ドラゴンボール エボリューション | 映画熱

ドラゴンボール エボリューション

チンピラの縄張り争いみたいな映画でした。 …精一杯の髪型が泣かせるなあ。


鳥山明原作の人気マンガ 「ドラゴンボール」 が、ハリウッドで実写化。“evoluthion” とは、“進化、発展、移動、展開” という意味。内容はともかく、この映画を製作したアメリカの功績を讃えましょう。


俺自身は、原作をあまりよく知らない上に、今回はパンフも購入しなかったので、記憶と心象風景だけで記事を書きます。どうせほとんど読まれないだろうから、ほんの少しだけネタバレするかも。もっと詳しく内容を知りたい人は、積極的に他のブログを探して冒険の旅に出ましょう。


監督は、ジェームズ・ウォン。製作総指揮は、何と鳥山明。製作は、あのチャウ・シンチー。脚本は、ベン・ラムジー。主題歌を歌うのは、ジャパニーズシンガー・浜崎あゆみ。


出演は、ジャスティン・チャットウィン、エミー・ロッサム、チョウ・ユンファ、ジェームズ・マースターズ、ジェイミー・チャン、田村英里子、関めぐみ。


さて、映画ですが、ずいぶんスケールの小さい作品に仕上がりました。ドラゴンボールごっこのB級映画として見れば申し分ないでしょう。バカっぽいアクションをお楽しみ下さい。まあ、熱狂的ファンであればあるほど、怒り心頭かもしれませんが…。


“ドラゴンボール” と言われる、オレンジ色の球が世界中に散らばっていた。全部で7個あって、それを集めると、1つだけ願いが叶う伝説がある。主人公の悟空は、亀仙人、ブルマ、ヤムチャと共に、ピッコロ大魔王に立ち向かうのであった…。


悟空を演じるのは、ジャスティン・チャットウィン。ややタレ目のルックスは、青年に成長した悟空に見えなくもないが、何だか青白くて貧弱なイメージ。原作の悟空って、元気いっぱいの男の子じゃなかったっけ?何だか普通に学校に通って、イジメられてましたけど。女の子ともロクに話せない、ウジウジした男…こんなんでいいのか?ムリヤリの髪型はハリボテか?戦うオーラはどうした?


亀仙人を演じるのは、香港映画スター、チョウ・ユンファ。「レッドクリフ」 の出演依頼をドタキャンしたと思ったら、こんなところにいたんですね。彼はどうもセクシーさに欠けるので、ただのおっちゃんという感じ。“仙人” というからには、半分あっちの世界に行っているような役者を起用した方が面白いと思いますよ。


ブルマ、チチ、ヤムチャの3人は、何だかどうでもいいようなキャラでした。悟空のジイちゃんもちょっとなあ。ピッコロ大魔王にいたっては、ただのイカレたおっさんでした。顔色が悪いので、きっと病気なんでしょう。


しかしながら、田村英里子と関めぐみが健闘してくれたので、俺的には少々ポイントアップ。田村英里子といえば、NHKドラマ 「私が愛したウルトラセブン」 でアンヌ隊員を演じた女優。ウルトラ警備隊の制服を着用した彼女の姿は、とても神々しかった。そのタムラが、スゴ腕の悪役に挑む。これは見ものです。「007ゴールデンアイ」 のオナトップくらいのテンションでガンガンやっていただきたい。


一方、関めぐみといえば、「ハチミツとクローバー」 でストーカーをストーカーする女を演じたスレンダーな女優。「笑う大天使」 「ネガティブ・ハッピー・チェーンソー・エンジ」 では格闘アクションも披露。細い体にギョロっとした瞳が印象的でした。本作では出番は少ないものの、ある意味重要な役どころを演じています。この2人の共演を見られただけでも、多少お金を払う価値はあったかも。




それにしてもこの映画、ずいぶんお金をかけたんだろうけど、どうしてこんなにショボくなってしまったんだろう。原作知らない立場で見ても、これはアカンと感じてしまいました。何だか、ロシアの人形マトリョーシカを開けたら、いきなりちっこいのが入っていた…みたいな感覚でしょうか。


でも本作は、あくまでもアメリカ人の視点で語るのが筋というものでしょう。アメリカ本国でヒットしているのなら、それはそれでOK。世界経済を立て直すには、アメリカに元気になってもらいたいから。いいじゃん、「アメリカン・ドラゴンボール」 で。原作に敬意を払ってもらった上で、自分たちのやりたいことを思いっきりやればいい。それこそが、エボリューションというものでしょう。


悟空という名前を使用するからには、中国の 「西遊記」 みたいなイメージで捉えられてしまう可能性もあるでしょう。アメリカにとっては、中国も日本も似たようなものなのかもしれない。だけど、日本には、中国にはない繊細さと、懐の広さがある。オタク文化は、国によって違っていい。自分たちの見たいものを、自分たちのスタイルで作り出すことが大切なのだ。


本作の出来に不満があれば、今度は他の国が挑戦してみたらいい。色んな 「ドラゴンボール」 があっていいと俺は思う。ニセ物やバッタ物が増えれば増えるほど、本物の価値はグッと上がるのだ。


さあ、この映画は、世界中のファンの心をつかむことができるのか?つかもうぜ、ドラゴンボール…ってつかめてないじゃん!首根っこつかんだろか、と脅されても仕方ないけど、大きな第一歩を踏み出した功績だけでも讃えてあげましょうよ。その気なら、フランスでも中国でも韓国でもロシアでも作ったらいい。そして、映画が7本揃ったら、ファンの共通の願いが叶うかもしれないよ。 (…え?韓国と台湾ですでに作っているの?そうかあ、じゃあアメリカは3番手ってこと?でも、公式にはこれが1本目ということになるんですよね、たぶん。)



熱狂的ファンの視点で考えるなら、映画館に入る前と出た後では、観客のオーラの色が確実に違うような気がする。予告編で不安になりながらも、DANDAN心ひかれていって、ついに見てしまった。こりゃあ、チャラ・ヘッチャラじゃいられませんなあ。大丈夫、そう感じているのはキミひとりじゃない。


この映画を一つのきっかけにして、世界中のドラゴンボールファンが立ち上がることになれば、それはそれで面白い。1人1人のオーラを結集し、ピュアな心を核とした元気玉を生み出そうじゃありませんか。自分が見たいもの、手に入れたいものを具体的にイメージし、それを実現するために行動を開始しよう。多くのファンが心から望めば、きっと極上のものができると思うから。


「ドラゴンボール」 は、夢を与える作品。夢を信じて、夢をつかむのは自分自身。この世はデッカイ宝島。人生の全てはアドベンチャーなのだ。 …心に火がともった瞬間から、キミの冒険が始まる!





【鑑賞メモ】

鑑賞日:3月17日 劇場:ユナイテッドシネマ新潟 21:30の回 観客:約15人

ドラゴンボールファンのYD君と2人で行きました。地元では吹替版しか上映していなかったので、字幕版を求めて新潟へ。


【上映時間とワンポイント】

約1時間30分。唖然としているうちに終わっちゃうかも。エンドロールの途中で、オマケ映像が出ます。ここで、関ちゃん再登場!


【オススメ類似作品】


「ヤッターマン」 (現在公開中)

監督:三池崇史、出演:櫻井翔。本作のドラゴンボールは7個。こちらはドクロストーンが4個揃うと、何かが起こります。こっちの方が、集めるの簡単かも。


「里見八犬伝」 (1983年角川)

監督:深作欣二、原作:鎌田敏夫、出演:薬師丸ひろ子。こちらは、8個の球が登場。漢字1文字が浮かんでいる透明な球は、戦士として目覚めると授かるんだそうな。“球” というよりはむしろ “玉” か。 これの亜流として、「宇宙からのメッセージ」 というトンデモSF映画もあります。これだと、光るクルミみたいだったように記憶しています。監督は同じくフカサクのおっちゃん。


「北斗の拳」 (東映VシネマのVアメリカ版)

監督:トニー・ランデル、原作:武論尊・原哲夫、出演:ゲイリー・ダニエルズ。正確にはハリウッド版ではありませんが、少年ジャンプの人気マンガが洋画スタイルで実写映画化されたという点でご紹介。しかしまあ、北斗百烈拳のショボいこと。フツーに指先でトントンしているだけでしたね。ピップエッレキバンみたいなシール貼っただけの七つの傷が泣けました。でも、吹替版はしっかり神谷明が担当していたっけなあ。ちなみに、ユリア役は鷲尾いさ子。もっとヒドい韓国版や台湾版も存在するらしいので、興味ある人は探してみて下さい。 …ねっ、こんなのに比べたら、本作なんてカワイイもんでしょ?