【朝コラ】単なる価値観の変化ではすまない専業主婦志向の高まり | (仮)アホを自覚し努力を続ける!

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単なる価値観の変化ではすまない専業主婦志向の高まり


 国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」(いわゆる専業主婦)という考え方に賛意を示す割合は、2003年の41.1%から、2008年には45.0%に上昇しています。また、「子供が3歳くらいまでは、母親は育児に専念」という考えに賛意を示す割合も、2008年(85.9%)は、2003年(82.9%)から上昇しています。

 興味深いのは、賛意を示す割合を年代別にみると、2つの質問とも、29歳以下の方が、30歳代よりも賛意を示す割合が高いことです。「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」に対する賛意の割合は、29歳以下が47.9%に対して30歳代は41.7%、「子供が3歳くらいまでは、母親は育児に専念」の賛意の割合は、29歳以下が81.7%に対して30歳代は78.4%、となっています。

 今回の結果を、女性の価値観の変化のため、と報道するところもあるようです。しかし、「全国家庭動向調査」によると、妻がフルタイムで働いていても、夫が全く家事をしない割合が16.0%(2008年)もありますので、働く女性の負担が大きいのは事実といえます。有識者の指摘の中に、「女性が正社員として長時間労働で疲弊するよりも、専業主婦として子育てに専念した方がラクと考えるのは当然」といったものがあるように、今回の結果は、価値観の変化というよりも、女性が負担を回避する姿勢が強まったため、と考えた方が自然な気がします。

 女性が専業主婦を選ぶか否かは、ライフスタイルの選択の問題とはいえ、今回の結果は、日本の潜在的な経済成長を考える上で好ましいものといえません。日本は少子高齢化の影響もあり、年代が若くなるほど人口が少なくなります。つまり、働く人の割合が一定だとしても、時を経るごとに、日本の労働市場に参入する女性の数は減少することになります。さらに若い女性のうち専業主婦になる割合が高くなれば(労働市場に参入する若い女性の割合が低下することは)、労働市場に参入する女性の数は、より大きく減少することになります。

 専業主婦が担当する家事や育児の価値を否定する意図はありませんが、労働市場に参入する女性の数が減少することで経済成長が停滞すれば、経済的な生活水準の向上も停滞することになります。家庭の幸せは、経済的な生活水準だけで決まるものではありませんが、経済的な生活水準が大きな役目を果たすことは否定できません。若い女性の働く意欲を推し量ることは、日本の経済成長の行方を考えるだけでなく、日本の家庭の幸せを考える上でも、今後さらに重要なものになると思われます。