ザ・スピリット | 映画熱

ザ・スピリット

仮面の忍者・赤ネクタイ参上。 …ケータイ持ってる’40年代のヒーローってどうよ?


赤ネクタイといえば、夏目漱石の「坊ちゃん」ですね…ってそれは赤シャツだろ!ああそうか、「いなかっぺ大将」の大ちゃん…ってそれは赤フンドシ。わかった、第二期のルパン三世…はいはい、赤ジャケットね、もうこれくらいでいいよ。…うう、だって映画がヒドかったんだもん。少しでも明るい記事にしたくて。


“spirit” とは “精神、魂” という意味で、本作の主人公の名前です。ちなみに、ボーリングの時にピンが両端に残るアレは “split” で、“割る、裂く” の意味。 …じゃあ、スプリット・スピリットは精神分裂か?


原作は、1940年に出版された、ウィル・アイズナーの人気同名コミック。最近だと、“グラフィック・ノベル” というようなオシャレな表現をしなきゃいけないのかもしれないですが、オフィシャルサイトでも “連載コミック” という表記だったので、まあいいかと。大体、’40年代にグラフィック・ノベルなんて言葉はなかったと思うし…マンガでいいじゃん、マンガで!


監督・脚本は、フランク・ミラー。撮影は、ビル・ポープ、音楽は、デヴィッド・ニューマン。出演は、ガブリエル・マクト、エヴァ・メンデス、サミュエル・L・ジャクソン、スカーレット・ヨハンソン、サラ・ポールソン、ダン・ローリア、パス・ベガ。


さて、映画ですが、死ぬほど退屈な作品に仕上がりました。映像はデジタルなのに、内容は思いっきりアナログ。しかも、ギャグのセンスが古過ぎて、失笑の連続でした。ああ、何て恥かしいベタベタコントなんだろう。ケータイが出てきたから、現代の設定か…うわあ、余計恥ずかしい!こりゃあ、仮面をつけなきゃやってらんねえ!


刑事だった男が、殺された後に謎の復活を遂げる。彼は自らを “スピリット” と名乗り、愛する街セントラル・シティを守るために、マスクで顔を隠して犯罪者に立ち向かうのであった…。


主演は、ガブリエル・マクト。声だけはシブいみたいだけど、演技の方はよくわかりません。仮面被ってるし、ビジュアル的に考えて、演技なんてどうでもいいような気もする。冒頭の登場シーンを見ただけで、ヌルい映画だなあと思いました。


ヒロインは、いっぱいいて誰が本命なのかわからない。一応、女は4人くらい出てきますが、全員存在感が薄い。大物女優も小物女優も、こうなると何だか似たようなもんですなあ。熱演すればするほど、温度がどんどんヌルくなっていくような気がする。…ああもう、誰がいつ死んでも構うもんか!


悪役を演じるのは、サミュエル・L・ジャクソン。「アンブレイカブル」の頃から思ってたけど、彼はやっぱりアメコミが好きなんですね。役柄は、犯罪集団のボスで、名前はオクトパス…ははあ、タコ社長ですね。そして、クローンの手下がいっぱい出てきます。 …ははあ、黒ダコブラザーズですね…はいはい、ムテキング。


そういうわけで、何だか見ている方が恥ずかしくなるような、羞恥心タップリの赤面映画です。だからもう、仮面被るしかないですね。仮面被って、お忍びで見に行きましょう。…ああもう、早く忘れてしまいたい!




この映画はどんな映画ですか、と聞かれれば、拷問映画です、と応えましょう。不眠に悩んでいる人は、程よい催眠効果もあるので、気持ちよく眠れると思います。ただし、イビキはご法度ですよ。


昔の映画って、マッチョなキャラが珍しくなかった。殴っても蹴っても、打たれ強い男。今どきだったら死んでしまうような殺し合い風殴り合いも、当時は問題なかった。タフな男がモテた時代だしね。


しかしまあ、本作に出てくる連中は、恐ろしく単純で、あまり考えない。やっぱり、いい時代だったんですねえ。がんばればがんばるほど結果が付いて来たんでしょうね。現代の視点で見ると、何だかうらやましい感じがします。


「シン・シティ」 はあんなに面白かったのに、本作は何でこんなに盛り上がらないんだろう?フランク・ミラーが単独で監督しちゃったせいなんだろうか?役者がいけなかったのか?もともと知識も何もないので、俺ごときにはわかりません。…だって、原作は面白いものなんでしょ?


さあ、この映画はヒットするんでしょうか?何だかイヤな予感がします。お金払って劇場で見た立場で言わせてもらうと、劇場で見る価値はゼロに近いでしょう。 …見るなら、覚悟して行くべし。


ケガをしても、すぐに治ってしまう者どうしのどつき合いなんて、何の臨場感もないし、退屈なだけ。「フレディVSジェイソン」 「ターミネーター3」 「スポーン」 「エイリアンVSプレデター」 …いっぱいあるよなあ、この手の映画。個人的には、タフな男のケンカを描く場合は、“痛み” の表現が重要だと思うんです。


そんなわけで、本作はオススメできません。まあ、好きな人にはいいんでしょうが、俺的には、金払う価値なし。墓から甦るんだったら、鬼太郎かキル・ビルか、ペット・セメタリーの方がいい。記憶をなくして甦るなら、コブラの方がいい。スピリットって、こんなカッコ悪いヒーローでいいのか?


フランク・ミラーのおっさんは、こんなモノで満足なのか?あんたの作りたかった映画って、こういうもの?もし違うのなら、次の作品で証明してくれ。あんたが本当に見たい映画を、あんたの満足いく方法で、思う存分撮ってくれ。今の状態だと、日本の紀里谷監督の方が一歩リードしていると俺は思う。 …さて、皆様の評価は?




【鑑賞メモ】

鑑賞日:6月6日 劇場:ワーナーマイカル新潟 21:45の回 観客:約10人

この劇場で独占上映というオイシさにつられて見てしまいました。こりゃあ、どこも上映する勇気はないかも。


【上映時間とワンポイント】

1時間43分。エンドロールは、コミックの絵柄らしきものが流れます。原作ファンはチェックしてみて下さい。


【オススメ類似作品】


「シン・シティ」 (2005年アメリカ)

製作・原作・監督・脚本:フランク・ミラー、出演:ブルース・ウィリス。これは傑作です。ビジュアル的にも、ストーリーも、キャラの魅力も素晴らしい。ちなみに製作・監督・脚本・撮影・音楽を担当したのは、ロバート・ロドリゲス。やっぱり、ロドリゲス監督の力は偉大だなあ。 …フランクおやじ、次で勝負だ!


「スカイ・キャプテン」 (2004年アメリカ)

監督・脚本:ケリー・コンラン、出演:ジュード・ロウ。頼りない主人公のモノクロ風映画といえば、コレを思い出します。映画はつまんないけど、ヒロインのグウィネス・パルトロウが魅力的でイケてました。アンジェリーナ・ジョリーは、アイパッチで登場。「インディ・ジョーンズ4」 のあの方と戦わして見てえ!


「ロケッティア」 (1991年アメリカ)

監督:ジョー・ジョンストン、原作:デイヴ・スティーヴンス、出演:ビル・キャンベル。主人公がマヌケなSF映画を紹介しましょう。ロケット噴射装置を突けて飛び上がるマヌケぶりは爆笑でした。このテイストは、「スチームボーイ」 や 「アイアンマン」 でも味わえます。だけど、この映画には彼女が出ているんですよ、ジェニファー・コネリー!マヌケな主人公に、魅力的なヒロインという組み合わせは、アクション映画の伝統的手法なのだ。


「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・パレルズ」 (1998年イギリス)

監督・脚本:ガイ・リッチー、出演:ジェイソン・フレミング。ケータイ持ってぶら下がるギャグといえば、やっぱりコレでしょう。死ぬほど笑える、粋な映画です。低予算でスケールの小さいドラマですが、本作の1億倍面白いッス。


「紅の豚」 (1992年スタジオジブリ)

監督・原作・脚本:宮崎駿、声の出演:森山周一郎。殴り合いの面白さが味わえる口直映画として、コレをオススメしましょう。ラストでボコボコになったポルコに、フィオがキスをした瞬間、飛行機の翼がトドメを刺すシーンは爆笑。ジブリのケンカものでは、「天空の城ラピュタ」 の前半にも確かあったっけなあ。


「銀河鉄道999」 TVシリーズより 「大酋長サイクロプロス」

確か、こんなタイトルの話があったと思う、クローンのおっさんがウジャウジャ出てくる、変な話。サイクロプスじゃなくて、サイクロプロスだったと思ったけどなあ。間違ったらゴメン。