文月二十九日
此度も清正一代記を書する。
此の夏、雪駄を新調。
茶と黒で織り成す、虎柄の様な模様に惹かれ買うた次第。
雪駄は我等と同じく戦国の世を駆けた千利休殿が、水を打った露地で履く為や、下駄では積雪時に歯の間に雪が詰まるため、考案したとも言われており、諸説御座る。
茶人や風流人に多く見られたものじゃな。
儂は後金が鳴る音が好きで、雪駄を選ぶ際に吟味しておる。
江戸時代には江戸町奉行所の同心が必ずばら緒の雪駄を履いており、「雪駄ちゃらちゃら」(後金の鳴る音)は彼らの象徴であったのだ。
して、儂が更に惹かれてしもたんは、このい草仕様っ!
何を隠そう、我が国は日本における主な、い草の産地であり、国産畳表の八割から九割を誇り、また歴史的文化財の再生にも使用される高級品を出荷しておる。
無論、熊本城本丸御殿の畳は我が国で作られた高級品じゃ。
俳句でもい草は夏の季語、い草のかほりを感じつつ、後金の鳴る音を聞き、夏を大いに楽しんでやろう。
(注:鍬形の構え)
皆の夏ならではの愉しみ方はどんなもの?
披見、大儀であった。
履
道
応
乾
◎加藤肥後守清正