リーマス | kyupinの日記 気が向けば更新

リーマス

一般名;炭酸リチウム。
一風変わった向精神薬。精神科薬物でこの薬ほど分子量が小さい薬はないのではないかしら。
リチウムは原子量は3、昔覚えた「すいへいりーべぼくのふね・・・」ではいきなり3番目に出てくる。だからナトリウムの親戚だ。一価の陽イオンになりうるので、構造式はLi2CO3になる。たいていの精神科の薬はベンゼン環が入っていて、それなりに複雑だ。だからこんな風にシンプルにかける薬物はほとんどない。この薬は一般に躁病に効果があるが、うつ状態にも効果がある。うつ状態にも抗うつ剤にこれをあわせて使うことがあるので、上下のブレを押さえるともいえる。躁うつ病とは言えないまでも、調子が良い時にややトーンが高くなるような人のうつ状態にはリーマスをあわせると相性が良い。


現在では躁うつ病以外では、気分安定化薬物のカテゴリーにも入れられている。リーマス、テグレトール、デパケン(R)、リボトリールは、抗てんかん薬であるが、気分安定化薬でもあるのである。境界例などにも、リーマスのみ服用させてそこそこ安定するということはある。よくカルシウムをとると感情が安定するとか言われる。この信憑性はどうかなと思うが、リーマスは非常に分子量が小さいので、このあたりの陽イオンと関係して、感情を安定させていることはあるかもしれない。抗てんかん薬が精神安定化薬に用いられるのは、たぶん細胞膜を安定させることによる。


ところで、リチウムとか言われると一般の人はリチウム電池を連想すると思われる。リチウムと聞いて、リーマスを思い出すのは、精神科医くらいだろう。本来、抗躁薬のの炭酸リチウムと工業用のリチウムはもとは同じものだ。しかしいろいろ調査すると実は微妙に違うことがわかる。薬物用のリチウムはベルギーから輸入しているという。この薬物用のリチウムは大正製薬が輸入してリーマスを製造しているらしいが、この輸入ラインはけっこう限定されていて、どこの会社でも手に入るわけではないようだ。だから、ジェネリック製品(いわゆるゾロ品)は工業用のリチウムを原料に炭酸リチウムを製造している可能性がある。(2000年頃の知識で現在は変わっているかもしれない)医療用のリチウムと工業用のリチウムがどんな風に違うのかわからない。しかし、当時、すくなくとも大正製薬はそんな風にアナウンスしていたのである。

参考
リーマスと妊娠
デパケンRと妊娠
デパケンR