映画コラム その5 「感動のススメ」 | 映画熱

映画コラム その5 「感動のススメ」

感動は、気持ちいい。


“感動” とは、広辞苑によれば、“深く物に感じて心を動かすこと” とあります。だから、映画を見て感動するということは、映画というモノに心を動かされた、ということになります。


心が、“動くもの” であるということは、感覚的にわかるような気がします。心が動くことが “衝動” となり、それが行動に結びつく原動力となります。


俺も映画を見始めの頃は、“感動屋” でした。だって、何もかもが新鮮で面白いから。ワケわかんねえけど、マジですげえとか言って喜んでいたように思います。


実は、そういう子供みたいな純粋な反応こそが、感動の原点なんです。


極端に言えば、何に感動したかなんてどうでもいい。感動した事実こそが大切。まず感じるが最初。それから考えればいい。この感じは、一体何だろう、という具合。


映画で感動するというのは、何も感動的な映画に限ったことではありません。むしろ、いかにも感動的だよといったフレコミだと、俺なんかは冷めてしまうたちなので、そういう映画にそういうものはあまり期待しません。感動作とは無縁の映画の中にこそ、ピンポイントな感動があったりする。


感動ポイントは、人によって違うもの。“私、こういうの弱いの” なんて言ったりするでしょ。そういうアレです。みんなが感動するから、あんたも感動しなさいっていうのは、やっぱりおかしいって。感動するかどうかは、人の勝手というもんでしょう。


どんな映画にも、一つくらいは心を奪われるシーンがあるもの。映画を数多く見続けていると、そういうものを感じ取れる感性が育ってきます。


感動は、感性を育てます。そして、感性が豊かになれば、集中力も高まり、直感が鋭くなる。


心と体のバランスは、とても大事です。(運動不足の俺が言えた義理じゃありませんが)


心が動くものである以上、自分の心の性質は知っておく必要があるでしょう。何に反応し、何を拒否するのか。それには、普段から柔軟性を保てるような心掛けが大切です。それが、感動のススメ。


感動するというのは、ある意味 “バカになる” ことでもあります。バカみたいに笑い、バカみたいに怒り、バカみたいに泣き、バカみたいに悲しむ。そして、バカみたいに喜ぶ。これって結構、素敵なことかも。


ヘタに感情を押さえ込むより、健全でいい。もっとも、周りの迷惑にならない範囲でやるべきですが。


感情って、無理に押し込むと、かえって噴き出してくる場合もある。生まれてから一度も恋をしてこなかった男が、晩年になって激しい恋愛感情を体験すると、始末が悪かったりするでしょ。それから、真面目な人間がキレると、手がつけられないなんていうのもある。


これって、自分でもどうしようもないくらい、コントロールがきかなくなってしまう。まして初めての感情だったりすると、どうにもならない。


だから、普段から自分の感情の癖みたいなものを、ある程度把握しておかなきゃ。そのためにも、映画を見た直後の感触を大事にしましょう。人のものでない、自分の感じ方。


人が感動すると、自分も感動したような気分になる。それもいいでしょう。でも、その時できれば自分の心にもう一度問い掛けてみて下さい。本当に感動したのか。


人からどう思われようと、自分が感じた世界に自信を持って下さい。それがたまたま人と同じだったら、それはそれでOK。でも、周りに合わせようとして、自分に嘘をついてはいけません。


自分が感じたことは、自分自身の心の宝です。誇りを持って下さい。そういう自分にまた、感動して欲しいのです。自分の感情を認めてあげて下さい。こういう感じ方ができるんだって。


自分がしっかり見えてくれば、周りも次第に見えてくる。そして、自分が行きたい方向も見えてくる。

映画は、人の心を育てる。人の中に感動する心がなかったら、映画もただの情報に過ぎません。人の心に作用して初めて、映画の真の力が発揮されるというもの。


一本の映画が、人生を変えることだってある。そういう男のロマンを、これからも追いかけて、命ある限り、一つでも多くの作品を、心に焼き付けていきたいです。


人の心は、美しいものに反応します。なぜなら、その美しいものが人の心の中にあるから。相田みつをさんの言葉に、『美しいと感じるあなたの心が美しい』 とありますが、まさにその通り。


自分の中にある美しい部分を、対象を通して感じることができる。それこそが、感動。そして、美しいと感じられる自分に、また感動。それがうれしい。汚れてしまったと思っていた自分の心に、光があたったように思えて、なんともいい気分。それを与えてくれる映画は、自分にとってかけがえのない名作なんです。


だから、若者たちよ。感性が若いうちにドンドン感動するべし。遠慮はいりません。感動とは、その時だけの限定モノ。後からも思い出せるけど、同じ気持ちはその時しか感じることができない。貴重な、心の宝。


二度と帰らない “今” を大切に。心が素直に反応するのは、健全な証拠です。その純粋な心を、大人になっても持ち続けたいって、俺は今でも強く思うんです。


感動は、人の心を開放します。だから、気持ちいい。気持ちいいから、またしたくなる。すればするほど、生きる力が湧いてくる。あ~ら、不思議。


気持ちいいことやって、スッキリしたら、明日からの現実にまた立ち向かいましょう。