友人にアキアジ君(もちろん通称)という、ちょっと面白いヤツがいる。

彼は、高校デビューを飾ろうと、
春休みの登校日に赤毛に髪を染め、
なんか網(漁で使うやつ)のような不思議なベストを羽織り
(上半身は裸だった気がする)
サングラスを頭の後ろにひっかけて登場し、
クラスの温度を氷点下まで下げたことがある。

その日、彼はクラスメイトから“今、何時?”と聞かれ、
こうのたまった。
「アキアジ」
(北海道特有のシャケの呼び名、“ジ”と“時”をかけた非常に高度なギャグ)
以後、死ぬまで続く彼のあだ名、アキアジ誕生の瞬間である。

とにかく、ファッションと言葉選びのセンスが絶望的に悪かった。
本人はお洒落のつもりなんだろうが、いかんせん似合ってない。
高校の時のお気に入りのブランドは
「コムサ・デ・モード」(それだけでもひと笑い起きるんだが)
彼いわく、「コムサ以外着る気がしない」そうだ。

まったく、面白いヤツだ。

下戸のクセに「酒が無いと生きていけない」 などと豪語し(当時高校2年生)
それをたしなめる母親に
「酔いたい時もあるんだ!」と反論をしたりもする。

今は良い言葉がある、まさに
人生が 『中二病』 僕の友人になるのも必然と言えた。

腐れ縁が続き、大学も同じところに合格し、僕は物理科、彼は化学科に進学した。
物理科に居ながらも耳に入る彼の噂、「あのおかしい歩き方の人、まつおの知り合い?」
すれ違う人の名前など、知らないのが普通の大学生活という場において、
彼の変態ぶりがいかに凄まじかったかがわかる。

高校の頃しきりに言っていた「東京じゃこういうファッションが普通だ!」という
彼の主張は、約6年間を東京近辺で過ごした今も、僕には実感できなかった。

高校の頃の仲間と久しぶりに会うと、
大概彼の話題が上がる。
よきにつけ、悪しきにつけ、アキアジは僕らの話題の中心にあり、
今でもひそかに皆から愛されている。

とくに理由は無いけど、彼と昔飲みに行ったバーに
立ち寄り、カクテルを飲んだら、急に懐かしくなったので日記に書いてみた。
身内ネタで申し訳ない。

酔いたい夜もあるんだ。 いや、・・・ねぇな。