LLC (1) | クルマ屋 奮闘記

LLC (1)


今日の相手は中古車で購入されて弊社初入庫になる 10年選手の ハイエース LH113V
上の写真は、水漏れしていたエンジンのウォーターフランジ ( ホースの継手部 ) です。

元々は艶消しシルバーのような色だったアルミ合金が、腐食して白い粉を噴いていました。
原因は、LLC ( ロングライフクーラント ) に対する長年のメンテナンス不足にあると推定!

前々からこういう事例を見るにつけ、日頃のメンテナンスの重要性を改めて思います。
良い機会なので、この記事では 「 LLCに関して 」 思うことを書いてみました。

不凍液性能 ( アンチフリーズ ) :
水冷式エンジンには冷却水が必要不可欠なのですが、水は凍結するときに自由に膨張できる場合9%の体積膨張を生じるといわれています。 つまり凍るとエンジンが割れてしまいます! 
だから所在地の気候に応じて、不凍液濃度を濃くして凍結温度を下げてやる必要があります。

冷却性能 ( アンチオーバーヒート ) :
これに関しては残念ながら真水に優るものはない?
つまり前項と相反して不凍液濃度が濃いほど冷却効果が悪くなってしまうのです。

消泡性能 ( アンチキャビテーション ) :
流体中に気泡が発生し金属表面を壊食することをキャビテーションといいます。
だから冷却水にはある程度の消泡性能が求められます。

防錆性能 ( アンチラスト ) :
鉄・アルミ・真鍮といった冷却系統各部の金属を腐食から守ってやる必要があります。

防錆性能以外については、冷却液は半永久的な性能を維持します。
しかし現在の防錆技術はまだまだ過渡期で、限られた年数しか防錆効果を維持できません。
だからこそ、メンテナンスに携わる者として腕の見せ所になる訳ですが・・・

LLCの防錆効果持続期間は、冷却液の品質でかなりの差があります。
新車からの耐用年数は下記の通り。

  ホンダ純正ウルトラeクーラント : 新車11年/過程車6年
  トヨタ純正スーパーLLC : 新車7年/過程車4年
  従来型一般クーラント : 新車3年/過程車2年

ここで注目したいのは 一度交換した後の耐用年数 です!
高性能クーラントでは、精製水での希釈が必須なほどシビアな為に、
完全な全量交換が難しい過程車の場合、新車時に対して6割弱の期間しか防錆効果が期待できません。 内部洗浄に精製水を無尽蔵に使えば別でしょうが (^_^;

ホンダ純正の場合、精製水で希釈済みの製品だけしか供給されていません。
対防錆の取り組みが先進的で、冷却系金属材料への配慮と相俟っての数字なのでしょう。
逆に トヨタ純正の場合は原液での供給 になっており・・・
「精製水が入手できない時は水道水で希釈してください」 とあります。

クルマ屋が思うに、この両者のスタンスの違いが表示耐用年数の違いになって表れているのではないか? クーラント自身の防錆性能はそんなに大差ないのではなかろうか?
点検・車検時に自然減少分を水道水で補水するのは、かなりの罪悪なんだろうな!
塩素が混ざれば明かに錆びやすくなりそうです。
ということは、従来型一般クーラントに対しても精製水を使用すると良さそうですが。。

高性能クーラントの採用時期は、ホンダが 2000年 6月以降。 トヨタが 2002年 5月以降。
希釈が必要なトヨタ純正スーパーLLCの定期交換需要が発生しだすのは 2009年です。
それ迄はほとんどの整備工場では、大量の精製水をストックするには至っていません。


唐突ですが、来るべき将来を予測してみました。

ホンダ・オデッセイの場合、冷却水全容量は 約 7.8L ですので、LLC代だけでも 約1万円。
トヨタ・エスティマの場合、リヤヒーター付き車は 約 11.0L で、同じく 約1万1千円。

LLC交換だけでこの値段って痛くありませんか?
もうあと何年乗るかわからないクルマに、従来品の 2~3倍の値段の高性能品を使う?
私は事故車修理以外では、ホンダ純正を再び充填するケースは少ないだろうと思います。
11年目以降は従来品を2年毎に交換してやるのが賢そうですよね。

反対にトヨタの設定は絶妙なのではないでしょうか。。
これならば継続的に4年毎に需要発生する率も高いだけでなく、2倍の防錆効果を謳って
既販車・他メーカー車への需要も望めそうです。   や~るな~、お主!!  (>_<)尸

精製水の安い仕入先、頑張って探しますです。。 ww