共謀罪創設法案、審議すらされていない問題点が山積 | 共謀罪ってなんだ?

共謀罪創設法案、審議すらされていない問題点が山積

ここ数日が山場と言われている共謀罪創設法案。
実はこの法案には、「共謀罪」のほかにも、ほとんど審議されて
いない多くの問題があります。

これらの問題を置き去りにしたままで採決が行われる危険を、
私たちはそのまま見過ごすしかないのでしょうか?

■法案の目的と条文のねじれた構造

法案をじっくり読み直してみると、ひじょうにねじれた構造になって
いることに気がつきます。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16305022.htm

概要はこちら
http://www.moj.go.jp/HOUAN/KYOUBOUZAI/refer05.html


法案では、

・国連国際組織犯罪防止条約締結に伴う国内法整備
・サイバー犯罪条約に伴う国内法整備
・犯罪の組織化に対応する

という、重なるようで重ならない3つの目的がかかげられ、
13の法律が改正されることになっています。

「証人等買収罪」、「コンピュータ取締り立法」、「強制執行妨害罪等の
罰則強化・対象拡大」など、ひとつひとつ検証してみると、ほんとうに
かかげられた目的に対応しているのかどうか、疑問を感じます。

これらは共謀罪と同じく、対象の限定、明確な基準が示されていないため、
かかげられた目的を大きくはみ出し、人権侵害のおそれが非常に大きい
と思います。
いつでもだれでも検挙できるように、網をできるかぎり広げたのではないか
という疑いをぬぐえません。


■悪徳金融業者を助ける、強制執行妨害罪の罰則強化?

たとえば、「犯罪の組織化に対応」するものとしては、「強制執行妨害罪等の
罰則強化、対象拡大」があります。
これも組織犯罪集団に対象を限っていないため、一般市民のよくある事例
にもあてはまってしまうのではないかと心配になります。

・罰則が強化されただけでなく、強制執行逃れに協力した相手方までも罰せ
られるようになっていますが、こうしたことが、アイフルに類するような、悪徳
金融業者の過酷な取立てをあおる結果にはならないのでしょうか。

・強制執行行為妨害罪というのが新設されていますが、たとえば、産廃施設に
反対する住民運動や、軍事施設建設反対運動がこれにあてはまることはない
でしょうか。

・また、「報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第九十六条から
前条までの罪を犯した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」
という規定がありますが、相談を受けた弁護士が、共謀罪に問われるという
おそれはないのでしょうか。


■憲法の「令状主義」を揺るがす、適用範囲の曖昧な「コンピュータ取締り」立法

「コンピュータ取締り」立法は、あたかもサイバー犯罪を防ぐためだけかと
 錯覚させるような説明がなされていますが、「コンピュータ差し押さえに関
する刑事訴訟法の改正」は、いかなる容疑で差し押さえをする場合にも
適用されます。

・一台のコンピュータの差し押さえ令状で、電気通信回線で接続する他の
コンピュータのデータをコピーして差し押さえできるというのは、憲法の
「令状主義」をゆるがすものではないかと思います。

・とりあえずだれかを微罪であげておいて家宅捜索し、一台のコンピュータ
を差し押さえたら、あとは芋づる式になんでもかんでもできてしまうということ
はないのでしょうか。

・令状なしに通信履歴の記録の90日間保持をプロバイダ等に命じることが
できるという規定は、憲法21条の「通信の秘密」に違反するのではないで
しょうか。

・ここで対象となる「電気通信を行うための設備を他人の通信の用に供する
事業を営む者又は自己の業務のために不特定若しくは多数の者の通信を
媒介することのできる電気通信を行うための設備を設置している者」の範囲
がどこまでおよぶか、よくわかりません。

★ご参考:日本弁護士連合会
サイバー犯罪条約とその国内法化に関するQ&A

■さらなる追求を

加えて、日弁連が猛烈に抗議している証人等買収罪も、正常な弁護活動を
過度に制限するという大きな問題を含んでいると思います。

共謀罪についていくつか修正すればそれで終わり、ではなく
一般市民にとっても重要なこれらの法律改正などに関しても、
もっと審議を尽くすべきではないでしょうか。

■ご参考
巨大与党の『強行採決』考 (5/19・東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060519/mng_____tokuho__000.shtml

■参考資料・国会議員への手紙(3月16日)
(国会議員向けチラシ)
http://kyobo.syuriken.jp/link.htm