先日、わが母校産能大学の創設者である上野陽一先生の蔵書などを納めてある「記念文庫」
を見学させていただきました。
以前ホームページで拝見していた「能率机」など貴重な品に興味があり、突然お願いしてみたのですが快く許可していただきました。
期待の能率机は、思ったほど大きなものではありませんでした。学長/理事長の机としてはむしろ小さいぐらいでしょうか。
ホームページでは気にしなかったことなのですが、机の側面には、ほとんど「出っ張り」がないのです。取っ手の部分が側面の「窪み」になっていて、おそらく取っ手に引っかからないような配慮なのではないかと思います。
いくつか仕方なく付けられているような取っ手はありましたが、これは素材も異なり後から付けられたものだと思います。
また、机は多数の引き出しがあるだけでなく、扉のようになっている部分もありました。それにより、机の中に大きなものや、奥のほうまで手が届きやすくなるなどの工夫ではないかと思います。
そして、この机はとても手作り感が濃く、何度も工夫と改善を重ねてこの状態になったのではないかと感じさせるものでした。
ホームページでは上野先生の蔵書についてあまり触れられていませんが、上野先生は大学で心理学を専攻していて、多くの蔵書が残されていました。テイラーの科学的管理法を最初に日本語に訳した人として知られていますが、以外にもご本人は「人」に対する造詣が深い方だったようです。
それを示すものとして、上野先生の多くの著書があります。日本で最初の経営コンサルタントでもある先生の著書は、日本で最初の「ビジネス書」だったのかもしれません。「人を観る」「人を説く」などの「人を」シリーズを中心に、数多くの著書が残されていました。上野先生がこんなに多くの本を書かれていたとは知りませんでした。
この中の「人を観る」の目次を読んでびっくり!
人の思考や性格を知るための手段として「体形」とか「生年月日」など、ちょっとスピリチュアルがかった項目が並んでいるではないですか。当時はこういうことも一種のプロファイリングで、そのようなことをマネジメントに活かせないかと考えていたのでしょうか。
しかし、「人を観る」の最後や「人を説く」の中では、人が組織で力を発揮するためには「やる気」が重要であるということも書かれていました。今のビジネス書とほとんど変わりませんね。
最近思うのですが、ビジネス書は「その時代のビジネス」に着目して書かれているものだから、よほどの名著でない限りロングセラーとなるものは出てこないようです。ビジネス書とは少々ライフサイクルの長い雑誌のようなものだと感じます。
そういうことからも、上野先生の著書が今では読めなくなってしまったのも仕方のないことかもしれません。でも、日本に近代のビジネス思想が持ち込まれてきた頃の著書には、今とは違う観点、もしくは回帰してきた観点などが含まれているのではないか、などと想像すると、ぜひ読んでみたいと思いました。
残念なことに、これら上野先生の著書はほとんどが絶版となっており、当面は再版されることもないだろうとのこと。うーん、もったいない。