ドナルド=キーンに負けていられるか | Kura-Kura Pagong

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"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 昨年(2011年)のことである。日本文学者のドナルド=キーンを取り上げたドキュメンタリーをTBSかどこかのテレビ局でやっていたので観た。3.11震災を機に日本に住み続けることを決意した彼が日本国籍取得のための手続きを始めた頃だ。

 番組の中で、岩手県は平泉町の中尊寺本堂でキーンが講演した場面があった。質疑応答の際、
「日本人はどうあるべきだとお考えですか。」
という質問があったのだが、彼はその質問に答える代わりにこう言った。
「ボケずにいられるならば、私は死ぬまで日本のことを勉強し続けたい。
時代、ジャンルを問わず日本文学に深く通じた人の言葉である。この人は文化全般に畏敬し、探究心を持つ人なのだ($)。テレビを観ながら私は
「おおっ!」
と声をあげた。

 そして私は思う。私には彼のように古典を翻訳したり、日本文学に関して研究書を執筆したりする力はない。しかし、文化に対する探究心ならば己の意思次第で持つことができる。
「ドナルド=キーンさんはアメリカ出身なのに日本を愛していて、素晴らしい!」
なんてことを私は思わない。
「ドナルド=キーンに負けていられるか!」
である。

$ キーンの関心は日本文化にとどまらない。例えば、彼は日本のオペラ雑誌で連載記事を書くほどのオペラ通、という側面も持つ。