トフラニール | kyupinの日記 気が向けば更新

トフラニール

一般名:イミプラミン

半減期:9~20時間(未変化体) 代表的な3環系抗うつ剤のひとつ。うつ病の他、夜尿症などにも使用される。一般に、原因のはっきりしない疼痛はうつ状態が背景にあることがある。そのような痛みに試みる価値のある薬物でもある。しばしば、抗うつ剤の新薬の治験で2重盲検の対照薬物になっている。効果は強い方である。3環系抗うつ剤の中では眠さが比較的少ないという特徴がある。トフラニールは構造式がコントミンと良く似ている。もともとコントミンなどの抗精神病薬を作ろうとしていて、偶然発見された歴史を持つ。トフラニールはそれ自体バランスの良い薬物プロフィールを持つ。セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用は五分五分である。しかし体内でデシプラミンに変化し、これは強いノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持つ。したがって全体としては、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなっている。ドーパミンの再取り込み阻害作用はほとんどないか、わずかである。(日本ではデシプラミンは発売されていない。世界的にみても発売されている国は少ない)

 

ナルコレプシーという疾患があるが、これは睡眠発作などの特徴のある症状がある。ナルコレプシーを精神科外来で初診でみることは極めて稀である。睡眠外来などを専門を標榜している病院なら、わりと診るのかもしれないが。ナルコレプシーなど眠さを主訴に初診するように思えるが、実は必ずしもそうではなくて、意外に不眠を訴えて来院したりする。睡眠のバランスが崩れているためだ。そこで、うつ病と(誤診してw)トフラニールなどを処方して、偶然、ナルコレプシーも良くなったりするらしい。これはけっこう有名な笑い話だったりする(過去形)。トフラニールは、ナルコレプシー、周期性傾眠症、夜尿など、精神科でも睡眠にまつわる疾患に親和性が高い。ナルコレプシーや周期性傾眠症など、いつも眠くなるような疾患に使えるところが、3環系でも比較的眠さが少ない薬物らしさが出ていると思う。

 

ところで、副作用だが一般の3環系抗うつ剤とあまり大きな相違がない。(口渇、便秘など) 現在、僕の患者さんでこの薬物を処方している人は、たった数人しかいない。数えたことがないのだが、おそらく10人もいない。一時、この薬物で治療していても、後にトリプタノールやアナフラニールに変えてしまったりするからだ。うつ病メインで治療している際に、トフラニールからトリプタノールに変更した場合、同じミリ数でも以前より良いという人が多いので、やはり薬効的には、トリプタノールの方がやや強いのかなと思う。しかし、アナフラニールやアモキサン程度なら、あまり差を感じない。

(これは2000年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)