トレドミン | kyupinの日記 気が向けば更新

トレドミン

一般名;塩酸ミルナシプラン

2000年に最初に発売されたSNRI。SNRIとは、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬という意味。 トレドミンはフランスのピエール・ファーブル社で開発され、ヨーロッパではいち早く発売されていて、続々と研究結果がそろってきている。 ヨーロッパでも商品名はトレドミンらしい。日本では旭化成とヤンセンファーマが扱っている。 剤型は、なぜか15錠と25mg錠。薬価は15mgが32円、25mgが48円である。わりと安いといえば安い。用量は50mgから始めて100mgまでだが、もともとトレドミンは3環系などの旧来の抗うつ剤より効果がやや劣るので、重いうつ状態を治療する場合、この範囲では話にならんという感じがする。 150mgくらい使うと「まぁ効く」のであった。上限的にはコメント付で200mgくらいまで処方可能らしいが、200mgまで処方することはほとんどない。 規定の範囲だと、パキシルより効果が落ちるような感じさえしている(トレドミンはすごく使っているわけではないのでちょっと自信なし) 。だいたいパキシルが効かない時に、トレドミンでは良く治ったというパターンがあまりにも少ない。


トレドミンはセロトニン系、ノルアドレナリン系双方に作用しどちらも増加させる。しかし従来3環系抗うつ剤で言われていたようなダウンレギュレーションは起こさないらしい。 臨床的には抗うつ効果の発現が早い。約5~7日ぐらいで効果が出はじめる。半減期は8.2時間。これは抗うつ剤としては短い方だと思う。 覚醒、認知に影響がほとんどないため、これを服用していても細かいミスが増えない。過剰投与で死亡例が未だにないらしい。心毒性もほとんどない。 一般にSSRIは自殺企図を増加させる(従来の3環系に比べ3倍ぐらいに増える)が、トレドミンはあまりこれを増加させない。 それでも、一応、添付書には18歳未満の患者さんには自殺のリスクについて注意を喚起している。


トレドミンは活性代謝物を持たず、薬物代謝酵素はCYP3A4がわずかに関与している。肝臓で代謝を受けずそのまま尿中に排泄される。 トレドミンは、薬物の相互作用がほとんどないため、多剤併用中でも投与しやすい。 ふらつきなどの副作用も少なく老人にも処方しやすい。老人は降圧剤などいろいろな薬を既に服用中だったりするため、これらのことをあまり気にせず処方できるのは助かる。 また、トレドミンは食事の影響を受けない。血中のタンパク結合は少ない。 副作用は口渇、悪心嘔吐、便秘、眠さなどであるが、どれも8%以下で比較的低い。 他に、排尿困難などが見られることがある。これはα1ブロッカーで軽減できる。


僕が使った経験では、てんかんの患者さんに使用して発作が急増した例があった。これは中止せざるを得ず、旧来の抗うつ剤に変更して発作が見られなくなった。動物実験でECTの際のけいれん時間を延長させるらしい。 あと、躁うつ病のおばあちゃんに処方していてこれはうまくいっている。一般に、躁うつ病のうつ状態に抗うつ剤を投与する場合、SSRIやSNRIは躁転させにくいと言われている。 そのおばあちゃん、トレドミンの投与でうつ状態は改善するけど躁転はさせないんだな。しかし150mg処方しないと効かないのが辛い。

(これは2003年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)