看護師の国家試験 | kyupinの日記 気が向けば更新

看護師の国家試験

看護学校に講義に行っていることは以前書いたことがある。僕は「精神保健」という精神科でも特に面白みのないところを教えている。看護師の国家試験の内容を見た時、あんがい精神科の出題が多いと思った。ただ精神科といっても、精神疾患、精神保健、精神科看護とかなり科目があるので当然ともいえる。出題としてはやや難しいと思える内容も多い。どう考えても不適切と思える出題もあった。以下の出題は実際に国家試験の過去問なのである。驚愕。


妄想があり、他の患者との交流が少ない統合失調症の26歳の男性。作業療法の種目で最も適切なのはどれか?
1、ソフトボール
2、音楽鑑賞
3、かご編み
4、植物への水やり


この問題は精神科のうちどの科目から出題されているのかが謎だ。第1感では、僕は「植物への水やり」くらいが良いと思った。まず音楽鑑賞は、こんな幻覚妄想のある患者さんは苦手な人がいること。実際、うちの病院では、純粋の音楽鑑賞はあまりしていないんじゃないかと思う。


統合失調症で、一部の患者さんはテレビが苦手だ。あまり頻度は高くないけど。なぜなら、テレビのアナウンサーなどが喋ることが、自分のことを言っていると感じ気分が悪くなる人もいるからである。病状を悪化させる要素のある作業療法は話にならない。音楽鑑賞は、テレビほどではないが聴覚にかかわるものなのでふさわしくない。


かご編みに関しては、そう悪くないと思うけど、いきなり勧めるような作業療法ではないように見える。統合失調症のひきこもりの人には、やや難し過ぎると思う。しかし、この患者さんにとってさほど負担にはならないので、答えだったとしてもまるっきりおかしいとは言えない。


僕はソフトボールは、話にならないと思った。妄想があり他患者との交流が少ない若い患者さんにチームプレーを要するソフトボールを薦めることは好ましくないと普通に思う。妄想のある患者さんは円満な人間関係が保ちにくいし、ある意味、防衛的に喧嘩などのトラブルを避けるように引き篭もっている面があるのである。たくさんの人の参加するソフトボールでは、人とのトラブルが起こりうるし、もし起こった場合、その後の病棟生活はより苦痛なものになるだろう。結局ソフトボールをするまでに準備的なプログラムがまず望ましく、いきなり高いハードルの種目を与えられた印象があるのであった。


結果的にあまり病状への影響が少なく、また今後の発展性を考慮すると、植物への水やりくらいが一番良さそうなのである。まぁ一歩譲ってかご編み。答えは1つなので4が正しいと思うが、3でもまるっきりダメだとは言えない、といったところであった。


さて、正解だが、なんとソフトボールであった。その根拠は、交流が少ない患者さんがいろいろな人との交流ができるかららしい。ワラタ。いったい精神医療についてよくわかっている人が作った問題なのであろうか? 精神科病院の中に入ったことがないか、きっと実際に精神医療に携わっていない人が作った問題なのだと思う。答えの解説が特に気に入った。