三国志 | 映画熱

三国志

超運のいい男、その名は趙雲。 …男は何かを背負ってこそ、真の力が発揮できるのだ!


「レッドクリフ」 の興奮冷めやらぬ今日この頃。時を同じくして、そのまんまダイレクトなタイトルの映画が登場。その名も 「三国志 THREE KINGDOMS RESURRECTION OF THE DORAGON」。 …うっはー、これは見に行かねば!


内容は、「三国志演義」 に登場する “無敗の将軍” 趙雲子龍を主人公にした物語。監督は、ダニエル・リー。撮影は、トニー・チャン・トンリョン。アクション監督は、サモ・ハン。音楽は、ヘンリー・ライ。


出演は、アンディ・ラウ、サモ・ハン、マギーQ、ヴァネス・ウー、アンディ・オン、ユエ・ホア、プー・ツンシン、ダミアン・ラウ、ティ・ロン、チェン・チーフイ。


さて、映画ですが、慌ただしいながらも、シブい人間ドラマに仕上がりました。独特の脚色もしてあるので、オリジナルキャラも登場。「ウォーロード」 の消化不良感は、この映画で解消。「レッドクリフ」 が終了して寂しい思いをしている人にもオススメしたい作品です。


戦乱の中国において、貧しい家に生まれた趙雲子龍は、蜀の君主である劉備に仕える。動機は、平和な世の中にして家庭を持ちたいという純粋なものであった。同郷の兄貴分である平安と共に戦い、絆を深めていく。そんなある日、彼らの前に、軍師・諸葛孔明が現れた…。


趙雲を演じるのは、アンディ・ラウ。まさに、最高のキャスティングといえるでしょう。演技・アクション・佇まい・雰囲気・表情・立ち姿。ああ、どこから見ても美しい。47歳ってカッコいいなあ。アンディファンは必見。また一つ、彼の代表作が誕生ですね。彼が主演というだけで、この映画は超・運がいい!


趙雲と同郷の先輩・平安を演じるのは、サモ・ハン。つまり、サモ・ハン・キン・ポーですね。1998年にハリウッド進出したのをきっかけに、名前が短くなったそうな。ブルース・リーに声をかけられて 「燃えよドラゴン」 に出演し、ジャッキー・チェンとともに一時代を築いた伝説の男。彼は、武術指導としても本作に貢献しているので、ダイナミックなアクションを合わせてご堪能下さい。


平安という男は、オリジナルキャラだそうです。兄貴分だけど、剣の腕は中の下。弟分の趙雲を引き立てるような役柄ですが、彼が演じることで、映画に奥行きが生まれました。アンディもサモ・ハンも、義理と人情の男。日本で言えば、昭和の男といったところでしょうか。何も言わなくても通じ合っているような、男の匂いを感じ取ってみて下さい。


敵役を演じるのは、マギーQ。あれれ、曹操は女?…いやいや、実は彼女もオリジナルキャラで、曹操の孫だそうな。名前は、曹嬰(そうえい)。武闘派の姫君としては、「レッドクリフ」 のビッキー・チャオよりオイシイと思う。風貌は、中島みゆきのようなダークレディ。暗くて地味ですが、紅一点という立場では、比較になる女がいないこともあって、やたらと目立つので、これまた面白い。彼女に仕えるが男が高田延彦みたいな顔で、格闘家を従えた中島みゆき、といった感じで笑えます。(ちなみに、楽器も演奏します)


関羽を演じるのは、ティ・ロン。おお、「男たちの挽歌」 のおっさんですな。いぶし銀の迫力顔は健在。張飛を演じるのは、チェン・チーフイ。こちらは、やや甘いマスク。うーむ、これは助さんと格さんみたいなもんでしょうか。で、黄門様が劉備というわけで。


ヴァネス・ウー、アンディ・オンの若手2人は、残念ながら存在感がありませんでした。まあ、しょうがないか、どう考えてもオヤジ映画だもんね。2人とも、オヤジの引き立て役をしっかり務めました。エライぞ、御苦労であったな、若造。ヴァネスは20歳、アンディ・オンは23歳。そしてマギー中島は30歳…オイシイでんなあ。


で、特筆すべきは、孔明を演じたプー・ツンシンでしょう。「レッドクリフ」 では金城武が演じて、すっかりイケメンキャラになっちゃいましたが、実際はそんなに好青年でもあるまいって思っていたところに、このおっさんが登場。悪そうですねえ、このオヤジ。出番は少ないですが、ただならぬオーラを感じました。46歳で、アンディとあまり変わらんところが笑えます。いいねえ、このオヤジ孔明でもう1本撮ってくれ!


映画の構成としては、前半はギラギラ若者時代、中盤はナレーションで主要人物が一気に消滅、後半はたそがれオヤジ時代…という感じ。で、上映時間は何と1時間42分(爆笑)!すげえ、まさに駆け抜ける青春、生き急いだ男の物語。人生って、あっという間なんですね。大体、無敗の男ってのは、言い換えれば長生きってことですからね。それをこんなに短い時間に収めようってんだから、ある意味ムチャクチャな映画と言えます。


だから本作は、「レッドクリフ」 の延長戦として見ても面白い。規模やスケールはかなわないけど、男気のあるという点では、ある意味こちらも負けていない。何ていったって、アンディ・ラウ兄貴主演ですから。男同士で行くもよし、カップルでもよし、じっくり1人で見るもよし。細かい設定や、ストーリーはあくまでも脇役。趙雲という男の生き様を、胸に焼き付けましょう。




男は、誰もが戦っている。勝てる時もあれば、負ける時もある。苦い勝利もあれば、心地よい敗北もある。何のために、なんてカッコいい理由なんかない。戦わずにいられないのが男なのだ。だから、気がついたら戦っている。ダメとわかっていても、負けるとわかっていても、男は行かねばならぬ時がある。


バカにされても、理解してもらえなくてもいい。言いたい奴は、好きに言うがいい。だけど、無意味ではないのだ。戦う男本人にとっては、意味のある、価値のある戦いなのだ。戦うことによってしか、見えないものがある。戦った者同士にしか、わからないことがある。それがわかるまで、男は戦い続けるのかもしれない。


戦って、結果の出ないこともある。しかし、後悔はしない。むしろ、戦わなかった方が、大きな悔いが残ることもある。どうせ後悔するなら、戦ってからにしたい。何故って、それが男という生き物なんだから。


戦う男は、美しい。張り詰めた緊張感が、ストイックな生き様が、余計なものをそぎ落としていく。夢のため、愛のため、己のために、今日という戦いを行き抜くのだ。力のあるなしに関係なく、自分の精一杯の戦いを貫くのだ。


そして、戦い抜いた後は、心と体をいたわることを忘れるな。酒を飲み、友と語らい、戦った自分の心を大いに讃えよ。その時こそ、男のDNAに新たな武器が追加されていくのだ。理屈ではなく、心で学べ男道。


本作の中で印象的だったのが、飯を食う場面です。趙雲も、孔明も、大きな茶碗と箸でガツガツ食ってました。おお、これぞ男の食い方。男は、こうでなくちゃいかん。腹いっぱい飯を食って、思いっきり戦う。この食いっぷりは見事でした。映画を見た後は、ぜひゴハンを食いましょう!男メシてんこ盛り一丁!


若いうちは、どんどん動けばいい。体が鈍ってきたら、頭を使って違う戦い方をすればいい。若者はオヤジに、オヤジは若者に学べ。そうやって力を合わせて、最強の戦士が育っていくのだ。だから戦え、男たちよ。夢も希望も愛する者も、誇りも未来も明日の自分も、勝利の向こう側にロックオン。 走れ!叫べ!美しき勇者たちよ! …男の根性、見せてやれ!




【鑑賞メモ】

鑑賞日:6月6日 劇場:ワーナーマイカル新潟 19:15の回 観客:約7人

6月12日で終了だそうです。…見たい人は、お急ぎを。


【上映時間とワンポイント】

1時間42分。個人的には、音楽もなかなかよかったと思います。派手な現代音楽じゃなく、アナログな感じがしてゾクゾクしました。そういう意味でも、カッコいい映画でした。


【オススメ類似作品】


「墨攻」 (2006年中国)

監督:ジェイコブ・チャン、原作:酒見賢一、出演:アンディ・ラウ。人間的でやさしくて、頭のいい男をアンディが熱演。しかし、人格的に優れていることによって、悲劇が始まる…。王様役のワン・チーウェンのしたたかな演技が爆笑でした。こういうズル賢い男が、最終的に生き残るんだろうな。…アンディ、ガンバレ!


「極道渡世の素敵な面々」 (1988年東映)

監督:和泉聖治、原作:阿部譲二、出演:陣内孝則。ちょっと懐かしいニューウェーブヤクザ映画。兄貴が情けなくて、弟分がやり手というスタイルでは、コレを思い出しちゃいます。俺のお気に入りシーンは、銀行に取り立てに行く場面。…キャロルのユカさんが泣いています!


「いますぐ抱きしめたい」 (1988年香港)

監督・脚本:ウォン・カーウァイ、出演:アンディ・ラウ。これまた懐かしい、大物カーウァイ監督のデビュー作。アンディ映画は数知れど、あえて青くさい恋愛映画をチョイスしてみました。ヒロインは、マギー・チャン。マギーQという名前で思い出すのは、こっちのマギー姉さんです。小粒だけど、結構面白い映画。撮影は、もちろんアンドリュー・ラウ。


「ルパン三世カリオストロの城」 (1979年東京ムービー)

監督・脚本:宮崎駿、原作:モンキー・パンチ、声の出演:山田康雄。何故カリ城かって?あるじゃないですか、メシを食う場面が。パスタ、カップラーメン、そして極めつけは、大ケガした時の暴飲暴食。血が足りねえ、食い物ジャンジャン持って来い!戦う男は、しっかり食うべし!