Pilc Moutin Hoenig『Threedom』 | kumac's Jazz

Pilc Moutin Hoenig『Threedom』

 2011年5月4日、5日にニューヨークのスタジオで録音された作品です。タイトル『Threedom』 は造語ですかね。3人のエゾウチヤシって、どういう意味でしょうか?メンバーは、Jean-Michel Pilic  の p 、Francois Moutin の b、Ari Hoenig の dsです。ユニットの名前は、3人の名前をただ並べただけですね。1曲目マイルスの「Nardis」は、静かで深遠なテーマ演奏から入ります。緊張感ありますね。三者が対等に演奏しています。ピアノは低音域を使い、奥底に沈み込むような雰囲気を醸し出してゆきます。カオスと言ってもいいかもしれません。そして、フリージャズの手法に入ってゆきます。テーマを解体してゆき、それぞれが好きなパセージで音を出して、三者で絡み合います。ここまで来ると、何をやっても許される領域です。破壊神が降りてきています。でも、「Nardis」のキラリと光るテーマの破片は、艶光りして所所に現れます。格好いいです。kumac は、久しぶりにフリージャズを聴いた気分になりました。
 ジャズなどの有名な曲を見事に解体して、そのテーマの欠片を拾い集めて、音を構築してゆく音様は、気持ちよいです。例えば、セロニアス・モンクの「Think Of One」、ジョージ・ガーシュインの「A Foggy Day 」、コルトレーンの「Giant Ateps」、デューク・エリントン!の「I'm Beginning To See The Light」、チャーリー・パーカーの「Confirmation」、チャーリー・チャップリン!の「Smile」などです。これを、フリージャズの調理法で食材の味を生かしながら見事に料理します。全、18曲のうちオリジナルは9曲です、半々ですね。デフォルメされ解体されてゆき、器に盛られてゆく、曲の出来具合を、その調理の課程を聴けるのはとても面白いです。
 ちょっとした忍耐は必要かもしれませんが、長大なクラシック音楽を聴いているよりはましかなと kumac は思えます。本当に、面白いピアノトリオですよ。

Threedom/Jean-Michel Pilc

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