輸入品が高くなり輸出するものが安くなる新しい不況。

『ドル高円安』は当然の成り行きだ。日本が『無制限無期限の金融緩和』黒田日銀総裁)をやっているところへ、アメリカが景気の加熱を予測して金融引き締めに転換したのだ。


だから、世界経済の中で1万円札が増えて、1ドル札が減っていくことになる。相対的に円が安くなるわけである。これは輸入品が高くなり輸出品が安くなることになる。


●円安による景気上昇は昔のように期待できない。


言い換えれば、輸入が減って輸出が増える原因になるわけだ。ところが、それは、一昔前の話になっている。日本の輸出を担ってきた大企業は、現在は円安になっても輸出先での販売価格を下げずに、利益を出すことに努力するようにになってきた。


量より質という考え方である。そうなると、輸出は円安になってもそれほど増えなくる。と言うことは、円安になっても日本国内の生産は増加しないことになり、円安による景気上昇は期待できなくなるわけだ。


●円安が日本経済のマイナスなら株は値下がりするはず?


加えて、困ったことに現在は輸入額の方が輸出額の方が多くなっている。つまり、円安は景気にプラスだった時代は終わって『円安は日本にとってマイナス』の時代になっているのである。


アベノミクスで『無制限無期限の金融融緩和』をやると言った時から、円安株高が始まったのだが、考えてみれば、これは奇妙なことなのだ。なぜなら、現在は円安が日本経済にとってマイナスであれば、株価は値下がりするはずではないのか、ということになるからだ。


●無理やりの金融緩和でその融資資金が株式へ注がれた。


その通りだが、実は経済市場で資金が不足していない状況で無理やり金融緩和をやったため、その融資資金が株式市場へ注がれたのである。


バブル期にも金融機関は、株を担保にして融資するという反則をやったものだが、この不自然な景気政策『アベノミクス』でも、融資先がその資金で株を買っても金融機関は『おとがめなし』として来たのだ。


●デフレで緩み放しの金融バルブを絞めるわけにはいかない。


この円安は、115円まで進むのではないか、と見られている。それは、アメリカが金融引き締めをしたのに対して、日本はデフレが深刻化しており、緩み放しの金融バルブを絞めるわけにはいかないと見られているからだ。


そんなことをやれば、株価は急落して日本経済は崩壊するだろう。たとえて言えば、水道の蛇口を開けっ放しにしているのに、水(資金)は下の市街地に流れて行かずに、山の手の高台(金融市場)へ吸い上げられている--。


●金融緩和から着手する経済政策などあり得ないこと。


そんな状況なのである。そして、黒田総裁は唖然として安倍首相の顔色を見ながら水道の蛇口をどうしたものか考えあぐねているのだ。非常識な手順違いの経済政策をやってしまったので、こんなことになったのだ。


常識的に金融政策は加熱(インフレ=紙幣過剰)した経済活動を冷やすために『引き締め』で実施される。金融緩和から着手する経済政策などあり得ないことなのだ。


●新エネルギー産業の育成という財政投資をためらった。


また、たとえになるが、からだを動かす仕事がないのに沢山の食事を出されて『食べろ食べろ』と進められたら、その人はメタボになってしまうものだ。アベノミクスはそれをやってしまったのである。


アベノミクスがこんな重大なミスをやってしまったのは、原子力発電に執着して再生可能エネルギー産業の育成という財政投資をためらったのが最大の原因だ。


●政府が土建業に予算を出しても国民には行き渡らない。


これを軸にして、保育、教育、介護、そして、観光などへの財政出動を大胆に行うべきなのに、旧態依然の土建業界中心の財政投資をやってしまった。この業界は下請け構造が幾重にもあって、最終的には派遣や日雇いという歪んだ搾取になっていて、資金は労働者には十分流れない。


つまり、政府が予算を出しても国民には行き渡らず、景気好転にはつながらないのである。安倍首相は、国会の所信表明で『アベノミクス』には一言もふれずに、突然に『地方創生』を言い出した。


●東京の株高景気は地方のデフレ深刻化の原因になった。


しかし、『アベノミクス』では大都市(東京)と大企業が優先されて、地方経済が犠牲になってきた。それを総括しないで『地方創生』はないのではないか。あえて指摘するが、『アベノミクス』で株価が上がって東京は『株高景気』になった。


だから、贅沢品が売れるわけだ。このこと自体が国民すれば『政治のが上昇するものなのではないか。このような、一部の富裕層だけがさらに裕福になる政治を進めている安倍政権をこれ以上許していては、日本経済がダメになる。