「脚本家になれば仕事が来る」という誤解 | 小林雄次の星座泥棒

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脚本家・小林雄次の最新情報と日々の記録です。

昨日の記事でご紹介した、阿佐ヶ谷ロフトAのイベント。


「三宅隆太と継田淳の脚本家ガチトークVol.9

脚本家ってどうやってなるの? 脚本家ってどうやって続けるの?」
に関連しまして……。


脚本家としてよく質問されることシリーズ。


「小林さんはどうやって脚本家になったんですか?」


これは一番訊かれる質問ですね。

けど、語ると一番長くなる質問。


そんなこと、手短には答えられませんので、

「私の過去の著作とか、ウィキペディアとかで調べて下さい。

別にそこまでして知りたいと思わないなら、訊かないで下さい」

というのが本音ですが…(笑)


私もどうやったら脚本家になれるのか、

デビュー前は知りたくて仕方なかった。


というか、今も知りたい。

確実に脚本家になれる方法があるのなら……。

(要するに、確実になれる方法なんてないんですけど)


ただ、大前提として、大きな誤解があります。


「脚本家になれば、仕事が来る」という誤解です。


つまり、デビューすれば、あとは脚本家としての華やかな道が

開けていくだろう、という思い込みがあります。


これは間違いです。

そんな上手い話はありません。


来月のイベントの主旨に、そのものズバリ、真実が書かれていますが、

脚本家としてデビューするよりも、続けることの方が遥かに大変なんです。


そもそも、デビューできない人以上に、

“デビューまでは行けても、その先が続かない人たち”

の数の方が多いのではないかとさえ思います。


何事もそうですが、

始めることより、続けることの方が大変なんですよね。


脚本家も、小説家も、俳優も、監督もそうですけれど、

弁護士とか会計士とかと違って、資格があるわけではありません。


脚本家を名乗って、仕事を1つこなしたからと言って、

続々と仕事が舞い込むようなことは、ほとんどありません。


いや、そんなはずはない。

みんなはそうだけど、自分だけは特別な存在なのだ、

だからデビューさえできれば、

輝かしいキャリアが待っているに違いない、と思います。


けれど、あなただけではなくて、みんなそう思っているのです。

私も思っていました。


しかし、そんなドラマのようなサクセスストーリーを歩んで

ホイホイ仕事が来て、ホイホイ成功する人は、

ほとんどいません。


ほとんど全ての脚本家が、デビュー後、

“書き続けること”に苦心し、

常人の何倍も何十倍も努力しているはずです。


ハッキリ言って、これはシナリオの書き方のように、

テキストや方法論でクリアできる問題ではないから、

余計に難しいのだと思います。


モチベーションの維持。

集中力の高め方・持続方法。

生活スタイル・仕事のスタイルのプランニング。


……こういった問題は、シナリオの発想法の何倍も大切だと思います。


そもそもモチベーションを何年も何十年も維持できなければ、

脚本家という仕事を継続できないわけで。


じゃあ、どうするのか?


それは、自分流のやり方で、地道に努力するしかないんですよね。


「1万時間の法則」という有名な話がありまして……


世の中の天才と呼ばれる人々は、

1つのことを1万時間以上積み重ねてきたのだ、という話。


すなわち、1万時間、1つのことを継続できれば、

天才と呼ばれる領域に到達できる。


きっとシナリオも同じです。


1万時間努力できたら、

きっと一生の仕事にできるんじゃないでしょうか。


ところで、そういう自分は1万時間、

シナリオを書き続けてきたのかな?と気になったので、

過去の人生を振り返って計算してみようかと思いましたが……


大変なので、やめました。

それより、目の前の仕事をしよう(゜.゜)



「脚本家としてよく質問されることシリーズ」過去の記事まとめ


脚本家の自由度


設定を作るのは誰か?


複数の脚本家が参加する理由


共同脚本について


シナリオはどのくらい直すのか?


どうやって尺を読むか?


シナリオから変わってしまうことはあるか?


仕事はどうやって得るのか?