精神科デイケア(その2) | kyupinの日記 気が向けば更新

精神科デイケア(その2)

1990年頃、僕は総合病院の中の精神科で働いていた。(2006年10月2日のブログ参照)その病院はデイケアはしていたが、患者さんはせいぜい5人くらいしか来ていなかったような気がする。この当時は、まだデイケアは試験的に始めているといった感じで、この病院でもボランティアで無料だった。メニューと言ってもスポーツが多かったが、人数が少ないので卓球とかバドミントンくらいしかしていなかった。それこそ毎日が卓球であった。来たのが1人という日もあったので。当時はまだ精神保健福祉士という職種が出来ておらず、ケースワーカーが担当していた。何しろボランティアなので、施設基準、担当する職種、人数の制約が全くなかったのである。その病院はかなりのベッド数があったが、当時なんとケースワーカーが1名しかおらず、今考えても大変な仕事だったと思う。その後、病院を移動しある病院でデイケアをスタートさせたことがあった。当時、やっと精神保健福祉士という国家資格ができた頃で、デイケアには精神保健福祉士、作業療法士、心理療法士のいすれかが専従しなくてはならなくなった。その病院は最初5人くらいでスタートして、やがて10数人が毎日参加するようになった。一般の人にはデイケアは単に遊んでいるように見えるかもしれないが、それは違う。毎日デイケアに参加することで生活のリズムができるし、生活の訓練になるので、数ヶ月しているだけで、かなりはっきりした効果がみられる。


本来、精神科デイケアは統合失調症の患者さん(および狭義の躁うつ病の患者さん)を対象にしていると思われる。なぜなら、以前の法律(32条)では、病名的に統合失調症や躁うつ病などのいわゆる内因性精神病しか対象になっていなかったからだ。しかし、ローカルルールで精神科の疾患であればすべて通している県もあった。今回、自立支援法という新しい法律ができる際に、この点でもめた。というのは、もし統合失調症や躁うつ病に限るなど狭い範囲のみを適応とすると、それまで毎日デイケアに参加していた人たちが参加できなくからだ。もし自立支援法による医療費の援助を受けられないと、デイケアの医療費が高すぎるのである。結果的に広い疾患で自立支援法が受けられるようになったので、都道府県による差が一気になくなったと言えた。


デイケアは個別のメニューでSSTなどのプログラムも入れられているが、ある意味、デイケア全体がSST的な面がある。薬物治療についても、毎日来ていれば病状の変化が発見されやすいので医師も早めに対処できる。デイケアに参加していると、かなり悪くなってからやっと治療を受けるということがなくなるのである。精神病は脳の疾患なので、病状の増悪の繰り返しが予後を悪くする。いったん寛解したなら、再発しないことが大切なのである。