一杯のかけそば vol.3 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

このブログ記事に感動する要素は一切ない。一人の男が「かけそば」を一杯だけ食し、うまかった、と感想を述べるだけの脳味噌を一ミリも使わずに書かれた駄文なのである。

入り口扉をスライドさせると、すぐ右手に設置されている食券販売機に、銀色に輝くコインが数枚投入された。その男は「かけそば350円」の釦を押していた。目で追えないくらい素早く俊敏な動きだった。一切迷いが無かった。メニューを選ぶ、という概念を持ち合わせていないのだろうか。


男は虚ろな表情で暫し待つ。テーブルに片肘を付きアンニュイな御様子だ。カウンターの内側で作業しているらしき婦人の動きをじっと眺めている。いま、俺の注文した「かけそば」はどの状態なのか、進捗状況は何パーセントなのか、男の視線は矢の様に鋭い。すると、なにか見つけたのか、男は徐に立ち上がる。



天かすと黄色い、オレンジに近い沢庵である。どうやら無料らしい。男は「かけそば」を待つ間に沢庵をぼりぼり齧る。天かすはそばに投入する積りなのだろう。男はそれには全く手を触れようとしない。


漸く「かけそば」が提供される。透明な出汁を一口飲んでみる。薄味だが後から舌にしっかりと旨味が残る。深い。うまい、と思う。ほっこり優しい、少し甘めのうどん出汁のようだ。蕎麦は不揃いで平べったい。色も薄めだ。蕎麦は食べ慣れないので、なんとも言えないが、普通においしいのではないか、男は感想を漏らす。天かすを投入する。ふにゃふにゃで干からびていて、正直これは余計だった。喉に張り付きそうで不快な食感だった。




塩味が程よく効いた、かりんとうも無料だった。こいつは止められない。カリカリサクサクで最高だ。


男が訪れたのは、小郡市稲吉1318-3「山うち」さんである。絶好のデート&観光スポット、恋人の聖地「七夕神社 」を訪れるついでに立ち寄ることを強くお勧めする。




山うち 小郡店そば(蕎麦) / 西鉄小郡駅小郡駅大板井駅
昼総合点★★★★ 4.0