Steve Kuhn『Pavane for A Dead Princess』 | kumac's Jazz

Steve Kuhn『Pavane for A Dead Princess』

 ステーブ・キューンと言えば、kumacにとっては、難解な耽美派、あるいは不自然な方程式に基づく遠近法、などと表現できるジャズの中でも現代音楽に近いピアニストというイメージが残っている。本当は、さほど真剣に聴いたことなどないのにもかかわらず。kuamcにとっては、どうせ破壊思考の音を出すピアニストなら、ポール・ブレイを聴いた方がよいのだが、とても気になるピアニストであることには違いなかった。それは、美的感覚がとてもシャープであるからで、それはジャズ的な要素とはまた違うのではあるが、ある時、無性に美しさの中に埋没したい時が訪れる。そんな時に、聴いてみようかとか作品を買ってみようかと思ってしまうピアニストでもある(こんなこと書いてますが、キーンのCDは1枚しか持っていません。ついぞ、感動した体験は持てなかったのも事実)。

 そこで、また気になるお姿(ジャケ)で、ゴールドディスクなる肩書きを持って、登場した新作は、タイトルも「亡き王女のためのパバーヌ」という魅力あるものではないか。この曲を嫌いな人は、曲と結びつく心的外傷体験が必ずや存在しているはずで、ほとんどの人は好印象を持ってしまうはずだ。

 そこで、kumacもこれまで書いたそういう状況で、レンタル(スミマセン)で聴きました。耽美派から難解さが消え、自然な遠近法のもと、とても美しいピアノトリオの作品と仕上がっているではありませんか、驚きです。最近のステーブ・キーンを知っている方は、ごく当然のことなのでしょうが、ここしばらく聴いていなかった先入観だけの人間には、目から鱗状態になった次第です。なんて、美しいピアノでしょうか。これ、買って間違いなしです(自分はレンタルですが)。

 ビーナス・レコードの得意とする、エッセンスだけを取り出したようなジャズという印象もないわけではないですが、全体的にも一つのポリシーが貫かれています。

 プレイ・バッハとは違った、ジャズの持つ即興性や衝撃性で味付けする、クラッシックの調理法も魅力です。kumac的評価4.5(5点満点)



スティーブ・キューン・トリオ, スティーヴ・キューン・トリオ

亡き王女のためのパバーヌ