畳部屋 | kyupinの日記 気が向けば更新

畳部屋

医学部の専門課程に進学し臨床科目の講義が始まると、ポリクリと言われる各科実習がある。これは厳しいもので休むのは原則できないとされていた。僕は当時、健康状態がまあまあだったので、1回も休まなかった記憶がある。ポリクリは普段の授業に比べ重要性が全然違っていた。精神科のポリクリでは、2つの精神科病院の見学をしたが、僕はそれまで見たことがなかったので、非常に驚くような光景であった。最も驚いたことは畳の病室があったこと。その病院は柔道場のようなやや広い造りの畳部屋があり、ちょうどポリクリで行った時に、患者さんが5~6人くらい正座をして待っておられた。


その病院の院長は、ある20歳くらいの女性患者にいろいろ話しかけていたが、学生の感覚ではその子は全く病気に見えないので、本人が話している「母親が無理に病院に入れた」という言い分は十分に理解できるような感じであった。その後、保護室に移動し収容されている50歳台の男性患者さんに会ったが、興奮状態にあり大声で、「ここから出たら池田大作を殺します」と訴えていたので、「これじゃ、ここに入れられているのはやむを得ないな」くらいのことを思った記憶がある。今考えると、あの人の診断はともかく、状態像としては躁状態であった。


その時、何がショックかと言えば、畳の病室のカルチャーショックが強烈だったのである。時は流れ、現在はどこの病院でも畳の病室はあまりなくなってきている。少なくとも病棟改修または新築した際に畳の病室はもうやめていることが多い。いろいろ理由があるが、まず畳の病室は、僕のようにショックを受ける人いることと、それぞれの患者さんのプライバシーが全く保たれないことが大きい。それと、これは意外だろうが、畳部屋はかえってお金がかかるのである。(畳表を定期的に張り替えないといけないため)