かけうどん物語 「疑問」 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

ーあらすじー

(男は“かけうどん”を食べ続ける事を己に課せられた責務と信じ、インターネットを通じて、その一部始終を世間に公開していた。一体何の意味があるのだろう。全く馬鹿げている。こんな記事、所詮は路傍に転がるゴミ屑に過ぎないのではないか。男は疑問を抱いていた…)


「意味不明なつまんねーあらすじ書いてんじゃねーよ。旨かった、だけでいーじゃねえか。この唐変木」


携帯電話が震え、男が掲載した記事に対するメッセージが画面上に表出した。一瞥した男は、思った。


たしかに、と。



しかし、その時、既に男は“かけうどん”を食べている最中だったのだ。福岡県民が愛してやまないソウルフード、「ウエスト 」にて、“かけうどん”を。280円で。



(…おや?)


男の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。出汁はもっと茶色が濃かったような、葱は卓上に備え付けだったような、以前、別店舗で食べた“かけうどん”と仕様が異なっている。四角い断面の麺は細目で、粘りつくようなねちねちした食感である。歯に張り付きそうだ。いや、それは言い過ぎだ。塩気が強い印象だった出汁は、なんともあっさり上品な味に仕上がっていた。こんな薄味だったっけ、男は釈然としないが、単なるバカ舌の思い違いだったのだろう。空腹の胃袋に存分の塩分を摂取する心積もりだった男は、少々肩すかしを喰らった気分に陥ってしまった。



「ウエスト 諏訪野店」は国道3号線沿いにある。「生そば」を強烈にプッシュしている様子だった。メニュー表の裏に「蕎麦」がどんなに健康に良いか、ルチンがどうこう、成分がなんちゃら、箇条書きで絶賛していた。蕎麦で不老不死が達成出来るかも、という程の勢いだった。まあ、正確にはそこまでは書いて無かったけれども。


男は“かけうどん”を食べ続ける筈だ。これからも。きっと。


ウエスト 諏訪野町店うどん / 西鉄久留米駅南久留米駅花畑駅
昼総合点★★★☆☆ 3.7