原田和典『コルトレーンを聴け!』 | kumac's Jazz

原田和典『コルトレーンを聴け!』

 株式会社ロコモーションバブリッシング発行。著者の原田氏は、10歳でコルトレーンの『ジャイアントステップ」に感動し、それからずぶずぶとジャズの世界にはまり込み、ついにはジャズの専門誌『ジャズ批評』編集長に納まり、現在はフリーのジャズ評論家とのことである。つまり、小学3、4年生からジャズばっかりの人生だったわけで、これは人間の生き方として、まず、あっぱれと申し上げたい(ジャズ以外での生活も当然あったのでしょうが)。

 この本は、図書館の新刊本コーナーでみつけ、速攻で借りて、読みまくりました。題名のとおり、コルトレーンのディスコグラフィー的な正確を持ち、作品一作ごとに、見事なまでの聞き所を解説してくれます。そりゃあもう、親切この上ないです。だから、読み終わると、かなりマニアックなコルトレーン評論家となること間違いなしです。かなり、詳細なデータ、ジャズの広い知識、コルトレーン演奏に対する深い理解が感じられます。一般的に、コルトレーンに言及する方は、マイルスバンド在籍期や『ブルートレーン』の魅力、黄金カルテットの時期、『至上の愛』と、一時期のみを取り上げて、その他の、特に『アセンション』なんてこき下ろし、振り返りもしないことが多いのですが、この本ではどの時期も平等に取り扱っています。まだ、ビッグバンンドの一サックスプレーヤーだった時期の録音や、ノイズ発生器ファラオ・サンダース在籍期など、とても親切な紹介をしてくれます。

 そうはいっても、多くは一つの作品に見開きで2ページの紙面を割いていますが、『ブルートレーン』、『ソウルトレーン』、『ジャイアントステップ』、『至上の愛』『エクスプレッション』などの有名どころは見開きで4ページを割いていて、肝心なところは押さえています。さすが、ダテにジャズで数十年シーメ食っていませんよね。

 原田氏は基本的に、フリー的演奏をするコルトレーンが好きなのでしょうね。問題作『アセンション』への言及には愛情すら感じます。とにかく、コルトレーンの生涯を追いながら、かれの音を聞くためのバイブル的な本です。



原田 和典

コルトレーンを聴け!