【連載24】国立ランブリング「ファニーな十月を」小山 伸二 | 国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

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【連載 24】 国立ランブリング

国立ランブリング

ファニーな十月を     小山伸二



手のひらの中の世界を
誰もが眺めながら大学通りを歩いている
リアル以外のすべてが
手のひらのなかで青く育っている
ブレンドされたニュースと大掛かりな噂話
終わらないゲーム
芸能人のゴシップ
みんなの食卓
拡散していく井戸端会議
軽薄な悲劇と喜劇が序列をなくして
この十月に育っていく
大袈裟なことを書いて
からかわれてきた詩人たちも
手のひらの中なら

世界を引っ張り出してきてもいいかもね

皺だらけの地図をひろげて
赤い線をひくように
大海原を越えてやってきたぼくたちは
珈琲を飲むための途方もない大冒険を経験した
経済と投資と拡大と計画と悲劇を
珈琲という名前にパッケージした数百年が
機械仕掛けの黒い飲料になる
異国の幸福も不幸もブレンドされたような味わい
ほんとうは苦いだけの人生に
希望のように雲が映り込んでいる
カップを高く掲げよう

いくつもの靴とシャツと鞄をつぶしては
途方もない距離を移動して来た
移動と定住
酩酊と覚醒
集合と離散
闘争と和合

最初の大陸からはじめていくつもの大陸に渡っていく
森に消えた一群
海岸線を南に下った一群
海峡を渡って太陽の昇る方角に向かった一群も
いずれ
大海原を囲む大きな環になる
遺伝子だけが知っている生命の時間
ともかく何十万回もの十月がこの地上にやってきて
この町に定住を始めたぼくたち


ケヤキの高い梢の上で鳥になって
思いっきり唄ってみたいね
女子高生たちがはしゃいでいる
靴ひもを結び直して
駆け出したランドセルのギャングたちを避けながら
お喋りに夢中なカップルが
こっそり左の手のひらの世界を覗き込んでいる
死んだひとも生きているひとも
やあ、と手をあげてお互い挨拶をしているみたい
誰もがスキップをしたくなる
十月の雨上がりの大学通り


鳥たちが啄んだ実が伝説になって
暗い夜の紅海を越えた
長い物語を書き上げた午後に
新聞を広げる
大学通りのカフェで珈琲を一杯
失われた幸福のアラビアの香りに目を凝らそう
十月が育っていく
見捨てられた裏路地とか
花火のような小花が散った地面で



」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
国立ランブリング「創作ノオト」
おかげさまで、この連載も二周年になりました。
国立を舞台にして二年間、なんとか詩をつないでこれました。
これからも、国立から詩を発信していきたいと、心を新たに思っています。
どうぞ、みなさん、これからもよろしくお願いします。


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国立ランブリング

【プロフィール】
小山伸二 (おやま・しんじ)
国立在住。詩人。福間塾に参加。
最新詩集『きみの砦から世界は』(思潮社・刊)
『きみの砦から世界は』(思潮社)
作品集


クラウドナイン cloud nine

小山伸二と清水美穂子による

詩と写真のコラボユニット。
「クラウドナイン」公式FBページ







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