最善とは限らない(入院の場合)。一般の科、例えば内科や外科では、その都市の中枢病院、大学病院や市民病院など公的な色彩が強い病院で治療を受け、たとえそれが悪い結果になったとしても、まあ諦めがつく。その地域の最善と思える治療を受けたのだから・・ しかし精神科の場合はちょっと違う。大学病院は、食障害、境界例などの治療ではやや環境が良くない。入退院が多く病棟が落ち着かない。また入院患者の平均年齢が低く、相互に悪い干渉を起こすこともみられる。1人がリストカットしたため、一部屋全員でリストカットしたとか。また、これは非常に重要だが看護婦があまりよくない。組合が強かったりして権利だけ主張して働かない。主治医が非常に治療しにくい。僕は一般の精神病院の慢性病棟で境界例を治療したことが数回あるが、大学病院より、よほどうまくまとまると思った。慢性病棟は長期に入院しているおばちゃんが多い。皆のんびりしている。それなりに安定しているので、たいして病状が悪い人がいないのである。そんな環境で、若い女性患者が入院してきても、あまり動じないというか、まぁ孫みたいなもんだし彼女がどんな風にしても受け入れてくれていた。周囲は圧倒的に余裕があって、けっこう彼女の話も「ふん、ふん」と頷いて聞いてくれる。いわば、おとぎ話のような世界だろう。確かに精神科の慢性病棟は浮世離れしたところがある。大学病院はまだ症状が生々しいというか、むき出しのようなところがあって、ある意味、殺伐としている。一般精神病院の慢性病棟はそんなところは皆無だ。

(青の部分は過去にアップした日記から)