Ray Brown『This Is Ray Brown』 | kumac's Jazz

Ray Brown『This Is Ray Brown』

 1958年録音。タイトルが、モロ出しです。『これぞ!レイ・ブラウン』という、決定版です。レイ・ブラウンのベースを引き立てようとする意味でしょうか、マルチリード奏者のジェローム・リチャードソンは、全篇、高音域を主戦場とするフルートを演奏しています。そして、1曲目「Bric Brac」では、ピアノのオスカー・ピーターソンがオルガンで曲にアクセントを付けています。つまり、ベースがリズムを刻むことに徹しながら、自己主張を鮮明にすることを可能としているということだろ思います。
 2曲目「Upstairs Blues」は、レイ・ブラウンのソロベースによるテーマの提示から始まるブルース曲。その揺りかごのような眠りを誘うリズムの中を、フルート、ベースのソロが続く、どこかチャーリー・ミンガスを思わせるレイ・ブラウンの演奏は、似ているということではなく、渾身の気持ちを込めてベースをかき鳴らすという行為自体が、とても激しさを持っているということではないかと思わせます。楽器として、とても地味ですが、それが一旦、心に響いてくると、激しく揺さぶられる。アフリカン・アメリカンの悲哀をここでは強く感じます。そういう意味で、ミンガスと同じ意識をベースという楽器に持っていたのではないでしょうか。最終的な音楽としての表現方法は違っていても、素は同じだと思わせます。
 3曲目「Indiana (Back Hpme Again In)は、テーマをレイ・ブラウンが弾く、テーマを引くと行っても主旋律を高音域で奏でるということはせずに、あくまでべーシングスタイルを守ってています。つまり、低音域をカバーする本来の役目を果たしつつ、テーマを受け持つということで、変に自分のスタイルを曲げてまで自己主張をしようとしない姿勢に清さを感じます。アップテンポの曲で、後半のオスカー・ピーターソンの早弾きに対するレイ・ブラウンのウォーキングベースが見事です。
 5曲目「Tak The 'A' Train」で、初めて伴奏に徹していたハーブ・エリスがソロをとります。泣きの入るブルージーなギターが面白いです。
 6曲目「Cool Walk」は、この作品の中で白眉の演奏です。レイ・ブラウンのフォービートのウォーキングベースでテーマが始まり、ハーブ・エリスがリズムギターを弾き鳴らし、オスカー・ピーターソンがオルガンの様々な音色でおもしろおかしくバッキングをします。その中を、レイ・ブラウンがソロをとってゆきます。それに呼応するオスカー・ピーターソン。ハーブ・エリスがソロをとるときには、レイ・ブラウンはウォーキングベースに徹します。その表情あるリズムの受け渡しが見事です。というか、楽しいです。
 レイ・ブラウンとは、けっして饒舌ではなく、出しゃばらす、低音域を黙々と動き回るベース奏者でることを強く自己主張した作品です。

ディス・イズ・レイ・ブラウン/ポリドール

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