SUPER 8 | 映画熱

SUPER 8

知恵と勇気は、力に変わる。 …子供たちよ、自分の直感を信じて行動せよ!


“SUPER 8”とは、コダック社が以前発売していた8ミリカメラのこと。映画の時代設定が1979年で、このカメラを使って自主製作映画を撮っていた子供たちが主人公なので、こういうタイトルになりました。


監督・脚本は、J.J.エイブラムズ。製作は、スティーヴン・スピルバーグ。撮影は、ラリー・フォン。音楽は、マイケル・ジアッキーノ。視覚効果&アニメーションは、ILM。


出演は、ジョエル・コートニー、エル・ファニング、ライリー・グリフィス、ガブリエル・バッソ、ライアン・リー、ザック・ミルズ、カイル・チャンドラー、ロン・エルダード、ノア・エメリッヒ。


さて、映画ですが、底抜けに楽しい作品に仕上がりました。ストーリーは、ザ・適当です。でもね、何だかワクワクして、すごく笑えるんです。何ていったって、子供たちの生き生きしている姿がいい!だから、余計なことは考えずに、楽しんじゃいましょう!


この映画は、震災で被災した子供たちに、無料で見せてもいいような映画だと思います。こんな時だからこそ、こういう映画を子供たちに見て欲しい!俺は、そう思いました。


理屈をこねる、うるさいSF映画マニアの人には、この映画は向かないかもしれない。だけど、「E.T.」が好きな世代には超オススメ。あくまでも、“子供の視点”で見ることが大事です。昔懐かしい感じもするし、今風な感じもする。何とも不思議な、面白い映画です。


ちょうどこの間、「スカイライン 征服」という映画を見たばかりだったので、余計に面白かった。見る順番はやっぱり、スカイライン→SUPER 8の順がいいと思います。個人的には。



8ミリ映画を撮影していた子供たちのすぐそばで、謎の列車事故が起きてしまう…さあ大変!彼らは果たして、撮影を続行できるのか?謎の事故の原因は?


主演は、ジョエル・コートニー。本作で映画デビューとなりました。母親を失い、厳格な父親と二人暮らしの孤独な少年を、ナイーブに演じていました。彼は監督ではなく、特殊効果とメイク担当。模型を作るのが好きな、大人しい男の子。女の子を目の前にして、ドキドキしてしまう表情がカワイイ。


ヒロインを演じるのは、エル・ファニング。12歳なのに、14歳の役を演じてしまうところがスゴい。姉は、あのダコタ・ファニング嬢。この姉妹は、「となりのトトロ」英語版で、サツキとメイの声を担当していたそうです。彼女の演技は絶品でした。12歳にして、すでに色気があります。ヘアスタイルといい、昔のジョディ・フォスターを連想した人も多いのではないかと。彼女の微妙な表情も、なかなかキュートですのでお見逃しなく。


“監督”を演じるのは、ライリー・グリフィス。このガキが、なかなかいい味を出しています。ジャイアン的な存在ですが、「スタンド・バイ・ミー」のリバー・フェニックス的な立ち位置でもあるので、なかなかいい感じの少年でした。俺は、奴のポジションが一番オイシイと思いました。


他にも、魅力的な少年たちが登場します。得意技を書くとネタバレになりかねないので、紹介はここまで。



本作は、公開するまで、徹底的な秘密主義が取られました。マスコミ関係者にも、20分ほどのパイロットフィルムを見せただけ。だから、パンフレットにも、ストーリーやレビューが掲載されていません(笑)


それは、俺的には大歓迎。最近は、やたらとネタバレし過ぎな予告編が多くて、劇場に行こうという気が失せることが多かった。映画コラムでも主張したことですが、これは、何とかして欲しいことです。だから、この映画くらいに徹底してたから、全く前情報がなくて、純粋な気持ちで映画を見ることができました。俺、満足!



J.J.エイブラムス監督は、スティーヴン・スピルバーグの映画を見て、少年時代を過ごしました。師匠との年の差は、20歳。その憧れの師匠と一緒に仕事ができて、幸せだったことでしょう。本作の根底に流れるテーマは、スピルバーグ師匠から教わったこと。彼は、いい仕事をしたと思います。


スピルバーグは、エイブラムスのことを、『…映画界にあって、世代のつながりを築くことのできる稀有な作り手だ。』と高く評価しています。エイブラムスがこの映画の企画の話をした時に、面白そうだと言って喜んでくれたらしい。スピルバーグはエラい。


そして、スピルバーグの師匠は、日本の黒澤明監督。黒澤師匠もきっと、あの世で喜んでいてくれることでしょう。やったね、スピルバーグ!やったね、エイブラムス!



ご存知でしょうが、知らない人のためにもう一度言います。俺のハンドルネームの“桑畑四十郎”は、黒澤明の名作「用心棒」の主人公から取っています。ブログを始めた時は、“桑畑三十郎、もうすぐ四十郎”でしたが、40歳の誕生日を迎えて、今の名前に改名。だから、50歳になったら“桑畑五十郎”になる予定です。


俺はもともと、ニセモノ侍。偽者は、本物の価値を一番知っているからこそ名乗れるのだ。俺はそう思っています。だから、不人気ブログでちょうどいい。有名になると困るから。だって、黒澤プロダクションから怒られちゃうじゃん!



そんなわけで、黒澤ファンの俺としても、この映画はうれしい。黒澤の弟子は、世界中で活躍しています。ジョージ・ルーカス、フランシス・コッポラ、マーティン・スコセッシ…。映画に注ぐ情熱を、ぜひとも、若い世代に伝えていって欲しいと思います。だからこの映画、ヒットして欲しいな。



子供は、面白いものに夢中になる。カッコいいもの、かわいいもの、気持ちいいものに反応する。親や先生が止めても、衝動は止まらないのだ。子供たちが夢中になるということは、その対象に魅力があるから。


子供たちには、好きなことをどんどんやって欲しい。好きなことをやるためには、色んな障害もある。敵もいる。でも好きだからあきらめない。そうやって、多くのことを学んで、人の気持ちが理解できる大人になって欲しい。それができた時、キミの周りには、本当の意味でいい仲間がたくさんいるはずだから。



『…子供はよく働くぞ。ちゃんと大人扱いしてやればな。』 (黒澤明監督「七人の侍」より)





【鑑賞メモ】

鑑賞日:6月27日(月) 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 11:45の回 観客:約30人

地元でも見られたんだけど、もう1本はしごしたくて、ここで見ました。


【上映時間とワンポイント】

1時間52分。エンドロールが始まっても、席を立たないで下さい。大事なオマケ映像がありますから。


【オススメ類似作品】


「グーニーズ」 (1985年アメリカ)

監督:リチャード・ドナー、製作総指揮・原作:スティーヴン・スピルバーグ、出演:ショーン・アスティン。

本作を見て真っ先に思い出したのは、この映画でした。洞窟やら、地下世界やら、冒険要素が盛りだくさん。わかりやすく言うと、「インディ・ジョーンズ」の子供版のような映画。お化け屋敷的な要素があるのも楽しい。好きな女の子と一緒に行くと、ドキドキするような、少年少女デート向きの映画でした。


「E.T.」 (1982年アメリカ)

監督:スティーヴン・スピルバーグ、出演:ヘンリー・トーマス。

やはり、コレは外せないでしょう。スピルバーグの代表作であり、世界中の子供たちに愛された映画です。この映画が好きな人は、本作にも足を運んで欲しい。できれば、大切な誰かと一緒に。余談ですが、俺が一番好きなスピルバーグ作品は、「ジョーズ」です。


「スタンド・バイ・ミー」 (1986年アメリカ)

監督:ロブ・ライナー、原作:スティーヴン・キング、出演:ウィル・ウィートン。

ベン・E・キングの名曲をバックに、少年たちの小さな冒険を描いた傑作。本作には、この映画を思い出すようなシーンもあったなあ。アレですよ、アレ。大人には大人の悩みがあるように、子供には子供しかわからない悩みがあるのだ。線路を歩くシーンで流れた曲は、たしか「ロリポップ」だったかな~