エミリー・ローズ | 映画熱

エミリー・ローズ

これは、なかなかの力作だと思います。 信仰をお持ちの方は、是非とも見てみて下さい。


エミリー・ローズは、主人公の名前。原題は 「THE EXORCISUM OF EMILY ROSE」 だから、“エミリー・ローズの悪魔払い” という意味でいいのかな。


監督・脚本は、スコット・デリクソン。キャリアとしては、共同で脚本書いたりしていた人らしいので、今作で本格デビューということになるみたい。


主演のエミリー役には、ジェニファー・カーペンター。このねーちゃんは、とにかくスゴい。まるでホントに悪魔にとり憑かれているような顔をしています。素の状態だと地味なので、この映画のみの一発屋女優で終わらなきゃいいけど。


女弁護士役に、ローラ・リニー。彼女の繊細な演技は非常に良いです。「告発の行方」 のケリー・マクギリスを思い出します。神父役には、トム・ウィルキンソン。眉間のシワがシブい。悪役には、いかにもなチョビ髭のキャンベル・スコットと、薄毛のコルム・フィオール。…まあ、あんまり有名な人は出ていません。


さて、映画ですが、「エクソシスト」 と同じような話だけど、見る視点を変えたスタイルになっています。


大体、予告編でかなり見せ過ぎの感があったので、これはダメだろうと期待しないで見に行ったのですが、これがまあ、大当たり。画面の迫力に圧倒されて、すっかり酔いしれてしまいました。


最近は、安いホラー映画が大量生産されているので、良質の作品はめっきり減ってしまっていたのですが、ここへ来て、アメリカがやってくれました。


多分、ホラー映画でこんなに興奮したのは、キム・ジウン監督の 「箪笥」 以来のことかもしれません。


この映画の凄いところは、主演のジェニファー・カーペンターの熱演が第一に挙げられます。なんというか、彼女の叫び声って、心の底から響いてくる感じがするんですよ。


絶叫って、なかなか難しいもんなんです。最近だと、「ノロイ」 の松本まりかが結構よかった。それと、「呪怨」 ビデオ版の1作目に出てくる、三輪明日美の母親役やった人のが凄かった。ちなみに、一番ダメなのが、「着信アリ」 の柴咲コウ。ヘタ過ぎて話しになりません。あんたは、恐がらせる方をやってくれ。


恐怖を表現するのって、簡単じゃない。やたらに叫べばいいってもんじゃない。息をのむ、怯える、恐る恐る行動する、必死に逃れようとする…。色んなパターンがあるけど、そんなにサラッとできるもんじゃない。


見ている側も身震いするような、説得力がないと、単に笑いをとるだけになってしまう。「13日の金曜日」 や 「死霊のはらわた」 なんかは、このたぐいと言えます。


…ところが、この映画は一味違う。


デリクソン監督は、黒澤明監督の大ファンで、かなりの影響を受けているみたいです。今作も、法廷ドラマという形式を取っているので、「羅生門」 のタッチ。そして、過去を振り返って主人公の内面を追求していく形は、「生きる」 のスタイルですね。


恐怖演出も、Jホラーの影響をかなり受けている様子。でも決して単なる真似ではなく、しっかりと自分のスタイルに昇華させている。アメリカ映画独特の適当さは、微塵も感じられない。


つまり、“本気” で撮っているということなのでしょう。いいもの作ろうとしているその心意気が、画面からビシビシ感じられます。 …素晴らしいことです。



トイレに行くタイミングは、法廷に舞台がチェンジしたばっかりのところが無難でしょう。過去の再現シーンは、できるだけお見逃しなく。


やっぱりねえ、予告編をなんとかすべきだったかなと未だに思います。あれでは、ただのキワモノ映画だと言わんばかりでしょう。もっと、エミリー自身と、神父の苦悩を中心に据えて欲しかった。第一、見せ過ぎるとクライマックスが盛り上がらないんだって。


せっかくいい映画作ったんだから、もっといい宣伝しようよ。


聖書に精通している方は、ご自分の信仰と照らし合わせて考えるのもいいでしょう。悪魔を証明することは、それを創造した神を証明することにもなるらしいから。自分の中にある “悪い部分” と戦いながら、映画を楽しんで下さい。…エミリーと一緒に。


映画を見た後、俺自身は、とてもスッキリした気分になりました。「エクソシスト」 よりも、ある意味爽快感があると思います。まあ、人によるだろうけどね。


…エミリーと神父は、果たして悪魔とどう戦うのか。気になる方は、劇場で確認して下さい。