「きちんと」「ちゃんと」「しっかり(と)」の違い〈1〉〜〈3〉 日本語 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中) 

http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2020.html 

日本語アレコレの索引(日々増殖中)【6】 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1737578274&owner_id=5019671 

 

mixi日記2011年08月02日から 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1757800134&owner_id=5019671 

 

 テーマトピは下記。 

【「きちんと」「ちゃんと」「しっかり」の違い】 

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=63912148&comm_id=398881 

 

 コメントが入らない。コメント「1」が悪かったのだろうか? 

 あくまでも「基本的な資料」として入れたつもりだったのだが。「基本的な資料」を踏まえた話し合いを期待したのに……。 

 まずコメント「1」を転載する。 

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 とりあえず、基本的な資料です。 

 

きちんと/ちゃんと 

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/16925/m0u/%E3%81%8D%E3%81%A1%E3%82%93/ 

 

しっかり/がっちり/がっしり 

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/thsrs/14425/m0u/%E3%81%97%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%82%8A/ 

 

「ちゃんと きちんと しっかり」の検索結果。 

 類似の質問が多すぎて、何がなんだか……。 

http://www.google.co.jp/search?client=safari&rls=ja-jp&q=%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%A8%E3%80%80%E3%81%8D%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%A8%E3%80%80%E3%81%97%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%82%8A&ie=UTF-8&oe=UTF-8&redir_esc=&ei=iHspTu_HL4aOmQXZuv3wCw 

================================ 

 

 昔から話題になっているテーマらしい。こんなテーマに{きちんと/ちゃんと}した答えがあるとは思えないが、少し書いてみる。 

 おそらく、「きちんと」と「ちゃんと」はきわめて近い言葉で、「しっかり(と)」は、少し違う。直前に使った例も、「きちんと」「ちゃんと」はOKだけど、「しっかり(と)」は△。 

 ただ、この△の理由を説明するのはけっこうむずかしい。少なくとも、当方の文章力では、日本語学習者が理解できる理由を書くことなんてできない。 

 仮に日本語学習者に対する回答なら以下の感じになると思う。 

 

「きちんと」と「ちゃんと」はほぼ同じ言葉。「しっかり(と)」もほとんど同じ意味で使えることがある。ただし「しっかり(と)」は「○○」のニュアンスもあり、そちらの意味で使うほうが自然なことが多い。 

 さて「○○」に入るのはなんでしょう。 

 微妙な話なんでいつにもましてくどーい書き方をする。 

 

 まず「きちんと」と「ちゃんと」の違い。↑のgoo辞書の全文をひく。 

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きちんと/ちゃんと 

[共通する意味] 

★整っていて、乱れがないさま。 

[英] 

neatly 

[使い方] 

〔きちんと〕(副)スル▽きちんと並ぶ▽帽子をきちんとかぶる▽きちんとした服装 

〔ちゃんと〕(副)スル▽ちゃんと座る▽ネクタイをちゃんと締める▽先生の前ではちゃんとしていなさい 

[使い分け] 

【1】二語とも、ほぼ同意で、同じように使われるが、「きちんと」のほうが、整い、乱れのないさまをいう感じがより強い。「ちゃんと」は、口語。 

【2】二語とも、他に、「箱にきちんと(ちゃんと)納まる」のように、物がよく当てはまるさまや、「時間をきちんと(ちゃんと)守る」のように、正確で間違いのないさまの意でも用いられる。また、「ちゃんと」は、「ちゃんとやっておいた」のように、確かであるさまの意でも用いられる。 

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 こんな感じだと思う。意味も用法もほとんど同じ。微妙な違いを箇条書きする。 

1)「ちゃんと」のほうが話し言葉的 

2)「きちんと」のほうが整っている感じが強い(あくまでも「感じ」) 

「箱に{きちんと/ちゃんと}納まる」なら同義。しかし「箱の中は{きちんと/ちゃんと}整頓されていた」だと、「きちんと」のほうがほんの少し自然だろう。 

3)「ちゃんと」は「確かであるさま」の意味で用いられる 

 これが微妙でなんとも言えない。「ちゃんとやっておいた」は「きちんと」でもOKじゃないかな。 

 

 個人的には、1)はそのとおりだと思うが、2)3)の違いは無視してもいいと思う。そのかわりもうひとつ加えたい。 

4)「ちゃんと」のほうが「しっかり(と)」に近いニュアンスがある(ほんの少しね) 

 

 どういうことか考えるのに、「しっかり」をひく。 

■Web辞書(『大辞泉』から) 

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%E3%81%97%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%82%8A&stype=0&dtype=0 

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しっかり【▽確り/×聢り】 

[副](スル) 

 

1 物事の基礎や構成が堅固で安定しているさま。 

①かたく強いさま。「ロープを―(と)結ぶ」 

②確かでゆるがないさま。「土台の―(と)した建物」 

2 考えや人柄などが堅実で信用できるさま。「―(と)した意見の持ち主」「論旨の―(と)した論文」 

3 気持ちを引き締めて確実にするさま。「―(と)勉強する」「上級生らしく―しなさい」 

4 身心が健全であるさま。また、意識がはっきりしているさま。「―(と)した足どり」「高齢でも頭は―している」 

5 十分であるさま。たくさん。皮肉をこめていうこともある。「今のうちに―(と)食べておく」「金を―ためこんでいる」 

6 相場が上昇傾向にあるさま。 

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 ちなみに「しっかり」と「しっかりと」はほぼ同じもの。「と」はあってもなくても意味はかわらない。「しっかり者」のように「と」が入りにくいことがたまーにあるけど。ただし、『大辞泉』の例文で「(と)」が抜けているものが2つあるのは意味不明。ほかと同じように「しっかり(と)」でいいだろう。 

【日本語アレコレ──「自然に」と「自然と」の違い】(2009年04月03日) 

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1127505631&owner_id=5019671 

 

 ここまで出た例文で、互換性を考えてみる。「きちんと」と「ちゃんと」は同様なので、「ちゃんと」は省略する。 

  1) {きちんと/しっかり(と)}と並ぶ 

  2) 帽子を{きちんと/しっかり(と)}とかぶる 

  3) {きちんと/しっかり(と)}とした服装 

  4) {きちんと/しっかり(と)}座る 

  5) ネクタイを{きちんと/しっかり(と)}締める 

  6) 先生の前では{きちんと/しっかり(と)}していなさい 

  7) ロープを{きちんと/しっかり(と)}結ぶ 

  8) 土台の{きちんと/しっかり(と)}した建物 

  9) {きちんと/しっかり(と)}した意見の持ち主 

  10) 論旨の{きちんと/しっかり(と)}した論文 

  11) {きちんと/しっかり(と)}勉強する 

  12) 上級生らしく{きちんと/しっかり(と)}しなさい 

  13) {きちんと/しっかり(と)}した足どり 

  14) 高齢でも頭は{きちんと/しっかり(と)}している 

  15) 今のうちに{きちんと/しっかり(と)}食べておく 

  16) 金を{きちんと/しっかり(と)}ためこんでいる 

 

 こうして例文を並べて見比べると、微妙な違いが浮かんでくる。 

 注目したいのは、まず1)。 

「しっかり(と)」は少しヘンだろう。「きちんと」は「整然」のイメージだが、「しっかり(と)」だと「脱落せずに」「忘れずに」くらいのイメージになる。3)6)になると、「しっかり(と)」はかなりヘン。 

 次に注目したいのは、7)。 

 緩まないようにがっちり結んでいるのはどちらだろう。 

 13)~16)は「きちんと」だと少しヘンな感じになる。 

 15)に関しては、ヘンではないがニュアンスがかわる。もっとわかりやすい例をあげよう。 

  17) 毎日朝ご飯を{きちんと/しっかり(と)}食べる 

「きちんと」だと、規則正しく毎朝食べていれば、内容は問わないイメージ。「しっかり(と)」だと、充実した内容を「がっちり(ガッツリ)食べる」。 

 

  18)このシャツは縫製が{きちんと/しっかり(と)}している。 

「きちんと」だと縫い目が揃ってきれい。「しっかり(と)」だと「丈夫」。 

 これが「縫製」ではなく「生地」だともっとわかりやすい。「きちんとした生地」は意味がわかりにくい。おかしな素材を使っていない安物ではないくらいのイメージだろうか。一方「しっかり(と)した生地」なら「丈夫」。 

 

 以上でうかがえるように、「しっかり(と)」は「きちんと」とほぼ同じ意味のほかに、「がっちり」「丈夫」などの意味がある。ただし、建物の土台などは「きちんと」していれば必然的に「丈夫」なので、違いがわかりにくい。 

  

 以下はほぼヨタ話。 

 話し言葉的か否かという判断基準で考えると、「きちんと」もかなり話し言葉的。「しっかり(と)」も「きちんと」ほどではないが話し言葉的だろう。オノマトペに近いイメージのある副詞は、どうしても話し言葉的になる気がする。たとえば、「鍵を(  )締める」という場合、「しっかり(と)」よりも「間違いなく」のほうが書き言葉的になる。もしかすると「確実に」のほうがもう少し書き言葉的かもしれないが、微差。「ぬかりなく」ならもっと書き言葉的? 

 こういうことを考えていくとMAX敬語のようになるのでパス。そういえば、『ジャポニカロゴス』でこういう訳のわからない副詞の程度の比較をいろいろやってたな(笑)。 

  話し言葉的←                     →書き言葉的 

  ちゃんと<きちんと<しっかり(と)<間違いなく/確実に<ぬかりなく 

 

「整然」のニュアンスのある「きちんと」と、「丈夫」のニュアンスのある「しっかり(と)」を比べると、「きちんと」が外見で「しっかり(と)」が内面と言えなくもない。 

 親が子供を叱る場合、「{きちんと/しっかり(と)}しなさい」ならどちらでも同じかもしれない。 

 しかし「もっと{きちんと/しっかり(と)}した服装をしなさい」になるとちょっと違いが出る。「しっかり(と)」はかなりヘン。 

「きちんとした人」は、「外見」「礼儀作法」のニュアンスで、「しっかりとした人」のほうが頼れるニュアンス。だから「しっかり者」と言うんだろう。 

 

 最初のほうに書いた〈4)「ちゃんと」のほうが「しっかり」に近いニュアンスがある(ほんの少しね)〉に関する補足。これは直前にあった〈3)「ちゃんと」は「確かであるさま」の意味で用いられる〉と同じこと、と言えなくはない。 

 下記の例文で考える。「きちんと」はヘンだけど、「ちゃんと」はおかしくない。 

  足腰はまだ{きちんと/ちゃんと/しっかり(と)}している。 

 

 さらにその前に書いた「{きちんと/ちゃんと}した答え」が「しっかり(と)」だと△になる理由……まったく見当がつかないorz。 

 

 ちなみに、きちんと言えば台所だけど、ちゃんと言えば大五郎、石狩地方の中心は札幌です。 

 

 

「きちんと」「ちゃんと」「しっかり(と)」の違い〈2〉 

 

mixi日記2011年08月05日から 

 

「きちんと」と「ちゃんと」の微妙な違いを説明する方法を考えてみる。 

〈1〉でふれたわずかな違いを転載する。 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 

 こんな感じだと思う。意味も用法もほとんど同じ。微妙な違いを箇条書きする。 

1)「ちゃんと」のほうが話し言葉的 

2)「きちんと」のほうが整っている感じが強い(あくまでも「感じ」) 

「箱に{きちんと/ちゃんと}納まる」なら同義。しかし「箱の中は{きちんと/ちゃんと}整頓されていた」だと、「きちんと」のほうがほんの少し自然だろう。 

3)「ちゃんと」は「確かであるさま」の意味で用いられる 

 これが微妙でなんとも言えない。「ちゃんとやっておいた」は「きちんと」でもOKじゃないかな。 

 

 個人的には、1)はそのとおりだと思うが、2)3)の違いは無視してもいいと思う。そのかわりもうひとつ加えたい。 

4)「ちゃんと」のほうが「しっかり(と)」に近いニュアンスがある(ほんの少しね) 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 

 最初のほうに書いた〈4)「ちゃんと」のほうが「しっかり」に近いニュアンスがある(ほんの少しね)〉に関する補足。これは直前にあった〈3)「ちゃんと」は「確かであるさま」の意味で用いられる〉と同じこと、と言えなくはない。 

 下記の例文で考える。「きちんと」はヘンだけど、「ちゃんと」はおかしくない。 

  足腰はまだ{きちんと/ちゃんと/しっかり(と)}している。 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 

 

 トピに入った例文で考えてみる(申し訳ないが、表記は当方流に書きかえる)。 

 

A(子供が)「ボク、{ちゃんと/きちんと}できるもん」 

「きちんと」ではおかしいらしい。たしかにちょっとヘンな気もするが、「きちんと」が間違いと言えるのだろうか。あえて言うなら、子供が「ちゃんと」と言ったり、子供に対して「ちゃんと」と言ったりすることが多いのは、幼児語の一種って気がする。↑の1)と関係があるのかもしれない。 

 

B「{ちゃんと/きちんと}片づけておきなさい}」 

 2)の「整頓」の仲間だろう。 

 

C「3歳だけど、{ちゃんと/きちんと}自転車がこげる」 

 この例文は適切なんだろうか。「自転車がこげる」と「自転車に乗れる」はどう違うのだろう? 「自転車に乗れる」に{ちゃんと/きちんと}がつくのが自然か否か当方には判断不能。これが下記くらいなら自然だろう。 

C-2「3歳だけど、{ちゃんと/きちんと}お箸が使える」 

 これだと{ちゃんと/きちんと}がどう違うのか不明。 

 

D「今晩は{ちゃんと/きちんと}早く帰ってきなさいよ」 

 こんなことを言う妻がいたら別れたほうがいい。(←オイ!) 

 子供に言うのなら、「ちゃんと」だろう。Aと同様。 

 

E-1(ふざけている学生に)「ちゃんと折りなさい!」 

E-2(力を入れる必要のあるところで「しっかり折ってください」 

E-3(端を揃えなければいけないところで)「きちんと折りましょう」 

 E-1は学生(いままでは子供)を叱ってるんだからしょうがないけど、E-2とE-3の文末の形が違うのはなぜなんだろう。比較するなら、できるだけ同じ形にするべきでは。 

 E-1はAと同様。 

 E-2。なんでいきなり「しっかり(と)」の話が……。〈1〉で書いた「がっちり」の仲間か? 

 E-3。2)の「整頓」の仲間だろう。「ちゃんと」でもOKだと思う。 

 E-2とE-3はどちらも「きっちり」にできる気がする。そうなると、「きちんと」と「しっかり(と)」にも共通点があるのだろうか……。 

 

 

「きちんと」「ちゃんと」「しっかり(と)」の違い〈3〉 

 

mixi日記2011年08月24日から 

 

 すでに自分が思いつくことは書いた気がするが、トピに入ったコメントが理解できずに悩んでいる。 

 

 コメント「7」 

>「きちんと」は結果に焦点をあてていますよね。それに対して, 

>「しっかり」は動作に焦点をあてていますよね。 

「きちんと」と「しっかり」のニュアンスの違いは〈1〉で書いた。この違いなんとなくわかる気がする。「結果」とか「動作」とか言われるとかえってわからないくなる。 

  

 コメント「9」 

>「ちゃんと」は、動作・行為に対する言葉。 

>「きちんと」は、出来上がった状態に対する言葉。 

 比較するなら、「ちゃんと」と「きちんと」だろう。この微妙な違いに関しては〈2〉で書いた。 

「動作・行為」と「動作」はほぼ同じものだろう。だが、「結果」と「出来上がった状態」がどう違うのかはわからない。 

「動作・行為に対する言葉」とは? それは「きちんと」を使いにくいのだろうか。なぜ? 

「出来上がった状態に対する言葉」とは? それは「ちゃんと」を使いにくいのだろうか。なぜ? 

 コメント「7」の例もそうだが、こういう微妙な話は具体的に例文をあげてもらわないと何がなんだかわからない。 

 

 コメント「10」 

>「その木にちゃんと実がなっている」 

>と言えますよね。このように動作主・行為者が存在しない自然現象に関しても「ちゃんと」が使えますから、「動作・行為」というと狭く限定しすぎではないでしょうか。 

 ウーン。 

 話がどんどんむずかしくなっていく。 

「動作主・行為者が存在しない自然現象」ってどういうことなんだろう。「実がなる」「風が吹く」「台風が来る」あたりは、「動作主・行為者」は明確なのでは。擬人的な表現の自然現象の場合は「動作主・行為者」は不明確ということになるのだろうか? 「朝になる」あたりだと微妙だけど。 

 さらに言うと、補助動詞の「いる」をからめると、たいていの「動作・行為」は「状態」を表わす形にできる気がする。下記くらいのほうが、趣旨が明確になる気がする。これは動作・行為だろう。 

 この「ちゃんと」は「きちんと」「しっかり(と)」にできないのだろうか。当方の感覚だとどれも使えるし、大差はない。 

  その木にはちゃんと毎年実がなる。 

 

 そうなると下記も成り立つ。「しっかり(と)」はちょっと異和感があるが、ホントに微妙な差にしか思えない。 

  【結果?】 

  その木には今年も{ちゃんと/きちんと/しっかり(と)}実がなった。 

  【状態?】 

  その木には今年も{ちゃんと/きちんと/しっかり(と)}実がなっている。

 

 


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