George Wallington『Jazz For The Carriage Trade』 | kumac's Jazz

George Wallington『Jazz For The Carriage Trade』

 ビーバップの、あたかも神から授けられたかのような奇跡的なフレーズが洪水のごとく、ジャズの新しい即興による創造行為として、パーカーやパウエルらによって、生まれ続けていたときに、その音楽性に共感し、ジャズ界に身を置き、バッブのピアニストとして演奏方法を身につけたジョージ・ウォーリントンは、人生即ジャズとはならなかった。しかし、彼は、ビーバップが好きだった(kumacの勝手な物言いですが)。

 この作品は、貴重な白人系バップピアニスト、ジョージ・ウォーリントンの、彼なりのビーバップの解釈から成り立っている。それは、人間のあくを取り除いて、限りなく洗練されたスマートなアドリブが生み出す、躍動感と言っていいのかもしれない。ちょっと、矛盾した言い方になってしまったが、ビーバップの音楽性を教科書的に聴くなら、とても聴きやすい演奏である。

 トランペットは知的なドナルド・バード、アルトサックスはパーカー命のフィル・ウッズ、それにアート・テイラーであり、優等生的な雰囲気がある。リーダーのジョージ・ウォーリントンはあくまで控えめな演奏を淡々とこなし、スリリングではないが、よく聴くとパウエルとも違う個性豊かな演奏である。ブラスの二人は、ばりばりと吹いており、若い頃の一生懸命な熱演が聴ける。

 ビーバップの、ある意味で高度に完成された演奏を聴くなら、最高の一枚である。ビーバップが好きで、その終焉と共に、ジャズ界から身を引いて、セールスマンとなったジョージ・ウォーリントンが残した最終型の音である。kumac的評価4.5(5点満点)
ジョージ・ウォーリントン, テディ・コティック, ドナルド・バード, フィル・ウッズ, アート・テイラー
ジャズ・フォー・ザ・キャリッジ・トレード