『女は顔じゃない、心よ。』
幼い頃の私の手を引きながら、母が言う。
『カナ、ごめんね。可愛い服を着せてあげる事が出来なくて。お母さんが悪いのね。』
カナは知っていた。母がここ数年下着も服も買っていない事を。
カナはぎゅっと母の手を握りしめて、しっかり前を向いて言った。
『大丈夫、お母さん。私綺麗になるよ。』
カナは眩しい光を浴びて、目を背けた。
『では、これから麻酔しますけど、大丈夫ですか。』
『はい。』
その鋭い針は、鈍い圧迫と共に、手の先までしびれる痛みをカナに与えた。
『では、麻酔が効いてきたか確認します。冷たいですか?』
医師は何か白いものを持って、カナの目の周りを拭いているようだった。
『いえ、何も感じません。』
『では、始めてもいいですね?』
『はい。この顔に未練はありません。』
事故から。
まだ車のハンドルは握るのも怖く。
普段の生活をブログに書けるほど正直回復してないけど。
なぜか、
1年ほど前に書いていた『反転』の続きが。
というか新たな展開で頭に浮かんだので書いてみました。
今まで自分が考えていた展開では無くなっていて。
主人公達が勝手に演じている感じです。
つながりが分からない方は。
ブログのジャンル『ものがたり』でみると多分前のお話が出てきます。