アンジェラ
ストレートな映画です。 己の魂と対話しながら見て下さい。
“アンジェラ” は、天使 angel の女性名。ちなみに神学では、天使の階級は9つあり、その中で angel は9番目、つまり最下級になるらしい。つまり、俺を含む底辺の人間にとっては、親しみやすい存在と言えるかもしれませんね。 (参考文献:東京書籍 アドバンストフェイバリット英和辞典)
監督・脚本は、リュック・ベッソン。おお、ついに山が動いたって感じ。テレンス・マリックほどではないにしろ、彼もデビューして25年経つというのに、本作でやっと10本目という “寡作” な監督。
この映画のネタは、「レオン 」 の後に考えたそうな。デリケートな題材だけに、作品にするまでに相当な時間が必要だったんだと思います。画面からもそれが伝わってくる。
主演は、ジャメル・ドゥブーズとリー・ラスムッセン。基本的にこの2人しか出てこないので、他は省略。
撮影監督はおなじみディエリー・アルボガスト。でも、音楽はエリック・セラではなく、ノルウェーの女性ボーカリスト、アンニャ・ガルバレク。 (ちなみに、新潟弁でアンニャは、兄ちゃんという意味。関係ないけど)
さて、映画ですが、最初にお断りしておきますが、全編モノクロです。途中からカラーになるんだろうとタカをくくってはいけません。華やかで綺麗な映画をごらんになりたいという方は、ご遠慮下さい。
物語もいたってシンプル。わかりやすく、ゆっくり展開していきます。でも、この地味な映像の奥底にある、監督からの強烈なメッセージを受け取って欲しいと思います。
この映画は、きっと賛否両論でしょう。好き嫌いがはっきり出るかも。ベッソンファンを自認する人の中にも、これは好きになれないという声が上がるかもしれません。
でも、俺は、この映画を、紛れもないベッソン映画だと思うんです。彼の映画に共通するテーマは、主人公が孤独な戦いをするということ。その中で、何かを見つけ、乗り越えて行く。
その中で出会った真実こそが、彼らが生きた証しであり、かけがえのない大切なものだと思うんです。
本作の主人公は、どうにもならんダメ男。でも、俺は彼の中に自分を見ました。いろんな意味で。
対する “天使” の女は、なんと180センチのスレンダーな女。なんでまたこんな女にしたんだろう?これじゃ主人公が余計にコンプレックス感じちゃうじゃん。…でも、これも計算なのかも。
余談ですが、過去にデカい女とつき合ったことがあるんです。これがねえ…どうも落ち着かなくて。身長差なんて関係ないじゃん、というあなた、一緒に歩いてみればわかりますって。あの威圧感!てめえ、2階からしゃべんじゃねえ!って感じ。結局、彼女とはすぐ破局しました。…性格の不一致ですね。ホントだって!
その理屈でいうと、この映画の天使は、“3階の女” になります。2階でもイヤなのに3階は耐えられるか?
あっ、でもそういう映画じゃありませんからね。誤解しないで下さい。なにしろシンプルなストーリーをネタバレせずに書くって、結構大変なんですよ。
つまり、どうにもならないダメ男が、天使に出会って、本当の自分と向き合う。これ以上は言えません。
俺自身、何度も挫折したことがある男なのでわかるんですが、自分の情けない部分と正面から向き合うことなくしては、立ち上がることはできないし、人は変われない。意地だけでやっていけない世界もあるんです。
そういう純な心を、この映画は思い出させてくれました。いい作品だと思います。
…ん、そうすると昔つき合ったあのデカい女はもしかして天使だったのかも?おーい、俺のアンジェラ。お前、元気にやってるか?
…だけど、力を込めて言います。天使だろうがなんだろうが、デカい女はキライだ!
【エンドクレジット】
普通に終わりますので、途中で帰っても大丈夫です。
【トイレに行くタイミング】
1時間30分しかないので、できるだけがんばって全部見て下さい。どうしても行くとしたら、前半はバーで飲んだくれるシーン、後半はチンピラが再登場するシーンあたりかと。
【オススメ類似作品】
「ベルリン 天使の詩」
ヴィム・ベンダース監督。モノクロ映像も効果的です。
「マイケル」
ジョン・トラボルタ主演。この天使は、甘いものとダンスが大好きです。
「素晴らしき哉、人生!」
フランク・キャプラ監督。自殺を考えている人は、2時間だけ思いとどまって、この映画を見て下さい。