在日中国人マフィアと日本の暴力団の複雑な関係 | a.k.a.“工藤明男” プロデュース「不良の花道 ~ワルバナ~」運営事務局

ここ数年、半ぐれといわれる不良集団や在日外国人組織と指定暴力団との関係が新聞や雑誌のようなマスコミを騒がせ、インターネット上でも虚実を取り交ぜいろいろと噂されている。しかし実際の関係となると複雑で一言ではいい表せない関係が築かれている。

ここでは、中国東北部マフィア組織の在日集団と暴力団との関係に的を絞って情報を整理し、実際の出来事と合わせて解説していきた。複雑な関係を紐解く足がかりとなれば幸いある。

■銃撃事件、血で血を洗う抗争の始まり

まず、世間を震撼させた「パリジェンヌ銃撃事件」の説明が必要だろう。2002年、新宿に勢力を広げていた中国東北部の在日マフィアが、新宿の縄張りをめぐって抗争を始め、9月に新宿歌舞伎町の喫茶店パリジェンヌで住吉会系の組員と話し合いをしている最中に中国マフィア側が拳銃を取り出して発砲、 住吉会系の組員一人を殺害し一人に重傷を負わせるという事件が発生した。一般客も利用する店内は騒然となった。

それまでの小さないざこざと違い、銃を使ったこれほ どまでに大きな犯罪を暴力団相手に起こしたのは初めてだった。これを皮切りに幾度も抗争を繰り返し、住吉会を筆頭とした暴力団側の報復によって中国マフィアは一時的に新宿から追い出されていく。ここから中国マフィアと暴力団との抗争が始まったといえるだろう。中国マフィア側は新宿を追放された形となり、勢力を総武線沿線や中央線沿線に移していった。

2011年、錦糸町で中国マフィアのメンバーと住吉会系の構成員がトラブルになり、中国マフィアメンバーが住吉会系組員の耳をそぎ落とすという残忍な事件が起きたが、それ以降は大きなトラ ブルを起きていない。これにはまず、中国マフィア側の幹部が2011年に起こした上野広小路における殺人未遂事件で逮捕拘留されたことによって、他のメンバーたちも水面下に潜ったことに起因する。

また、暴力団側も暴対法による規制によって抗争を避 けていた。元々、中国マフィア側には利があれば相手が別の地区で抗争をしていても隣接した地区では協調姿勢をとるという合理的な姿勢が強い。この考え方が暴対法によって規制を 受けるようになると一層強くなったといわれている。

在日中国人マフィアと

<銃撃事件の起きた風林会館がある新宿区・区役所通り>

■中国マフィアと暴力団の不思議な協調

私が知己を得た中国マフィアの在日グループの「ボス」は、知り合った2007年ごろから7年間のうち、服役していた期間を除くと、ほとんどの抗争時に現場にいた。このボスがよく話すのは、抗争と協調は「拠点によって違う」ということで、A地区で激しい抗争を繰り返す暴力団S会と少し離れたB地 区では協調し合ってお互いの縄張りを荒らすことなく、うまく付き合っているというのである。これは特にS会だけに限ったことではなく、他の指定暴力団とも同じような姿勢で活動している。

たしかに、暴力団側でも敵対する組の幹部とボスが一緒に同席する「呉越同舟」状態を何度も目にしたことがある。そこに中国マフィアのボスが同席するという不思議な光景が見られるのである。

通常の概念では、どちらか一方と手を組むということが普通なのかもしれないが、ボスの考えは、「“利があれば”どんな組織でも協調できる」ということなのである。

ではいったい、彼らはどんな形で協調しているのだろうか。

いろいろなケースがあるが、以前は暴力団側に中国マフィア側が、「折れて」金銭で解決するというケースが見られたが、最近では資金面や中国からの「物資」によって、立場が逆転したかのような姿を目にする。

中国マフィア側が手に入れた「資材置き場」に暴力団側が物資を運んで資金を 受け取るケースや、危険ドラッグの流通を中国マフィアから暴力団側が受け取るというケースもある。

また関西では、中国側が欲する日本製品を暴力団側が提供するというケースも見られる。

みかじめ料(縄張り内での取り締まり料)も変化してきた。元々繁華街でみかじめ料でもめることがあった暴力団側と中国マフィア側が、みかじめ料を暴力団側に譲って抗争を終わらせるケースが最近見られる。

これは、豊富な資金を持つ中国マフィアが風俗店や飲食店を影響下の人材に資金を提供して店を運用させ、返済金とみかじめ料を含んだ利息を回収することで、本来のみかじめ料分を暴力団側に譲るという不思議な体制によって、お互いの利益を保護するということなのである。薬物の流通でも大きく変化している。

■中国マフィア側が握る“危険ドラッグ”利権

本来の覚せい剤や大麻など違法薬物の流通量が減少すると、危険ドラッグといわれる「脱法薬物」を中国側が多量に暴力団側に供給することで、暴力団側の資金獲得に協力する形になっている。

最近でこそ新聞紙上でにぎわっている「危険ドラッグ」だが、以前からかなり の量が流通していて、安価で簡単に入手できることから、購入者は一般社会にかなり浸透している。中毒者もかなりの数になるといわれている。

その供給を中国側がもっているのである。とある暴力団側では、危険薬物の製造方法を中国側から多額な金銭で購入したといわれている。

このような協調姿勢が現れたことから、暴力団側が日本国内を離れて東南アジアや中国本土で風俗店や飲食店を経営し、資金を集めているが、ここには中国マフィアが暴力団側に協力するということも見られるのである。日本のみかじめ料の逆のケースである。

■争うだけの時代は終わり、協調する方向へ

このように暴対法強化以前の暴力団と在日不良組織と の関係とは一線を画してお互いの利益を確保するというケースが多くみられるようになったのである。

人的面でいえば、中国マフィアの組織に入らないが影響下のメンバーが暴力団に構成員として入るというケースが多くなり、人材の交流という姿も見られる。

また、東日本震災以降、福島原発復興の拠点となっているいわき市周辺には、暴力団側と一緒に薬物を販売するメンバーや中国人女性を多数送り込んで風俗店を経営させ、暴力団側にみかじめ料を支払うということが行われているのである。

もうひとつが人材面での協調であるが、建設現場や震災復興現場への中国人労働者を暴力団関連建設業へ派遣するということも行われている。

このように過去の抗争時代から水面下での協力姿勢というのが、現況なのである。

ただし、すべての暴力団が協調しているわけではない。この点を強調しておく。

(取材・文川上慶治)



破戒の連鎖 ~いびつな絆が生まれた時代





いびつな絆 関東連合の真実