よくスウェーデンでは、自分の目標、お手本となる人をFörebildというけれど、私にとってのFörebildは、カナダの作家モンゴメリである。

モンゴメリというと、「赤毛のアン」シリーズであまりにも有名である。私も彼女の一連の作品を、小学校から中学校にかけて全冊読んだ。

他の多くの読者同様、彼女の作品に魅せられた私だが、後に


『赤毛のアン』を書きたくなかったモンゴメリ (単行本)

梶原 由佳著

を読んでから、人としてのモンゴメリにも強く共感した。

著者の梶原さんは、カナダ在住のモンゴメリ研究家である。

モンゴメリは小学校教員として働いた後、田舎の牧師と晩婚。
二人の息子に恵まれる。牧師夫人としての仕事の傍ら、子育てにも追われ、そんな生きるための際限なく湧いてくる雑用を片付ける一方、創作にたいする情熱も決して捨てることがなかった。

今の自分に比べて、それがすごいなあ、と思うのだ。
まあ、「赤毛のアン」の作者と自分を比べるのはあまりにおこがましい。だが、生きるための仕事最優先で、創作は傍らに置きがちな自分にムチを与えてくれるのが彼女である。

実はモンゴメリの夫である牧師は、結婚後しばらくして鬱病を患うようになったのだそうだ。
当時の環境と彼の地位を考えると、それは大変なスキャンダルであり、モンゴメリはその事実を決して外部に知られないよう、細心の注意を払って暮らした。
それはどれだけ骨の折れることだっただろうと、考えただけで溜息が出る。

当時の女性文化人には、因習にとらわれることなる破天荒に生きた女も多かったと思う。その中で、伝統的な家庭を耐えて守るという根気のいる仕事を続けながら、かつ創作活動で大きく花開いたモンゴメリの諦めない心は、私のお手本なのである。



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