「味わわない」か「味あわない」か 教えて!goo | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中)【20】 
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1964513447&owner_id=5019671 

mixi日記2018年05月10日から 

 テーマサイトは下記。 
【「味わう」の否定は「あじわわない」でしょうか】 
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/10484773.html 

===========引用開始 
「味わう」の否定は「あじわわない」でしょうか. 
「あじわわない」は「わ」二つあるのでどう発音するのでしょうか?「わ」を二回発音するのか長引いて発音するのか教えてください 
===========引用終了 

 結論だけを書くなら。 
「味わわない」です。「味あわない」は誤用です。話し言葉で「味わーない」にするのは……許容範囲でしょうか。 
 ……で終わるはず。感覚的にはよくわかりますが、原形が「味わう」ですから「味合わない」になる理由がありません。 
 これを「味あわない」とする誤用をよく見ます。「味あわない」を許容するためには、「味あう」とか「味あい」といった言葉をつくる必要が出てくるはずです。 

 先行回答を読んで驚いた。 
 まず、No.4のかたのコメント。 
===========引用開始 
[日本国語大辞典] 
あじ‐あ・う[あぢあふ] 【味】 
解説・用例 
〔他ワ五(ハ四)〕 
「あじわう(味)」に同じ。 
*彰考館本寝覚記〔鎌倉末〕下「くちにあぢあふ所をばなむべからず」 
*俳諧・口真似草〔1656〕一「あぢあふやひとくひと口鶯菜〈吉連〉」 
===========引用終了 

 うーん。「味あう」もアリなのか。でもこの用例は相当古いよね。現代の用法で「味あう」を許容しているものがあるのだろうか。 
 もうひとつ驚いたのは、No.3のかたが引用したNHKのサイト。これは相当ヒドい。全文は末尾に保全する。 
 何がヒドいって「文法的には「味わわせる」が正しいこと〝になります〟」はないでしょうに。 
 ではなくて、木村カエラの歌にあるって、それがなんなの?  
 歌詞は、音数の問題もあって相当無理なものがある。「心のやらかい場所」って出てきたのはアレで、「違くて」とか使っている歌詞も多いはず。古い例では「パイプくわえて口笛吹いて」って器用な話が有名だが正確には「煙草ふかして口笛吹いて」らしい。 
 もちろん作詞者が承知のうえでやっているれいもあるだろうが、ホニャララな例も……。 
 閑話休題。 
 とにかく、そういう例を根拠にするのはやめてほしい。 

 ちなみに、NHKのサイトが「味わわない」ではなく「味わわせる」にした態度はきわめて正しい。 
 ↓に書いたけど、「味わわない」は割に簡単に書きかえができるけど、「味わわせる」はできない。そのため、使用例が多い。必然的に「味あわせる」って誤用も多い。 
 もうひとつ、「味わわせる」同じことになりそうなのは、「祝わせる」のほかに「賑わわせる」がある。 
 これも下記のような理由で避けるこよができる。仮に「味わわない」なら「味わいはしない」「味わうことはなかった」などの形に逃げることができる。 
 ところが「味わわせる」は逃げるのがむずかしい。  
 近い将来、「味あわせる」が許容されても不思議はない。ただ、そのためには「味あう」を認める必要もありそうだけど。 

 詳しくは下記をご参照ください。 
【「味わう」「味わわせる」と「賑わう」「賑わわせる」「賑わせる」】 
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1745.html 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━引用開始 
 答えだけを書くなら「味わわなければ」が正解。 
 これを「味あわなければ」とする誤用をよく見る。これはいくら誤用例が増えても「味あわなければ」が許容されることはないだろう。もしそれを認めるなら、「味あう」とか「味あい」といった言葉をつくる必要が出てくる。 

■Web辞書(『大辞泉』から) 
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E5%91%B3%E3%82%8F%E3%81%86&stype=0&dtype=0 
================================ 
あじ‐わ・う〔あぢはふ〕【味わう】 
[動ワ五(ハ四)] 
1 飲食物を口に入れて、そのうまみを十分に感じとる。味を楽しむ。「よくかんで―・って食べる」 
2 物事のおもしろみや含意を考えて、感じとる。玩味(がんみ)する。「詩を―・って読む」 
3 身にしみて経験する。体験する。「人生の悲哀を―・う」 
[可能] あじわえる 
================================ 

「味わう」はワ行の五段動詞なので、「味わわ(ない)」「味わい(ます)」……と活用する。 
 使用例を考えると、「味わわなければ」の形より使役形の「味わわせる」のほうが多い気がする。「同じ屈辱を味わわせてやる」みたいな言い回しを、某雑誌で散々見た(笑)。 
「味わう」と同じような形になる動詞を探してみた。動詞の語幹の最後が「わ」+ワ行五段活用? 
  祝う/賑わう/化粧(けわ)う 
  
「化粧う」は滅多に使わないだろうな(笑)。 
 以前からマークしていたのが「賑わう」。「祝う」も仲間か。気がつかなかった。 
「祝わなければ」は間違いではないけど、めったに見ない。フツーは「お祝いしなければ」とか言うだろう。 
「祝わせてやる」もめったに見ない。「オマエにも祝わせてやるよ」「遠慮しときます」(笑)。「お祝いさせてやる」もギャグとしてしか使わないだろうな。 
「賑わわなければ」も間違いではないけど、めったに見ない。もしどうしても必要があるなら「賑わせなければ」と言うんじゃないかな。これは「賑わう」のほかに「賑わす」という動詞があるから。 
「賑わわせる」の場合も「賑わせる」でほぼ同じ意味になる。 

「味わう」の話に戻ろう。 
「お祝いしなければ」「お祝いさせてやる」と同様に変形するなら「お味わいしなければ」「お味わいさせてやる」……言わないorz。 
「賑わせなければ」「賑わせる」と同様に変形するなら「味わせなければ」「味わせる」……これも言わないorz。 
 こういう事情があるもんで、「味わう」だけは「味わわなければ」「味わわせる」という美しくない形になってしまう。 

【追記】 
 あえて言いかえ案を探すなら……。 
「味わわなければ」→「味わってみなければ」「食べなければ」などいくらでもある。 
 問題は「あじわわせる」。 
「味わわせる」→「味わってもらう」くらいかな。 

「味あわせる」のほかには、「味わわさせる」という誤用もあるらしい。 
 これも「サ入れ言葉」の一種なんだろうな。 
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%C6%FE%A4%EC%B8%C0%CD%D5  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━引用終了 

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20160601_3.html 
===========引用開始 
Q「味あわせる」「味わわせる」のどちらが正しいのでしょうか。 
A文法的には「味わわせる」が正しいことになります。 

<解説> 
現代語の「味わう」は、ワ行五段活用の動詞です。 

味わワ(ない)、味わイ(ます)、味わウ、味わエ(ば)、味わオ(う) 
このように、「語幹」が「味わ」で、「活用語尾」が「ワ、イ、ウ、エ、オ」となります。「語幹」というのは、「変化しない部分」です。「~せる」が下に連なるときにも、語幹を保存して「味わわせる」となります。 

ただし、「味あわせる」という形も、実際にはよく使われています。ウェブ上でおこなったアンケートでは、年代差や男女差はあるものの、全体としては「味わわせる」よりも「味あわせる」のほうを支持する意見のほうが、やや多くなっていました。また次のように、歌詞にも使われています。 

〈カシスより赤く染まって酔いしれる ブレンドされた時はぜいたくに 
ゆっくり味あわせてね〉 
【「Hungry like the CHICKEN」歌・作詞:木村カエラ】 
さらには、「合う」という漢字を当てて「味合わせる」と書いた例も、少なからず見られます。 

この「味あわせる」は、本来変化しない部分である語幹の「味わ」の「わ」を「あ」に変えてしまっているという理由で、文法的には正しくないとされています。「味あわせる」という形が出てくる背景には、一つには伝統形「味わわせる」に含まれている「~わわ~」という「同音の連続」を避けたいという意識があります。その証拠に、「味あわせる」「味あわない」という形では比較的多く用いられていますが、それに比べると「味あいます」「味あう」「味あえば」「味あおう」といったものは、それほど使われていないようです。語幹部分を保存した伝統形「味わいます」「味わう」「味わえば」「味わおう」のままでも、「~わわ~」という同音の連続は生じていないからです(田野村忠温(2011)「大規模コーパスとしてのインターネット」)。 

同じように「~わわ~」という「同音の連続」が生じているものとして、「祝わない」「祝わせる」などもありますが、これについては「いあわない」「いあわせる」という「同音連続回避形」は、あまり見られないようです。そういえば、自分の誕生日を積極的に祝わなくなってから(そして、祝われなくなってから)、もうずいぶんたちました。負けるな、俺。 

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2016年2月~3月実施、744人回答) 

メディア研究部・放送用語 塩田雄大  
===========引用終了

 

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