最近読んだ本 | 映画熱

最近読んだ本

ここ最近まで、飲みに出る元気もなく、映画館にも行けない状態が続いて、

 

家で静かに本を読んでいることが多かったんですが、

 

新作を読むよりも、愛読書を再読する方にいっちゃって、

 

太宰ばっかり読んでました。

 

 

で、ようやく、普段のペースが戻ってきたかな…と。

 

3冊、ご紹介します。

 

 

 

 

「火花」 (又吉直樹著 文春文庫)

 

 

ずっと読んでみたかったんですが、ハードカバーを買うお金はなくて、

 

文庫になるのを待って、ようやく読みました。

 

 

これ、なかなかいいですね☆

 

若い読者は、すうっと自然に入っていけるでしょう。

 

 

お笑いの業界の物語なんですが、

 

何と言うか、感性を刺激する言葉がたくさん出てきます。

 

何気ないやり取りというか、会話そのものが、ボケとツッコミで、

 

人とのコミュニケーションの仕方の奥底の部分を、

 

時には優しく、時には厳しく、ユーモラスに、切なく、綴っています。

 

 

やっぱり、文学って、いいもんですね。

 

 

世の中、好きなことを職業にできる人は、ほんの一握り。

 

夢を追い続けて生きていける人も、ほんの一握り。

 

そして、生涯ずっと、友達でいられる関係も、そう多くはないもんです。

 

 

腹の底から笑い、本気でぶつかり合って、一緒に泣いて…

 

青春とか、友情とか、そういった俗っぽい表現はしたくない。

 

心の根底にある、モヤモヤした、ドロドロしたような領域を、

 

美しい表現で出力していくのが、文学の魅力だと思うのです。

 

 

170ページくらいしかないので、夢中になれば、一気に読めるでしょう。

 

読み終わった後も、物語がまだずっと続くような感覚で、この世界に浸れました。

 

 

今度、映画化されるそうですが、それはそれで、見てみたい。

 

それまでは、文章で味わった気分を、しばらく大事に持っていたい。

 

 

 

 

 

「空が分裂する」 (最果タヒ著 新潮文庫)

 

 

ずっと前から少しずつ読んでいたんですが、ようやく読み終わりました。

 

詩集は、宮沢賢治、ランボー、ゲーテ、山頭火、ポーなど、何冊かは持っていて、

 

時折、ちょっとだけ、晩酌のつまみ程度に味わっている存在。

 

 

この詩集を手にしたのは、何だか、イラストが多彩で、面白そうだと感じたから。

 

(漫画家の山本直樹のイラストに一番惹かれたかな)

 

 

詩というものが、どういうものなのか、無学な俺は、語る言葉を持ちません。

 

ただ、単純に、彼女の言葉の切り口の鋭さに、驚きました。

 

 

ほとんどよくわからないけど、時たま、ドキッとさせられる言葉があって、

 

ああ、俺には書けないなあ。素晴らしい才能なんだろうなあ、って感じました。

 

 

若い人たちが、彼女の言葉に共感していることが、何だか、嬉しい。

 

 

この本で、俺が気に入ったのは、

 

「12歳」の最後の部分と、「誕生日」の冒頭。

 

俺もずっと、そんな風に考えてた。

 

 

でも、彼女ほど、綺麗にまとめられない。

 

俺だったら、もっとドロドロした文章になっちゃうだろう。

 

だから俺は、ずっと、不人気ブロガーのままでいい。

 

 

誰かが生まれると、誰かが、死ぬ。

 

その思考は、俺の幸福論に似ている。

 

誰かが幸せになると、誰かが不幸になる。

 

だから、俺が楽しむと、誰かの機嫌が悪くなる…

 

ね、ドロドロでございましょう。

 

 

彼女は、誰かが共感できる表現を生み出す才能があるんだと思う。

 

 

やっぱり、今の新鮮な気持ちを、文章に残すのは、基本、楽しい作業なんですよね。

 

あふれ出る時もあれば、搾り出す時もある。

 

 

よくも悪くも、出力する側の、感性や感情が、にじみ出てくるもの。

 

それを、心地よいと感じるかどうかは、人それぞれ。

 

 

多くの人が共感して、言葉が伝わり、さらに進化して、生命力を得ていく。

 

 

人間って、哀しい存在だけど、それだけに、美しさが内包している。

 

彼女の、素直で綺麗な感覚を、ぜひ一度、堪能して下さい。

 

 

 

 

 

「兎の眼」 (灰谷健次郎著 角川文庫)

 

 

1974年に出版された小説。俺はまだ7歳でした。

 

小学校1年生のクラスを受け持った担任の先生は、22歳の女性。

 

教師デビューで小1とは、なかなか大変だ。

 

 

ドラマや映画にもなったそうで、有名な物語なんですが、

 

根底にあるのは、貧しさと差別。

 

「蟹工船」と同様、プロレタリア文学に属するお話です。

 

 

これ、現代にも、ストレートに通じるものがある。

 

あからさまな、金持ちと貧乏とか、そういうことではなく、

 

廃棄物処理場で働く大人たちと、その子供たち。

 

彼らの生き様が、考え方が、深い意味で、カッコいい。

 

 

ストイックな生き方ができる人には、ちゃんとした理由があるのだ。

 

 

子供たちの世界は、大人たちの世界の反映。

 

子供は、大人の話を、実は、ちゃんと聞いている。

 

発言すると、無理矢理思考停止させられるから、沈黙してしまうだけ。

 

 

言いたいことがあったら、はっきり言えばいいじゃないの。

 

そういうことをチャラっと言う大人は、大抵、頭が空っぽである。

 

自分の都合のいいように話させることばかり考えているから、

 

相手は、黙ってしまうのである。

 

 

この物語の優れているところは、

 

表現という方法の無限性を示している点にあると思う。

 

 

これは、こうしなさい。

 

あれは、ああしなさい。

 

余計なことは考えずに、ただ、言われた通りにしなさい。

 

質問されたら、正解を出しなさい。

 

 

うんざりする、上等文句である。

 

 

 

大人になったら、わかるよ。

 

今にきっと、わかる時がくるから。

 

お前は子供だから、わかんないんだよ。

 

 

子供だからわからないことって、大人になったってわからない。

 

知っているか、知らないか、ではなく、

 

本質を理解して、自分で考える力が育っているかどうかが、大事なのだ。

 

 

この小学校は、きっと楽しい。

 

この先生たちは、きっと、いい心を育てる。

 

 

死んだような目をした子供が、輝く瞳を持った子供になっていくのは、楽しい。

 

正しいか、間違っているかどうか、ではなく、

 

自分の考えを、自分のやり方で表現して、人に伝えていく、ということ。

 

 

お互いの個性の違いを理解し、それぞれにしかできない領域を、担当していく。

 

後半の、子供たちのつながり方が、実に美しく、目頭が熱くなった。

 

 

不良中年の、足立先生が、シブくてカッコいい。

 

彼の生き方のスタイルは、男として憧れますね。

 

 

他にも、魅力的で個性的な大人が、たくさん登場しますので、

 

ぜひ本を読んで、それぞれのキャラの絡みを楽しんで下さい。

 

 

やっぱり、文学っていいなあ。

 

 

これから秋なので、いい本にたくさん出会いたいです。