もすっ!をとこのHardぼいるど 「ロンリー&パン」 | エキセントリックギャラクシーハードボイルドロマンス         

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〜文学、お笑い、オートバイを愛する気高く孤独な三十路独身男の魂の軌跡〜 by久留米の爪切り

安普請賃貸住宅<ザ・ハイツK>の一室。縒れたTシャツにジャージ姿の男は、粗末なパイプベッドから起き上がり、薄いカーテンを開け、二階の窓から外を眺めた。アスファルト道路の端、濡れて色が変わった排水ブロックが、明け方に降った雨を物語っていた。薄く空を覆う灰色の雲には、これから雨を降らす意思がなさそうだった。

「よおし、パンを買いに行こう!もすっ!」

決意表明の雄叫びが、その虚室に響いた。もちろん、そこには誰もいなかった。
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久留米市東櫛原町38ー1「OLIO」さんに男は着いた。テラス席も設けられた洒落た外観、庭園というよりガーデンと呼ぶ方がよく似合う。

パンを購入し、パンを持ち帰り、虚室で一人もそもそパンを食べる計画の男だったが気が変わった。黒板の如き手書き看板にスープランチ410円との表示、その下側にミネストローネの写真、うまそうだ、男は魅了された。

店内左手に四つほど席がある。うら若き男女一組が座っているだけで、空いている。男は、ここで朝食を摂ろうと決め込み、盆とトングを元へ戻した。

美貌家な女性店員氏にスープランチを店内で食べたい旨を伝えた。まず、硝子陳列ケース上に並べられた80円のパンの中から二個、好きなパンを選択するよう申し渡された。人差し指をぷっくりした唇の真ん中に押し当て、首を鶏のように動かす男は、たっぷり時間をかけ、甘そうなパンと健康に良さそうなパンに決め、セットだと80円引きになるらしいホットコーヒーも同時に注文し、合計515円を支払った。女性店員氏が柔らかい微笑を浮かべていた。

窓に面した席に腰を落ち着けた男は、手持ち無沙汰だった。若いカップルの会話に耳をそばだてた。諜報活動の一環だった。

「ねーねー。わたしの好きな食べ物、あててみてん。ふふ。わからん?…答えは、プリンとメロンパン!」
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男は目の前の食事に集中する。ミネストローネはさらっとした薄味のスープ、玉葱とともに数種類の豆がたっぷり入り、とってもヘルシーな一品だった。甘そうなパンは予想通り甘く、健康志向なパンは中がもっちりしていて美味だった。

(…パンを漢字で書くと、麵麭です)

誰にとも無く呟いた男は、虚室へ戻る。心底カップルが羨ましかった。嗚呼。もすっ!







OLIOパン / 櫛原駅宮の陣駅

昼総合点★★★☆☆ 3.8