【連載】国立本まわり〈2〉山口瞳『行きつけの店』(新潮文庫)・前編 | 国立情報WEBマガジン くにたちハッピースポット

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山口瞳『行きつけの店』 【連載】くにたち本まわり②

山口瞳『行きつけの店』(新潮文庫) ・前編  十松弘樹


国立の本と町を巡る雑談。

山口瞳先生(1926~1995)の話を続けさせていただこう。


山口氏は「行きつけの店」と粋な付き合いをすることでも知られていた。

決して威張らず、かといって馴れ合わず、

絶妙の距離感と礼節を持ってお店と付き合う人だったという。

山口瞳『行きつけの店』
『行きつけの店』(TBSブリタニカ)


その集大成とも言えるのが『行きつけの店』。

亡くなる2年前に出版された。

旅好きでもあった山口氏らしく

日本中の行きつけの店が紹介されている。


国立からも、前回紹介した

『居酒屋兆治』のモデルである今は無い「文蔵」と

国立きっての老舗喫茶店として健在の

ロージナ茶房」が紹介されている。

併せて「繁寿司」「まっちゃん」「うなちゃん」なども。


山口瞳『行きつけの店』
国立きっての老舗喫茶店「ロージナ茶房」。
山口氏の水彩画「ボラボラ島」を展示している。


山口瞳『行きつけの店』
家族ぐるみの付き合いだった「繁寿司」。
全国から訪れる山口ファンの「聖地」ともなっている。


山口瞳『行きつけの店』
ガード際の「うなちゃん」。「曳家」でも話題になった。



これを読むと味とともに店主の人柄に惚れて

「行きつけ」としていたことがよくわかる。

「食通」であるとともに「人通」であった山口氏らしい本だ。


なんとこの本、TV化もされた。

ドキュメンタリーながらドラマ仕立ての部分もあり

主演は山口氏本人。

もちろん演技をするわけではなくただ町に店に佇み

「“小説家”は○○と考えた・・・・」

みたいなナレーションが入る。

語りは故・古今亭志ん朝師。

エンディングは「文蔵」で楽しそうに語り合う山口夫妻。

そのうしろで賑やかに談笑する酔客の中に

ノンクレジットで嵐山光三郎氏。なんて贅沢。

もう一度観たいと思うが、

残念ながらパッケージソフト化はされていない。はず。


この本に紹介された

「文蔵」「ロージナ」「繁寿司」「まっちゃん」「うなちゃん」の他にも

山口氏の「行きつけの店」は国立に数多く残る。


ライフワークエッセイ「男性自身シリース」等に

たびたび採りあげられた

喫茶・書簡集」「そば芳」「うなぎの押田」等も健在。

山口氏の息吹を今に伝えている。

山口瞳『行きつけの店』
富士見通りの「書簡集」。カレーも人気。

山口瞳『行きつけの店』
ブランコ通りの「そば芳」。


山口瞳『行きつけの店』
山口邸からもっとも至近の“行きつけ”「うなぎ押田」。
山口先生命名の個室の「寒庵(さむあん)」が人気。
「寒庵(さむあん)」はもちろん「someone」。
デビュー作「江分利満」=「everyman」と対語を成す洒落だ。



後編につづく



≪バックナンバー≫

2014.5.25 くにたち本まわり① 『居酒屋兆治』を歩く



【著者紹介】

十松弘樹==とまつひろき。
JPIC認定読書アドバイザー。
「書評のメルマガ」書評委員。
出版取次大手トーハンに勤続すること29年。
「新刊ニュース」「月刊書店経営」編集担当、
「人文図書目録」「歴史書目録」「国語国文学図書目録」等
各目録刊行会事務局担当などを経て独立。

国立駅前で「ギャラリービブリオ
http://www.gbiblio.jp/ を経営。
学校法人小百合学園(小百合幼稚園)評議員。
国立駅前在住三代目。
今年11年目、毎日更新のブログ

「蕃茄庵日録」
http://d.hatena.ne.jp/banka-an/
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