Xファイル | kyupinの日記 気が向けば更新

Xファイル

ずいぶん前だが、アメリカのテレビドラマでXファイルというのがあった。今でもケーブルテレビのFOXチャンネルで毎週再放送をやってるが、これはかなり前のシーズン(シリーズ)のものだ。以前はもっぱらレンタルビデオ屋で借りて観ていた。僕は映画はあまり観ないので、今までトータルしてもXファイル以外のビデオはほとんど借りたことがない。テレビドラマもまず観ないので俳優をあまり知らない。ドラマを観ない理由は、いったん観始めると毎週数ヶ月、下手をすると1年以上も観続けないといけないこと。これは大変な損失だ。ぜひ1回読みきりにしてほしい。それでは何を観ているかというと、サッカーが圧倒的に多い。特にJリーグのファンなのでスカパーで毎週、数試合録画して観ている。華やかな海外リーグやチャンピオンズリーグはあまり興味がない。僕は仕事とサッカーで生きていると言って良いくらいなのである。ちょっと恵まれていると思うのは、精神科の仕事自体がとても面白いものであること。これが耐えられないような仕事だったら、おそらくやってられないと思う。テレビ番組では他にお笑い系やモノマネの番組は観るが、モノマネの本物を知らないので、どう似ているかよくわからないこともある。


さてXファイルの話に戻るが、これは1時間番組で出来ていることが多く、また本来テレビ用なので細かいところで矛盾が多い。番組として詰められていないというか、きちんと出来ていないのはご愛嬌だ。駄作にまぎれて、たまに秀作があるといった感じ。このシリーズで傑作と呼べるものもいくつかあり、前半では「スクイーズ」はかなり良い。2時間ものでこれが映画だったとしてもかなり出来がよいと評価されていただろう。個人的に、Xファイルで興味深いと思うのは、時々アメリカの精神病院の中の様子が出てくること。アメリカの精神病院の病室や保護室がどのようになっているかよくわかる。あと、精神疾患に関係のある内容が時々出てくるのが面白い。


いつだったか、「代理ミュンヒハウゼン症候群」なるものが出ていた。ミュンヒハウゼンというのは、物語に出てくるホラ吹き男爵だ。ミュンヒハウゼン症候群は慢性疼痛(心因痛)やポリサージェリーに関係が深い。もともと痛みは実体がない場合も多い。耐えられないほどの慢性疼痛でも抗うつ剤などであっという間に痛みがなくなってしまうと、あれはいったいなんだったんだという感じになる。はっきりしない痛みで何度も不必要な手術を受けて満身創痍になってしまうのを「ポリサージェリー」と呼ぶが、別に本人は好きでやっているわけではない。痛みは切実なものなのである。そういう意味では、ミュンヒハウゼンと言う命名は気の毒と思う。決してホラとか嘘ではないから。うつ状態の人はやたらはっきりしない痛みが出て来やすいので、ちょっと迷うような手術はお勧めできない。なぜならその手術の傷が新たな痛みの原因になりかねないから。痛みだけに注目しすぎると、外科的な手当てを選びがちなので注意したいところなのである。Xファイルで出てきた「代理ミュンヒハウゼン症候群」は、要するに、子供がどこか悪いのではないかと不安になり際限なく不必要な検査や手術を受けさせる母親のことであった。聞きなれない病名であるが、命名はとても適切であると言えた。


他にXファイルの中で面白いと思ったのはドラキュラの強迫症状。モルダーが子供のドラキュラに襲われるが、とっさにピーナッツをぶちまけたところ、それをすべて拾ってしまわないと襲えないので、助かるという場面が出てくる。ひとつの仕事を終えないと次に進めないわけだ。「なんでまたこぼすんだ」とドラキュラが呆れたようにモルダーに言った。これには笑った。本人には無意味なことが半ばわかっていた。そういえば、このドラマではドラキュラは襲った被害者の靴ヒモを片方だけ必ず緩めていくという性質が出てくるが、これも強迫である。つまり「ある状態」へのこだわり。普通、緩んだ靴ヒモを必ず締めて行くというならもっとそれらしいけど、必ず緩めていくのも同じようなものだ。これには笑った。だって症状に一貫性があるんだもの。たぶん昔のドラキュラに、こういう強迫症状があったという文献があるのだと思う。