エビリファイ(その4) | kyupinの日記 気が向けば更新

エビリファイ(その4)

この新薬だが、相当に難しい薬だと思い始めている。うちの病院でも、既にかなりの人が脱落してしまっている。当初、吐き気や嘔吐で中止するのが目立ったが、それは後でそれほどの頻度ではないということがわかった。量を減らすとか嘔気に対する薬を併用すれば使えることも多い。時々、副作用としての頭痛や不眠がみられるが、これは患者さんは薬と関連付けてイメージできないこともあるようで、副作用だと医師が指摘しないと気付かれないこともある。今まで、頭痛で中止したことはないが不眠のための中止はあった。


用量が多くて倦怠感や食思不振が出現し減量ないし中止する場合がある。まぁこれはこのところの夏バテもあるかもしれない。僕が処方している範囲では思っていたよりエビリファイは重いような感じなのだ。日本人には。ある患者さんは9mgから15mgに増量したところ、きついので減らしてくださいと言ってきた。この人、一時ポリの状態になっていてレボトミン600mgクラスを服用していたこともあるんだ。今はレボトミンを処方しておらず、リスパダール(12mg)とその他眠剤だけでコントロールしていた。本人にエビリファイの感想を聞くと、わりと調子が良いんだという。詳しい話はいってくれないのでよくわからないが、表情は以前より良くなっているし、よく庭に出て草取りをしているようなので、陽性、陰性症状とも効果的であるように見える。現在は、リスパダール6mg、エビリファイ9mgの2本立てでやっているが単剤で行くのは今のところ諦めた。彼がエビリファイ15mg程度できつがるのが今ひとつ納得できない。


また、食欲を落とすような働きがあるようで、高齢の統合失調症や統合失調症でない老人に処方すると、食が細るのでこっちが心配になってくる。症状を改善しているように見える場合は、かなり減量して処方する。(1.5mgとか) なんだかんだで、一時9~15mg程度処方していたのがだんだん減ってきて、今は3mg~6mgほどの人が随分増えた。遂に今日で、15mgを超えて処方している人が全然いなくなった。


あと、ジプレキサのように病状を過激に悪化させることはあまりないようであるが、ジワジワ悪化させているように見えるケースがあり、この場合は中止せざるを得ない。どのように悪くさせるかはいくつかパターンがあり、最初はちょっと賦活して良くなったように見えるが、じっと待っていると、幻覚妄想が再燃しており中止せざるを得ないことがある。神経が研ぎ澄まされるような感じになり、他患者のちょっとした仕草を妄想的解釈してトラブルになったこともある。遂に今日、エビリファイによる悪化で保護室に入らざるを得なくなった人が出た。本人と話し合い、エビリファイをすべて中止しセロクエルを最高量まで増やし、なおかつトロペロンの筋注も実施することを伝え了解を得た。


それでもなお、エビリファイは相当に良い薬のように見える。まず、今までのいかなる非定型抗精神病薬の効き方にも似ていない。アメリカではジプレキサと交代してどんどん使われているような話もあるが、陰性症状はともかく陽性症状への効果がイマイチだし日本人には考えていたより高用量が服用できないようなので、ある面、期待はずれのところはある。今のところ、この薬が発売されて本当に良かったと思える患者は2名ほどだ。

参考
エビリファイ
エビリファイと妊娠