「MURDERBALL(マーダーボール)」(2005 クロックワークス)

車椅子ラグビーのドキュメンタリー映画、
車椅子ラグビー、別名マーダ・ボールと称されるほど
荒々しいプレイスタイルは、スポーツとして十分に鑑賞に堪えうる。

映画の中で、障害者のセックスに関する話が上がって、「なるほどな」と思った。
病気や事故で四肢の自由を失った彼らが、おそらく最初に心配するのが、
「これから先、セックスはできるのか?」という不安だという。

日本のドキュメンタリー物ではあまり語られない分野だと思った。
生物としての根幹を担うべき、ある種の本能に対する不安に、
この映画はちゃんと向き合っている。

身体に障害を負い、普通の生活ができなくなる。自分はこれから女性を愛することができるのか。
この疑問に、医師達は「イエス」と答える。
知らなかったのだが、障害者用にセックスの仕方を教える教則ビデオが存在するらしい。
リハビリの中にも、マスターベーションを教えるプログラムがある。
車椅子でも、街に出て女の子をナンパできる。あわよくば最後まで。
この事実が、彼らに自信を取り戻させる。

障害を負った人間は、別にガラス細工になったわけじゃない。
腫れ物に触るように扱われることを嫌う障害者も居ることだろう。
それはもっともだと思う。彼らにもプライドがあり、自分の人生がある。

だからこそ、僕のような人間は迷う。
果たして、駅で盲人の手を引いてあげることは、傲慢な施しなのか、優しさなのか・・・
車椅子で買い物をしている人に、切符を買ってあげることは?
彼らは一人で歩ける。一人で買い物もできるし、セックスもできる。

優しさが難しい。
優しくされることが、難しい。
そんなとき、どういう顔をしていいか、わからない。