「自然に」と「自然と」の違い〈1〉〜〈4〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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 フリーランスの編集者兼ライターです。
 主として日本語関係のことを書いています。

 少し前に下記のトピが立った。
 しばらくしたら、この日記のリンクを張ろうと思う。このままではtobirisuが恥をかいてしまう可哀想、と思う心優しい方は、補足のコメントをください。

【自然に、と 自然と、 の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41239142&comment_count=4&comm_id=398881

 トピ主の質問は以下のとおり(一部勝手に加工する)。
================================
自然「に」友達になりました。自然「と」友達になりました。
この二つの「に」と「と」の
違いを聞かれました。
「に」はプロセスに焦点、「と」は結果に焦点と答えましたが、
どなたか、明確なお答えをお願いいたします。
================================

「プロセス」とか「焦点」とか説明して理解できるのだろうか。微妙すぎて少なくとも当方は理解できない。ほぼ同じとしか思えない。
「○○に行く」と「○○へ行く」の違い、って問題と似ている気がする。「目的地」と「方向」の違いとか説明されても、そんな微妙なことは当方には理解できない。ほぼ同じだと思う。
 こういうのは「個人の感覚」「個人の意見」でしかないだろう。そんなことを断言する根拠はなんなのだろう。ちなみに「語感」とかを根拠に断言する人が多いけど、それだけでは根拠にはなりにくい。そんなことを言い合っても、水掛け論にしかならない。
 この質問はいくつかの要素を含む難問だけど、書いてみる。

 トピを見ると辞書もひかずに思いつきで書いているコメントがある。きっとすごい上級者なんだろう。こんな問題を辞書もひかずに答えられるなんて。
 まずネット辞書から抜粋する。コメントの「2」で引いているが、不完全な気がする。「4」※のコメントも一面的。こういう微妙なものの場合は、疑問を感じたら複数の辞書をひくべきだろう。
 ※読み返して間違いに気づいた。「4」ではなく「6」です。申し訳ない。
 当方が見た3種の辞書は副詞を採用している。とはいえ、副詞なのか「副詞的に使う」なのかは、この場合はたいした問題ではない。

『大辞泉』===========================
し‐ぜん【自然】
[形動][文][ナリ]
1 言動にわざとらしさや無理のないさま。「気どらない―な態度」「―に振る舞う」
2 物事が本来あるとおりであるさま。当然。「こうなるのも―な成り行きだ」
3 ひとりでにそうなるさま。「―にドアが閉まる」

[副]
1 ことさら意識したり、手を加えたりせずに事態が進むさま。また、当然の結果としてそうなるさま。おのずから。ひとりでに。「無口だから―(と)友だちも少ない」「大人になれば―(と)わかる」

『大辞林』===========================
(形動)
行為や態度がわざとらしくないさま。
―な動作
―な反応

(副)
(「に」や「と」を伴うこともある)ひとりでに。おのずと。
―に体が震えてくる
世の中のことが次第に分るにつれ―と心に合点が行き〔出典: 谷間の姫百合(謙澄)〕
―祖母が一家の実権を握つてゐた〔出典: 平凡(四迷)〕
================================

 手元の『広辞林』だと「形容動詞」はのせていない。副詞で「―(に・と)ねむくなる」の例をのせている。『大辞林』とほぼ同じと考えていいだろう。どちらも「自然に」と「自然と」の違いは書いていない。辞書的には同じってことなんだろう。
 やっぱりこういう問題は辞書をひかないとダメだな。調べるまでは「自然と」は△と思っていたが、そんなことはないようだ。


1)副詞の働きをする「○○に」と「○○と」の違い
 同じように両方の形をとるものとして思いつくもの。
  「意外に」「意外と」
  「割合に」「割合と」
  「割に」「割と」
 以前は「意外に」「割合に」「割に」が正しい日本語で、「意外と」「割合と」「割と」は俗語、話し言葉の類いとされていたはず。最近は採用している辞書もあるらしい。古い話は記憶に頼っているだけなので、強く主張する気はない。
「自然に」「自然と」も、ほぼ同様だと思っていた。古い用例があるから、「自然と」もアリなんだろう。ただ、個人的には、「自然と」は使いにくい。原則として「自然に」を使う。ほかも同様で、「○○に」が自然な日本語だと思う。

 念のため、ネット辞書と手元の『広辞林』(1988年版)で調べてみる。
     大辞泉  大辞林  広辞林
意外と  有    無※1  無
割合と  無    無※2  無
割と   有※3  有    有
※1 なぜか調べることさえできない(泣)
※2 「割と」の意味に「わりあいと」があるのに項目がない(笑)
※3 「割に」と同じ、とあるからフツーに考えれば「割に」が本筋だろう。

 辞書も錯綜気味?
 辞書に項目がないからといって、「意外と」「割合と」が間違いとは言いきれない。下記の2)のような考え方もできるからだ。


2)「自然」と「自然と」の違い
「と」に関しては以前同じコミュでトピが立っている。
【「机の上に本を山と積む」の「と」について】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=37186676&comment_count=1&comm_id=398881
 このときにも辞書もひかないコメントが入っている。きっとすごい上級者なんだろう。このトピの流れは細かい部分で疑問があるが、パスする。

■Web辞書『大辞泉』から
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A8&dtype=0&dname=0na&stype=1&index=12961900&pagenum=11

 ↓

https://kotobank.jp/word/%E3%81%A8-579147
================================
[格助]名詞、名詞的な語、副詞などに付く。
1 動作をともにする相手、または動作・関係の対象を表す。「子供―野球を見に行く」「友達―けんかをした」「苦痛―闘う」
「しぐれ降る暁月夜紐解かず恋ふらむ君―居(を)らましものを」〈万・二三〇六〉
2 (文や句をそのまま受けて)動作・作用・状態の内容を表す。引用の「と」。「正しい―いう結論に達する」
「名をばさかきの造(みやつこ)―なむいひける」〈竹取〉
3 比較の基準を表す。「君の―は比べものにならない」「昔―違う」
「思ふこといはでぞただにやみぬべき我―ひとしき人しなければ」〈伊勢・一二四〉
4 動作・状態などの結果を表す。「有罪―決定した」「復讐(ふくしゅう)の鬼―化した」
「年をへて花の鏡―なる水は散りかかるをやくもるといふらむ」〈古今・春上〉
5 (副詞に付いて新たな副詞をつくり)ある状態を説明する意を表す。「そろそろ―歩く」「そよそよ―風が吹く」
「ほのぼの―春こそ空に来にけらし天のかぐ山霞たなびく」〈新古今・春上〉
(以下略)
================================

「自然と」の「と」は上記の「5」だろう。手元の『広辞林』だと、同じことを「状態を強めていう」としている。「そろそろ」「そろそろと」のように「と」があってもなくてもどちらもアリってことらしい。
 そう考えれば、「自然」も「自然と」もアリ。厳密に言うと、「自然と」は1語の副詞ではなく、副詞の「自然」に助詞の「と」がついたと考えるべきではないだろうか。まあ、1語でも2語でも大きな違いはないけど。 


3)結果などを表わす「と」と「に」の使い分け
 これは前に別のトピで書いた。
【来る人がいない?/ご参考ください の違和感】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=39728414&comment_count=11&comm_id=19124
================================
>0
>「参考に」と「参考と」のニュアンスの違いはなんなんでしょうか。
 諸説あるようですが、個人的には意味はほとんど同じと考えています。
「と」のほうが少し堅苦しいニュアンスがあると感じるので、自分では極力「に」を使うことにしています。ただし、「一丸となる」の場合などは、「と」のほうが自然でしょう。
 この話もキチンと書こうとするとかなり長くなるので省略します。
================================

 こういう用法(『大辞泉』の「と」の項の「4」とほぼ同じ)だと、基本的には「と」でも「に」でも大きな違いはない。「と」には意志が感じられると書いてある本があったけど、ちゃんとした根拠があるとは思えない。当方は原則「に」を使うけど、「と」が好きな人は「と」を使えばいい。「と」のほうが「少し堅苦しいニュアンスがある」ってことは、「少しだけ格調が高く感じられる」と言いかえることもできる。
 ただし、どちらでもいい場合は好きなほうを使えばいいということで、なんでもかんでもどちらかに統一、なんてムチャなことは言えない。

 関係しそうな話。
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1317.html
================引用開始
 P.155~156〈「~に行く」と「~へ行く」の違いを知る〉。
 表題の「~に」と「~へ」の違いはよく見る。正直なところ、どう違うのかよく判らない。「~に」と「~へ」の違いに続いて「と」と「に」の違いについての解説がある。
【引用部】
 (1)「大学生となる」
 (2)「大学生になる」
 日没の光が失せ、夜になった、とは言うが、夜となった、とはめったに言わない。「~になった」は、自然にそのような状態に達した時に使う。よって、(2)は、たいして考えもせず、または苦労せずに、昼が夜になるように大学生になったというニュアンスである。それに対し、「~となる」は、能動的な意志を表すので、(1)からは、意思や苦労が伝わってくる。

 こんなことが言えるのだろうか。たとえば将来の夢を訊かれた小学生が「〇〇になる」と答える。これは受動的? よく判らん。
================引用終了

『大辞泉』の「自然」の項に出ていた副詞用法の場合も注意が必要だろう。
  A 無口だから自然(と)友だちも少ない
  B 大人になれば自然(と)わかる
 Bは「に」にできるが、Aは「に」にはしにくい。たいていの「自然と」は「自然に」に書きかえることができるのに、これはむずかしい。そういう例がのっているのは偶然なんだろうか?
 繰り返すけど、個人的には「自然と」は俗語、話し言葉のような印象なので使いたくない。Aの例なら下記のように書きかえる。
  A-2 無口だから友だちも少ない
  A-3 無口だから必然的に友だちも少ない
  A-4 無口なせいで友だちも少ない
 A-3には少し異和感がある。

【続きは】↓
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1235.html



【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】〈2〉
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-588.html

 念のため、下記のトピの話です。
【自然に、と 自然と、 の違い】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41239142&comment_count=4&comm_id=398881

「22」でトピ主が締めたんで、もう話は済んだのかもしれない。
 こういう展開になったときにいつも思うのだが、トピ主の疑問はホントに解決したのだろうか。 
 当方は何がなんだかわからないまま、モヤモヤ感だけが残っている。やはり当方は文法が相当苦手なのかもしれない。
 まあ、質問した立場としては「そんな説明じゃサッパリわかんないよ」とか「で、結論はなんなのよ」とかは書けないだろうけど。

【1】のコメントを細かく見ていく
 携帯ユーザーを意識して、アチコチみたいで済むように、できるだけ引用する。


「1」
※12行削除

「2」Fさん
【1】で書いたように、この引き方では不十分でしょう。


「6」Pさん
【1】で書いたように、この引き方では一面的。いかん。【1】で〈「4」のコメントも一面的。〉と書いてしまった。「6」のことです。

>形容動詞と副詞の両方の品詞認定を持っている単語もありますが、「自然」は「副詞的に使う」ことはあっても、少なくともこの辞書では福祉としての品詞認定はされていませんね。

「この辞書」では副詞にされてないかもしれないけど、ほかの辞書は副詞にしていることは【1】で書いたとおり。ただし、この場合「副詞」か否かは、さほど大きな問題ではないでしょう。


「8」
※5行削除

「13」Lさん
>あれこれ考えているとBのような気がします。

 これは当方が「12」で訊いた下記の質問に対する答え。

>3)「自然と」と「自然に」の違いは下記のどちらに近いと思いますか
>  3)-A 「意外と」と「意外に」
>  3)-B 「~という結果となった」と「~という結果になった」

 やはりそうなんですね。最初から気になったので質問しました。「自然と」と「自然に」の問題はどちらかと言うとAでしょう。「16」「20」あたりのコメントもAと考えて答えていると思います。
 Bの話をしたいのなら、別の例で訊くべきでしょう。


「14」tobirisu
「12」のコメントに対する当方のコメント。

>いきなり呼び捨て(単なる操作ミスだとは思いますが)で横入りですか。
>勘弁してください。

 別に「12」のコメントを責める気は何もありません。
 呼び捨てになってしまったのは単なる操作ミスだと思います。まあ、なかには悪意を持ってこういうことをする人もタマにいるので、あえて書きました。
 横入りも、ケースバイケース。
 ただ、この場合は、「11」の質問はトピ主の考えを確認しているものです。それに対して横から答えてしかも見当外れだったからあえて書きました。
 これだって、ひとこと断わりさえすればさほど失礼なことではありません。


「15」
※6行削除

「16」Hさん 
 このテのトピで時々目にする超上級者のコメント。
 どうすれば、これだけたくさんの例文が作れるのでしょう。

> このように、表現Aと表現Bとではどう違うか、という疑問が生じた場合、表現Aが可能で表現Bが不可能な文や文脈、表現Aが不可能で表現Bが可能な文や文脈を残らず挙げて、比較対照し、そういう違いがどうして生じるのかを説明しないといけないと思う。上のも隠された違いの一部にしか過ぎず、まだまだ他にも説明の可能性があるかもしれない。

 おっしゃるとおりだと思います。と言うか基本中の基本でしょう。だから、失礼とは思いながら、当方は「14」で下記のように書きました。これをちゃんと書くと、↑のようになるってことでしょう。

>ちなみに、もし「12」であげられた例文と解釈が正しいとすると、以下はすべて誤用もしくは不自然な用法ということになるのでしょうか。そんなことはありませんよね。

 ただし、一般の人がこんなに多くの例文について考えるのは相当むずかしい。しかも「まだまだ他にも説明の可能性があるかもしれない」もそのとおりだと思います。ということは、その都度考えるしかないってことでしょうか。
 いくつかの例文を考えて、そこからなんらかの法則性を見いださないと、キリがありません。
「助詞」の場合、この法則性を見つけるのがむずかしく、それは学者さんの仕事だと思います。
 さらに言うと、なんとか法則性を見つけても例外が多いと破綻します。トピでもリンクを張った下記のトピ参照。
【時を表す助詞「に」について】 
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=41033748&comment_count=18&comm_id=19124


「20」sさん 
 まず素朴な疑問。「20」のコメントを入れたsさんの足跡が当方の「ホーム」に見当たらない(当方の見落としなら申し訳ないけど)。ということは当方の「ホーム」は見てないのだろう。「素人の仮説」には興味がないのなら仕方がない。
 
>1、意味的には、ほぼどちらも同じである。
>2、『自然に』は、な形容詞の『自然』が副詞化された、いわば『natural→natural·ly』のようなもの。

 ここまではわかります。英語に書きかえるのが有効か否かは一概には言えませんが、ひとつの方法でしょう。

>3、『自然と』これも同じく『自然』を副詞化して、動作や状態の様子を表す。ただし「に」と違うのは「に」が必然的にそうなることを表すのに対し「と」で扱われる副詞は漠然とそうなってしまうことを示す点にあります。

 あのー。そんなことを断言する根拠はなんなのでしょうか。

>『自然と』これも同じく『自然』を副詞化して、動作や状態の様子を表す。

 ここまでは理解できます。「自然と」を1語と考えるべきか2語と考えるべきかは当方には判断できませんが。
「に」と「と」にそんな違いがあるのでしょうか。「自然に」「自然と」の場合は、そういうニュアンスの違いが感じられることもなくはないでしょうが、ケースバイケースだと思います。あくまでニュアンス(あるいは「語感」?)で、人によって感じ方は違うでしょう。基本的には「ほぼ同じ」だと思います。こんな微妙なニュアンスの違いは、学習者を混乱させるだけではないでしょうか。
 当方が【1】で書いた以下の場合はどうでしょう。
  「意外に」「意外と」
  「割合に」「割合と」
  「割に」「割と」
「に」が必然で「と」が漠然なんてことはないと思います。

>「自然」以外にも、他のな形容詞に応用できるかといえば、それはその後に続く語句との組み合わせによって筋が通っている内容になるかならないか異なります。そこは万国共通ですよね。

 それはそのとおりでしょうが、話がヘンなほうに行ってないでしょうか。それは「に」と「と」の問題ではなく、修飾語と被修飾語の親和性(?)みたいな話ではないでしょうか。


「21」Fさん
 ご丁寧にありがとうございます。上に書いたように、悪意のないミスなら何も問題は感じていません。
「16」Hさん、「20」sさんのコメントに対する当方の考えは上記のとおりです。ご確認ください。
 ところで、当方の仮説に関してのコメントはいただけないのでしょうか。「素人の仮説」などコメントに値しないのなら仕方がありませんが。シクシク。




【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】〈3〉※微毒アリ編

mixi日記2010年08月29日から
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1571263432&owner_id=5019671

 テーマトピは下記。
【「と」の使い方】
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=55864554

 下記の続きでもある。
29)【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】(2009年04月03日)(以下【1】と表記)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-305.html
30)【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い2】(2009年04月07日)(以下【2】と表記)
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-588.html

 毒アリ編ですが、当面は公開制限はしません。トピにリンクを張ることもないでしょう。リンクを張る場合は前半を削除します。

(中略)

 なんでそんな強引な考え方をする必要があるのかな。当方は副詞の「自然」に「と」がついたものだと思う。そのほうが素直だから。「自然と」が1語の単語として認められているかは微妙。たぶん現段階では辞書にもないから認められていないんだろうね。

 ここから先は毒控えめで少しまともなこと?を書く。
 【1】から抜粋する。(【一覧】部を再度調べ直してみた)
================================
1)副詞の働きをする「○○に」と「○○と」の違い
 同じように両方の形をとるものとして思いつくもの。
  「意外に」「意外と」
  「割合に」「割合と」
  「割に」「割と」
 以前は「意外に」「割合に」「割に」が正しい日本語で、「意外と」「割合と」「割と」は俗語、話し言葉の類いとされていたはず。最近は採用している辞書もあるらしい。古い話は記憶に頼っているだけなので、強く主張する気はない。
「自然に」「自然と」も、ほぼ同様だと思っていた。古い用例があるから、「自然と」もアリなんだろう。ただ、個人的には、「自然と」は使いにくい。原則として「自然に」を使う。ほかも同様で、「○○に」が自然な日本語だと思う。

 念のため、ネット辞書と手元の『広辞林』(1988年版)で調べてみる。
     大辞泉  大辞林  広辞林  
意外と  有    無※1  無    
割合と  無    無※2  無
割と   有※3  有    有
※1 なぜか調べることさえできない(泣)
※2 「割と」の意味に「わりあいと」があるのに項目がない(笑)
※3 「割に」と同じ、とあるからフツーに考えれば「割に」が本筋だろう。
================================

【一覧】部分の再調査結果
     大辞泉  大辞林  広辞林  品詞
意外と  無※1  有    無    「意外」名詞/形容動詞
割合と  無※2  無※3  無    「割合」名詞/副詞
割と   有※4  有    有    「割」名詞
自然と  無※5  無※6  無※7  「自然」名詞/形容動詞/副詞
※1 「意外」の項に下記の注あり。
◆現在では「意外に」と同様、「意外と知られていない事実」のように「意外と」の形も用いられる。
※2 「割合」の項の副詞の用例に「―(と)やさしい問題」とあり。
※3 「割合」の項の副詞の用例に「―(と)早く治る」とあり。「割と」の意味に「わりあいと」があるのに項目がない(笑)
※4 「割に」と同じ、とあるからフツーに考えれば「割に」が本筋だろう。
※5 「自然」の項の副詞の用例に「無口だから―(と)友だちも少ない」「大人になれば―(と)わかる」とあり
※6 「自然」の項の副詞の[1]に(「に」や「と」を伴うこともある)とあり。
※7 「自然」の項の副詞の用例に「―(―に・と)ねむくなる」とあり。

 
 3つの辞書を見比べた結果わかること。
  意外と 1語と見るか否かは説が分かれる。
  割合と 1語ではないらしい。副詞の「割合」+「と」と考えるのが素直だろう。
  割と 1語と考えることができる。
  自然と 1語ではないらしい。副詞の「自然」+「と」と考えるのが素直だろう。
 疑問が残るのは「意外と」。1語ではないとすると、「意外と」をどう考えればよいのか。この「と」はなんなのか。【1】で見たように、『大辞泉』によると「ある状態を説明する意を表す」のは副詞に付いた場合だけ。これは『大辞泉』がヘンなんだろう。
 ほかの辞書をひく。

■Web辞書(『大辞林』から)
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%A8&dtype=0&dname=0ss&stype=1&pagenum=1&index=113712900000
================================

1 (格助)
[5]動作・状態の様子を表す。
きっぱり―あきらめる
ぐらぐら―揺れる
あふれた水が道路を川―流れる
貴公子然―すます
意外―いい出来だ
================================

 この[5]と考えるのが妥当だろう。「意外と」の用例も出ている。ほかの用例を見ればわかるように、副詞のほかに名詞に付くことがある。手元の『広辞林』には「状態を強めていう」として、何につくと限定してはいない。
 そう考えると、「自然と」は名詞の「自然」+「と」と考えてもいいのかもしれない。
(中略)

 ここで話は少しかわる。
 自分ではどう使っているか、ってことなら事情は大きくかわる。
 【1】で書いたように「意外と」「割合と」「割と」「自然と」は原則的に使わない。どうしても俗語っぽく感じるので、原則的には「に」を使う。話し言葉っぽい雰囲気を出すために、あえて「と」を使うこともあるけど。
「○○と」と「○○に」ではニュアンスが異なるという主張を目にすることがある。否定する気はないけど、肯定する気はもっとない。そんな微妙な違いは理解できないし、説明のしようもない。
「自然」を副詞で使うか否かに関しては、使わない。なんか異和感があるから。
 さらに言うと、「自然に」も滅多に使わない気がする。「おのずと」「必然的に」などを使う。
 ただ、このあたりは好みの問題だから、人に強制する気はさらさらない。まして自分の異和感を理由に「自然」の副詞用法はおかしい、なんてムチャを書いたりはしない。
 仕事のゲラでまじめな文章に「割合と」とあったら、〈本来は「割合に」〉くらいのメモはつけるかもしれないけど。ホントにつけたこともあったような……。

「○○と」と「○○に」は基本的にいれかえが可能だと思うが、例外もある。
  1)割に安い
  2)割と安い
 1)と2)はほぼ同義で、どちらでもおかしくない。
  3)その割に安い
  4)その割と安い
 4)はかなりヘン。理由は見当もつかない。

  5)意外に安い
  6)意外と安い
 5)と6)はほぼ同義で、どちらでもおかしくない。
  7)意外に感じられる
  8)意外と感じられる
 8)はちょっとヘン。理由は見当もつかない。

【1】で書いたように、『大辞泉』の用例にある「無口だから―(と)友だちも少ない」も「に」にはしにくい。この理由も見当がつかない。




【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】〈4〉

 テーマサイトは下記。
【「となる」、「になる」の違いは何でしょうか。】
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12104889857

〈結果などを表わすトとニの使い分け〉に関して非常に興味深いコメントを目にした。
 このトとニ関しては、比較的最近になって研究が進んでいるらしい。
 ニのほうは割に新しい用法だと思っていたが、どうやら古くからあるらしい。そうなんだ。それは別として、ポイントは2つある。

【ポイント1】
「ここで働いて40年ニなる」はトにならない。
================引用開始
歴史的には、ニナルは主格が存在しなくても良い点で、非常に形式語的な用法として一貫しています。
・ここで働いて40年になる
→”40年になる"の主格は、「働いてきた年月の合計時間〈ガ〉」ですが、顕在化すると日本語として不自然になります。
このような性質は、どうやら平安時代から一貫しているようです。
1975年ごろに東大の雑誌で発表されました。
================引用終了

【ポイント2】
「今度の事故は、死亡者数5000人ト、未曾有の惨事ニなった」のトとニは互換性がない。
================引用開始
現代語では、ニは変化結果を抽象的に表し、トはその内容を具体的に表示します。
・今度の事故は、死亡者数5000人〈ト〉、未曾有の惨事〈ニ〉なった。
~トと~ニの語順は入れ替わることがありません。
この研究成果は、21世紀に入ってからのもので、ある査読雑誌で発表されたものです。
私の見るところでは、このような性質も、やはり平安時代から現代語まで続くもののようです。
================引用終了

 かなり微妙な問題なんで、当方が口を挟むようなことではないのかもしれないが、ちょっと疑問を感じた。
 やっぱり、もっとしっかりした文法辞典などで調べなきゃダメかな。それはそれで泥沼が待っているような気がして……。
 まず【ポイント1】に関して。
■Web辞書『大辞泉』から抜粋。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=%E3%81%AB&dtype=0&stype=1&dname=&pagenum=11
================引用開始

[格助]名詞、名詞に準じる語、動詞の連用形・連体形などに付く。

3 動作・作用の帰着点・方向を表す。「家―着く」「東―向かう」

4 動作・作用・変化の結果を表す。「危篤―陥る」「水泡―帰する」
================引用終了

〈結果などを表わすニ〉は「4」で、トにできる(あれ? 「危篤ト陥る」はヘンだな。「{ト/ニ}ナル」じゃなければこういうこともあるってことか)。ところが、「ここで働いて40年ニなる」はトにしにくい。これは〈結果などを表わすニ〉とは違うのでは。
「じゃあ『大辞泉』の何か」と訊かれても困るが、あえて言うなら「3」に近い。下記のニと同様では。
  息子は来年3歳ニなります。
 これは未来のことを言ってるんだから、「結果」ではない。
 よく似た形で〈(すでに3歳になっている子のことを)「この子は3歳になります」という用法もある〉。これはまた別の話で、下記に書いたように〈「こんな粗末な(期待外れかもしれない)もので申し訳ない」という下手に出る意識から出た言い回し〉って気がする。
【「~になります」考〈4〉】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2382.html

 あるいは、下記あたりと同じ、って考え方もできるのでは。「~ニ当たる」くらいの意味。
  現店主は(創業者から数えて)8代目ニなります。
 いずれにしても〈結果などを表わすニ〉とちょっと違うだろう。

【ポイント2】について。
 これも「5000人ト」は〈結果などを表わすト〉とは違う。おそらく、引用などを表わすトに近い。だからニにはできない。あえて書きかえるならデだろう。
 下記のような例なら、トとニの互換性がある。
  今度の事故は、死亡者数が5000人{ト/ニ}なった。トンネル災害としては未曾有の惨事{ト/ニ}なった。


 続き?は下記。
【「ニ」か「ト」か──~になる ~となる ~になった ~となった ~になりたい ~となりたい】
http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3083.html