芸能契約における活動禁止条項(競業避止義務条項)の有効性について | 弁護士 河西邦剛のブログ

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公正取引委員会の報告書が公表されたからか最近よく相談を受けるのが芸能契約書の活動禁止条項です

 

 

芸能プロダクションとタレントとの契約書にはこのような規定があったりします

 

 

『契約終了後2年間は他の芸能事務所と契約することができず、また、芸能事務所に所属しないとしても自ら芸能活動を提供することもできない』

 

 

このような規定を活動禁止条項(競業避止義務条項)といいます。そして最近よく相談をお受けするのが『活動禁止条項が有効なのですか』という質問です

 

 

今日はこの芸能活動禁止条項について少し書いてみたいと思います

 

 

さて、あらゆる契約書において通じることですが

『紙(契約書)に書いてあるから有効』

ということはありえません

 

 

仮に契約書に明記されていたとしても、その内容が

・法律(独禁法、消費者契約法、特商法等)に違反する場合

・過去の裁判例の判断に反する場合

はその違反する部分が無効となります。

 

 

 

 

■裁判例との関係

 

 

 東京地方裁判所判決(平成18年12月25日)

『芸能人の芸能活動を契約解消後,2年間もの長期にわたって禁止することは,実質的に芸能活動の途を閉ざすに等しく,憲法22条の趣旨に照らし,契約としての拘束力を有しない』

 

 

このように過去の裁判例では活動禁止条項について無効と明言した実例があります。

ただ逆に、活動禁止条項が有効と判断された裁判例は今日に至るまで実は1件もありません

 

 

なので過去の裁判例をみたときに、芸能活動禁止条項が有効と判断される余地はないといえるでしょう

 

 

■独禁法との関係

 

 

公正取引委員会の報告書にはこのようなことが読み取れます。

 

 

『優越的地位の濫用の観点からは、優越的地位にある芸能プロダクションが課す競業避止義務(芸能活動禁止条項)が不当に不利益を課す場合には独占禁止法上問題になる(人材と競争政策に関する検討会 報告書 公正取引委員会 参照)』

 

 

法律的な観点からも活動禁止条項は独占禁止法違反で無効になるといえるでしょう

 

 

そうすると、法的にも裁判例をみても、結局、芸能活動禁止条項が有効になる余地はないというのが結論になります

 

 

 

■エンタメ業界における競業避止義務条項

 

 

エンタメ業界においても、例えばCM契約の際に広告代理店と芸能事務所が結ぶ広告出演契約書には『競業他社の商品のCMには出演しない』という記載があります

 

 

確かに、トヨタ自動車のCMに出演しているタレントが日産自動車のCMにも出ることは契約違反になると考えられます

 

 

もっともこれは一切CM出演できなくなるという縛りではなく、あくまで競業商品の出演制限という極めて限定的な範囲での縛りになるからこそ有効といえるわけです

 

 

他方、芸能契約において『およそタレントが数年間芸能活動できなくなる、他の芸能プロダクションと契約できなくなる』というタレントの競業避止義務条項が有効になる余地は皆無といっていいでしょう

 

 

 

 

普段あまり写真を撮らないため写真がいつも使いまわしですみません汗汗