そういえば。
今年も初詣に行っていなかった。
 
 
まあ、なんだってなるようになるんだからさ。
 
というか。
 
これだけ天変地異、自然災害の多い国にいればそんな気にもなる。
 
 
 
あの大震災後は、とくにそんな感じで。
神も仏もないような有り様に、無常感ばかり。
 
 
 
ところが。
 
今年の新年早々、新聞の折り込みに入ってきたらしい一枚の紙。
それを母親が持ち出した。
 
 
近くにある由緒あるお寺の「今年の九星占い」。
 
つまり、今年の星回りってやつ。
 
 
 
それによると。
 
一白水星の私は「八方ふさがり」という年らしい。
 
ふうううん。
 
 
 
ためしに、事務所の人間たちを見てみると。
 
代表ヒラグリと、松本さんが同じで、なにやらひどくヤバい年回りのようだ。
 
 
暗剣殺なんていう時代劇の刺客のような名前までついている。
 
 
 
うひゃあ、こりゃ、ヤバい。
 
 
 
てんで。
 
京都にいる松本さんはともかく、とりあえず、ヒラグリを「厄払い」に誘う。
 
このままだとロクなことにならない気がしたからだけど。
 
だいたいが、こういうことに疎い私たち、なんだか訳わからん感じで、お寺の門をくぐる。
 
 
入ると同時に、ばさばさと鳥が。
 
見ると、緑のインコ。
 
 
家庭から逃げたインコが、こんなとこで家族を増やして、木にとまってる。
 
それを見たら、なんだか楽しくてうれしくて、えへらえへらしてしまう。
 
 
でも。えへらえへらしてる場合じゃないので本堂へ。
 
まあ、寒い。
すごく寒い。
 
 
こんな寒さでも、心頭滅却された若いお坊さんたちは、みんなあの薄い袈裟だけだ。
 
すごいなあ。
 
 
感心しつつ申込書に指名を書き込み、提出し、年回りを確認される。
 
 
「コレコレこうですから、コレコレこういう札がよいでしょう」
 
お坊さんの説明に、ただ頷く。
 
 
もうこれだけで「助かった」気になっている。
 
ああ、良かった、ありがたい。
 
 
 
ところが。最後。
 
 
「で。お札は郵送が良いですか、取りにこられますか」
 
「え?」
 
 
 
 
「2月3日からが新しい年回りですから、そのあとならいつでも」
 
「ええ?今じゃなくて?」
 
 
その場でお祓いだかなんだかしてもらって、ありがたくお札を頂戴して帰る、そのつもりだった私たちは、しばし呆然。
 
 
 
 
 
そういうこと?
 
 
 
 
節分というのは、ただの豆まきの日ではなかった。
 
その日こそ、新しい春、新しい年が来る日なのだった。
 
(その日までは、まだ前の星回りってことだ)
 
ああ、こんなことも知らないで・・・。
 
 
 
 
じゃあ、また来ます。
 
と、お金だけお納めして、とぼとぼ帰る。
 
 
 
 
「クミちゃん、なんにも知らないんだね」
と、忙しい中誘われたヒラグリが言う。
 
自分だって知らないだろうが。
 
 
 
緑のインコ一家は、もう寝支度に入っているようだ。
 
 
ああ、寒い。
 
 
ああ、寒い。
 
 
背を丸めて引き揚げた。
 
 
 
ああ、もっといろんなこと知らんとダメだなあ。
 
こんな年になって。
 
なんともナサケナイなあ。