ドグマチール(その2) | kyupinの日記 気が向けば更新

ドグマチール(その2)

一般名;スルピリド
(=
アビリット)

ドグマチールはフランスで開発され、1973年に本邦で発売されている。剤型は50mg、100mg、200mgの錠剤、細粒があるが、カプセルで50mgのみ発売されている。ドグマチールはアステラス製薬、アビリットは大日本住友製薬による。ベンザミド系抗精神病薬といわれ、このカテゴリーに属する薬物として、他にエミレース、バルネチール、グラマリールなどがある。適応は、50mg錠、カプセルでは、胃・十二指腸潰瘍、統合失調症、うつ病、うつ状態、100mg、200mg錠では、胃・十二指腸潰瘍が除外され、精神科の適応のみとなっている。向精神薬では内科系の適応の二本立てになっているものは比較的珍しい。(例えばPZCではメニエール症候群にも適応がある)


ドグマチールはD2受容体を選択的に遮断するが、血液脳関門の透過性が低いといわれており、mg力価が低い。催眠鎮静作用が少ないため、統合失調症では情動不安が目立たず安定しているケースに処方されることがある。少量では抗潰瘍作用、抗うつ作用を示す。抗プロラクチン血症を来たしやすいため、乳汁分泌や肥満の問題がある。女性では月経異常を来たしやすい。このドグマチールの薬価だが、50mgで20円、200mgでは30円くらいだが、ずいぶん古い薬物のわりに高いと思う。まぁ正規品ではこの程度が下限なのかもしれない。


もうかなり前(1990年頃)だが、刑務所に勤めていたことがある。刑務所の医務課は精神科医が必要なのである。当時、収容人数400~500人で、年間の医療費の予算がたった250万くらいだった。なんと1人当たり年間5000円なのである。もちろん刑務所内の医薬品もだが、刑務所外に出て診療を受ける場合の医療費もこの中に含むので全然足りない。基本的に刑務所内の人々は身体的にはとても健康なのだが、時々大怪我をしたり、もとから精神障害があって継続して服薬が必要な人もいる。だから医務室のテーブルには、それぞれ鎮痛剤やその他の薬剤の薬価が列記してあった。常に経費を考えつつ医療を行わないといけない環境だったのである。当時、アスピリンの安さと、アビリットの高さに驚いたものだ。刑務所内は向精神薬の種類がとても少なかった。当時、抗うつ剤はトリプタノールかトフラニールくらいしかなかったような記憶がある。なぜ、刑務所を1年くらいでやめたかというと、仕事が面白くないのに尽きる。あそこにずっといたら、シャバに出たときに、全然使い物にならなくなっていると確信する。

(2006年7月17日のブログ参照)